2024年2月16日金曜日

お金や労力、時間を投資した結果、たとえ今後のコストがメリットを上回っても、同じことを続けてしまう傾向について。

サンクコスト効果 (サンクコストの誤謬) 

 お金や労力、時間を投資した結果、たとえ今後のコストがメリットを上回っても、同じことを続けてしまう傾向のことをいいます。一種の認知バイアスで、情報を誤って解釈し、意思決定に影響を与えてしまう思考のエラーです。

 サンクコスト効果の落とし穴にはまると、自分に利益をもたらさない不合理な決断をして、さらに深みへとはまり込んでしまいます。サンクコスト効果とは「損の上塗り」ということです。

 サンクコスト効果に惑わされると、人は自分に利益をもたらさない不合理な判断をしてしまいます。この傾向は人間の行動心理に深く根差しているため、深みにはまり込むことなく論理的に正しい判断をするには、サンクコスト効果がどう働くのかを理解することが大切です。

サンクコストとは?

 すでに負担し、回収できない費用のことです。何かの計画に投資したお金や費やした時間など、もう取り戻せない過去のコストがサンクコストです。少し冷静になって合理的に考え直せば、こうしたサンクコストは、私たちの未来に関する決定には無関係です。なぜならそうした判断は、回収不能な過去の投資ではなく、将来的なコスト予測や目標のみに基づいて下すべきだからです。

 採算が取れない計画を継続するのは不合理です。そうならないようにするためには、目標管理と進捗管理が重要になってきます。日々やっていることを見える化して、順調な計画管理を運用しましょう。

サンクコスト効果の背景にある心理

①損失回避

 損失回避とは、損失を避けようとする傾向のことです。これは、何かを失うと考えると、同じものを得ると考えるよりも強い心理的影響を受けるために起こります。損失を被って嫌な思いをしたくない一心で無駄な投資にこだわり続けることが、損失回避の心理です。

②フレーミング効果

 フレーミング効果は、何かを選ぶ際に、その選択肢の提示方法が肯定的か、否定的かに影響されることを指し、これもサンクコスト効果を補強します。

 私たちがある決断を継続する場合は、それがおおむね成功だというように、肯定的にフレーミングします。しかし方針を変更する場合、たとえ論理的には損を切り捨てることが正しくても、私たちは失敗のストーリーを作り上げがちです。

③非現実的な楽観主義

 非現実的な楽観主義は、自分は他人に比べてネガティブな出来事を経験しないだろうと思い込む心理傾向です。成功の確率を過大評価し、失敗の可能性を過小評価しやすいことに表れます。現実のエビデンスがどうあれ、いつかうまくいくだろうと思い込みがちになります。

④自己責任の意識

 過去のコストに責任を感じている場合、サンクコスト効果の落とし穴にはまる確率が高まります。他人が下した判断なら、方針転換は比較的容易ですが、自分自身が決断をした計画を中止するのは非常に難しいのです。計画の発案者や意思決定者など計画の成功に利害のある人にとって特に厄介な問題になります。

⑤無駄にしたと思われたくない心理

決断を下した本人は、お金を無駄にした罪悪感から、無意味な投資を続けてしまうことがあります。他者に自分がお金を無駄にしたと思われたくない、そして自分自身もお金を無駄にしたという嫌な気分を味わいたくない、という二つの理由から、元をとろうとし続けます。

 役に立たないツールを、購入したからといって使い続ける場合も同じです。投資を無駄にしたくないばかりに、ツールにこだわり続けるというわけです。

サンクコスト効果の問題

 サンクコスト効果の影響下にある判断は、不利益をもたらす誤った選択につながりがちです。論理的な判断ではなく、たとえ自分に利益をもたらさなくても、時間や金銭、エネルギーを投資し続け、さらに引っ込みがつかなくなるという悪循環に陥ります。投資をすればするほど、私たちは深みにはまり、当初の誤った判断にさらにリソース(資源)をつぎ込むのです。

サンクコスト効果を回避する

 サンクコスト効果は確定事項ではなく、回避可能です。認知バイアスにとらわれず、論理に基づいた合理的な判断を下しましょう。

①サンクコスト効果を知る

 サンクコスト効果を学ぶだけでも、その悪影響を逃れる大きな一歩になります。サンクコスト効果がどう作用するか、それを補強する心理学的要素にどんなものがあるかを理解していれば、判断を下す際に、認知バイアスについて気を配るようになれます。

②データに基づく決断をする

 サンクコスト効果は理にかなった判断を覆すものです。つまり、この思考の罠に対抗するには、意思決定プロセスを支えるデータを集め、論理を判断材料として復活させるのが最も有効な手段です。

沈みそうな船からは脱出する

 計画にコストをかけたからといって、沈みそうな船と運命を共にするのは愚かなことです。過去を手放して、自分にとって最善な決断を下しましょう。サンクコスト効果の影響下では、自分自身が最大の敵となってしまいます。しかし自己の内面を振り返ることによって、ダメージを深刻化させることを避けることができるのです。