アレクサンダー先生は、頭部の動きが椎骨の協調作用を支配する法則を発見しました。
感情が不安定な人は、頭部を脊椎部に対して押しつけています。
結果、重力に負けて姿勢が崩れ、動きががさつになります。
emotion(感情)とmotion(動き)は一致するのです。
進化の歴史の中で感情は、「その外部刺激が生きていく上でメリットがあるかどうか?」を記憶し、予測するためのシステムとして発達しました。
予測誤差を繰り返し修正することで、精度の高い予測を可能にするためのシステムです。
外部刺激に対する反応が最適化され、生存確率を高めることにつながります。
何を学び、どう行動するかを、瞬時に決めるために、感情が発達したと考えられます。
新しい情報による外部刺激を受けたとき、人は対応する刺激を選択します。
脳のリソースには限りがあります。
いくつもの刺激に同時に対処することはできません。
なので、その瞬間は、特定の刺激の処理に脳のリソースを割くことになります。
ここからは、おなじみの脳科学です。
脳の扁桃体が過活動(過興奮)になると『不安』が強くなります。
不安は、進化的にいちばん最初に誕生した感情だからです。
不安が強くなると、人は闘争or逃走モードにはいります。
防御(攻撃)か回避かを、選択することになります。
これまでの常識を覆す新しい情報は、不安を煽ります。
不安ゆえに、回避という選択をしがちです(バックファイヤー効果)。
不安は、物事を冷静に考え、深く理解するといった認知のはたらきを弱化させてしまうのです。
姿勢崩壊していて、身体の動きが悪く、感情が不安定な人たちが、解説を聴かない理由です。
感情が不安定な人は、新しい情報を知ると不安になります。
新しく何かに取り組むということ自体、「わからない」というストレスを生むからです。
扁桃体の過活動が、行動回避を生み出します。
予想外の刺激を楽しめない人は、ここで詰みます。
ここで問題になるのは『記憶』です。
脳の海馬は、長期記憶を司ります。
長期記憶と結びついている海馬が、感情記憶にかかわる扁桃体を刺激し、感情が生まれます。
『明るい感情記憶』があれば楽しめるし、『暗い感情記憶』しかなければ楽しめません。
不安・恐怖に結びつく記憶しかない人は、防御か回避しか思いつきません。
そして、姿勢が崩壊します。
ここまで書けば、もうおわかりだと思います。
『相手の話を聴ける人は、明るい長期記憶を持っている』
ということです。
姿勢がいい人たちには、相手の話をじっくり聞くという共通項があります。
新しい刺激を好むので、相手が自分の誤差を修正する情報を提供してくれるのが楽しいのです。
楽しいという気分が明るい感情を生み、動きと姿勢を正しくします。
相手の話を聴かない人たちの姿勢は崩壊していますし、動きは不正確です。
扁桃体が過活動な人たちは、筋肉や関節の慢性痛を訴えます。
そして、ロジカル(論理的)に考えることができません。
不安が、冷静に考え、深く理解するといった認知のはたらきを弱化させるからです。
現実的に考えたら効果のない方法に心を奪われてしまう理由です。
「~したら~になる」という短絡思考は、防御・回避行動の結果なのです。
つくり笑いは、感情と動きが一致していないので、ストレス反応を強めます。
ほんとうの笑いは、感情と動きが一致しているので、ストレス反応を解消します。
笑えばいいというものではないのです。
感覚情報ストレスによって扁桃体が過活動状態となると、様々なストレス反応が生じます。
扁桃体が過活動になると、視床下部ではHPA系が亢進してコルチゾールが上昇します。
加えて、交感神経系の亢進がみられます。
橋にある結合腕傍核の過活動により過換気あるいは過呼吸が生じます。
青斑核が興奮するとノルアドレナリンの増加によって血圧上昇や心拍数増加が起こります。
中脳灰白質は回避行動を促進します。
その結果が、不安定な感情と、姿勢崩壊と、不正確な動きです。
そして、筋肉と関節の慢性痛ということになります。
脳の扁桃体の過活動状態が生じやすい=不安を惹起しやすいということです。
うつ状態に陥り、社会機能の低下が著しくなります。
扁桃体の過活動を前頭前野が抑制できません。
身体的反応として、筋肉と関節の慢性痛が生じるという流れです。
扁桃体は、快・不快や不安・恐怖などの情動中枢です。
扁桃体の働きを抑制するのは前頭葉の活動です。
前頭葉は脳の中で、認知を司り、思考や行動の決定に極めて重要な役割を果たします。
扁桃体の活動を抑えるためには、ストレスについて客観的に認知することが基本です。
ロジックによって、ストレス反応をスタートさせないのです。
認知や理性を司る前頭葉によって、不安・恐怖に反応する扁桃体の働きを抑えるのです。
昨日の記事に書いたとおりです。
こちらの記事が面白いです →
情動のメカニズムの探求
そして、
→
胎児期に脳ができる仕組みに新たな発見 最も早く生まれる神経細胞からのシナプス伝達が大脳新皮質形成を制御
胎児期に脳ができる仕組みの新たなメカニズムを明らかにしました。思考や言語機能などを司る大脳新皮質は哺乳類でのみ発達し、6層の構造内に神経細胞が精緻に配置されています。この構造の乱れは自閉症や統合失調症などの精神疾患の発症につながることがわかっています。大脳新皮質の6層構造は胎児期に脳深部で生まれた神経細胞が脳表面に向かって次々と移動していくことによって形成されます。研究チームはこの「移動」を促す信号が送られる仕組みを世界で初めて解明しました。「サブプレートニューロン」は、大脳新皮質で最も早く誕生し、脳が出来上がると消失する一過的な神経細胞ですが、その機能に関しては不明な点も多く残されていました。今回の研究で、サブプレートニューロンがその後次々と生まれる神経細胞と一過性のシナプスを形成し、その最終目的地への移動を促す信号を送っていることが明らかになりました。
生まれたばかりの神経細胞は、方向性の定まらない多極性移動をします。その後より早く移動できる移動モード(ロコモーション)に変換します。この変換が障害されると神経細胞層の構造が乱れ、様々な神経疾患を発症します。
引用ここまで
この記事の解説は、今日・明日の塾生講座でします(受精卵からみで)。
扁桃体の異常過活動状態と海馬や前頭葉などの機能低下の問題への対処。
読書と運動という基本を反復しましょう。
ロジカルな会話をする訓練をしましょう。
筋ほぐししましょう。