酸っぱい葡萄
「イソップ物語」にみえる寓話一。キツネがおいしそうなブドウを見つけるが、高いところにありどうしても届かない。しまいには「あのブドウはきっと酸っぱくてまずいに違いない」と言って去る。
自分こそが手に入れたかったが、到底かなわない対象と判断・諦めた後に、一部の人々はその対象を一転「価値の無いもの」「自分にふさわしくない低級なもの」と無意識に思い込もうとし、それを理由に諦めた原因である己の能力の不足と向き合うことから逃げて、心の平安を得ようとする。
フロイトの心理学では、この人々の自己正当化・自己防衛思考を防衛機制および合理化の例とする。また、社会心理学においては、認知的不協和の例とされる。
認知的不協和
個人が持つ二つの認知の間に不一致、不調和が生じること。その際その不一致を解消あるいは低減しようとして認知や態度に変化が起こる。出典 精選版 日本国語大辞典
個体がある事柄について矛盾した、相反する認知もしくは知識をもっている状態をさす。一般にこのような認知的不協和にある個体では、不快や心的緊張が高まり、その結果この不一致を低減させるための行動を生じさせる傾向をもつとされる。出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典
フェスティンガーの認知的不協和理論 出典 (株)アクティブアンドカンパニー
・認知的不協和が起きると不協和を低減する行動が起きるということ。
・矛盾した2つの認知がある場合、その不協和を解消するために、比較的変えやすいほうの認知を変えて、協和している状態にしようとすること。
・たとえば、自分のセンスで購入した商品について、友人が高く評価してた場合は、認知的協和の状態で問題がない。ただ、TVで批判されていた場合に、当該 TVでの評価との食い違いが発生する(認知的不協和)。このとき、比較的変えやすいどちらかの認知を変えて、協和させるよう働く。購入済みの自己の判断基準を変えることは難しいため、当該TV番組がいい加減なものだといったTV番組自体を否定、あるいはTVの指摘したような面はあるが、異なった面がよいといった別のよい面を探し協和させる。
認知的斉合性理論 出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)
人々は、自らのもつ認知内容(自分や他人が知っていること、感じていること、やっていること、欲していること、さらには社会や自然界に生じていること、などについて自らがもつ認識内容)のいくつかが相互に無関係とは思えない場合には、それらの関係が斉合的である(つじつまがうまくあう)ようにしようとする傾向を有するという仮定を置いて、それに基づいて人々の社会的行動を説明しようとする理論のことである。