2021年5月26日水曜日

声を解放する。歌う。

 

声のワークは、良い呼吸から始まります。

■声を解放する

 声のワークは、良い呼吸から始まります。効率的な呼吸は、効率的な姿勢によるのです。これによって、体の長さを失わずに、息を吐くことと空気を取り入れることが可能となります。背筋をぴんと張ったり、しぼんだ風船のように体を縮ませると、自然な呼吸を乱し、声に干渉してしまいます。

 姿見鏡の前に立ちます。「fff」の発音で声を出したら、口を閉じて、鼻から自然に息が戻ってきます。3回繰り返します。終わったら、鏡の自分を観察して、たずねます。「やっているあいだに、首を硬くしたり、体を押し下げていなかったか? 息を吐くとき屈みこまなかったか? 首を硬くして、肩を上げて、息を吸っていなかったか?」これらのパターンを避けることが、自由で精力的な声をつくり出す土台になります。

■歌う

 呼吸と精神には、深いつながりがあります。わたしたちは音を通して、自分自身を表現しているということができます。

 しばしば、歌うために息を吸い過ぎるという習慣があります。もちろん、呼吸は必要なのですが、最初の一息に計算ミスが多いのです。美しい声をつくるためには、呼吸の圧と声帯が、ふさわしい関係を持つことが必要です。そして、身長が長くなることで、全体が整えられ、声がうまく響きます。息を吸い過ぎることは、その相互作用をこわしてしまいます。必要以上に息を吸っているときには、首が硬くなり、体が短く狭くなっているので、自分で気づくことができます。

 実際の声は、呼吸の影響を受けます。息を声門に向かって押しつけると、気息音を聞かせたり、しゃがれ声を出すことができます。これは空気を無駄使いするので、歌うことや、長いフレーズを保つことができなくなります。呼気はどちらかというと自然にもたらされた吐息のようなものです。これは、息の音が混じった声質が欲しいとき、ジャズや、ブルースを歌うときには、問題は何もありませんが、その質が求められていないときには悩みの種になります。声と呼吸をつなげることによって、この習慣を減らすことを助けます。

 脚を硬くする癖も、歌手にとって問題となります。これが起こると、足の裏がばったりと床に平らに置かれ、土踏まずが硬くなります。脚は、筋肉によって横隔膜の付け根とつながっていますから、この筋肉がつづいて硬くなり、その筋肉がしめつけられ、その結果、声が制限されてしまいます。声が、車輪の輪に乗っかる代わりに、車輪の輪に引っかかったようなものです。脚が楽に背中と横隔膜につながっているので、声は泉のように湧き上がってきます。

■歌の準備への提言

 歌う準備のため、即座な反応はすべて止めましょう。これはとても難しいことかもしれません。伴奏者が最初の音を弾きだすと同時に、歌う準備をしてしまうからです。

 新しく方向性を与え、頭が前にうなずいて上に行くと、全身長で立ちます。助けを得ようとして、見上げないでください。音楽的に準備が整っていれば、助けは必要ないのですから。

 「ウイスパード・アー」から、口を閉じて、優しく楽にハミングし、ハミングしながら口を開いていきます。響きはハミングのまま、内側に残ります。ハミングしながら口を開け、ハミングしながら、そのまま音を切らずに「あー」をいいつづけます。

 歌いはじめます。でも、自分がどのように歌っているかを考えます。準備のしすぎや、締め付けのような古い習慣を見つけたら、すぐに歌うのを止めます。

 難点を予想しないことです。高音は怖くないのですから、無理をしなくてよいのです。

■ウイスパード・アー

①口から息を吐きだします。首はらくにして、息を吐くときにも硬くしません。空気は鼻から戻ってきます。繰り返します。

②何か微笑みたくなるような、笑いたくなるようなことを考えます。

③首はらくで頭は前と上へ行きます。胸郭はたっぷり動いて胴体全体が幅広くなります。腹筋を硬くしたり上胸部を押し下げたりしません。

④舌先を下の歯の裏につけます。これは舌の後部を引き込めないためで、のどをしめつけることを防ぎます。

⑤あごが前と下に下がって、口がひらきます。頭の重みが後ろへ落ちないように。音を立てずに「アー」といいます。

⑥息のおわりにきたら、口を閉じると空気が鼻からもどります。手順を繰り返します。

 舌を下の歯につけることで、舌の後部が持ち上がるのが防がれ、のどの圧迫がさけられ、拮抗する強い筋肉をひっぱります。舌はからだ全体のなかでも骨(舌骨)につながる唯一の筋肉です。それはいつも過剰緊張しやすく後ろへ引き込みがちな傾向がつよく、空気の流れを制限するだけでなく、緊張した声をつくりだします。

※「図解 アレクサンダーテクニーク グリン・マクドナルド 産調出版」より引用