ゴリラは顔と顔を合わせて挨拶します。人間も食事や会話をする時、机を挟んで対面します。対面しないと誠意が伝わらないと思うのは、言葉だけで会話をしているわけではないからです。
では対面するとなぜ気持ちが伝わるのかというと、その秘密は目にあります。京都大学野生動物研究センター教授の幸島司郎さんたちが、類人猿の目はサルの目に似ていて、人間の目だけに白目があることを発見しました。その白目を見ることによって、相手の内面の動きをモニターしているんですね。それが言葉よりも重要なんです。
対面して相手の感じていることを読み、共同作業によって身体をつなぎ合わせて生きてきた私たちは、インターネットというヴァーチャルな世界で脳をつなぎ合わせて暮らし始めている。それは共感能力の低下や信頼関係の喪失につながると私は思っています。
引用ここまで
「サル化」する人間社会 (知のトレッキング叢書) 山極 寿一 (著) |
人は、相手の白目の動き(本当の表情)を見て、相手の感情を推し量ります。
感情を推し量ってもらうために、人には白目があるといえます。
なので、相手の白目を見ることができる対人距離が必要です。
そして、相手の眼の動きを追えるだけの完全な視機能も必要です。
人は、一緒に食事をすることで、お互いの信頼感を高めます。
そして、信頼感は何を食べたかではなく、一緒に食べた時間によって醸(かも)されます。
山極壽一先生の言葉より
「信頼感というのは、実は内容じゃなくて、時間が担保するんです。その二人で何をしたかってことじゃなくて、二人でどのくらい長くいたかということ、二人じゃなくても、三人でも四人でも良い、それがその仲間同士の信頼感を担保する」
「(現代の)効率化・経済化の社会というものは、時間というものをコストだと思っている。でも、時間というのは、長い長い人類の進化の間、それはコストではなく、大切な宝だったんですね。
相手の自分との間で共有し、サルにはできない信頼関係を醸成するための大きな道具だったの。それを人間は、効率化・経済化の名の下に手放しつつある」
引用ここまで
系統樹 |
書かれた言葉には補足情報がありません。
なので、書き手の気持ちはきちんと伝わりません。
直接会う必要があるのです。
白目を見ないと理解し合えないのです。
一緒の時間を過ごすということ自体が、信頼感を育みます。
「自分のために時間を割いてくれた」
そう思えることが、響くのです。
書かれた言葉が信頼感を担保することはありません。
私たちは、言葉を習わないと、言葉の意味がわかりません。
しかし、私たちは何も習わなくても、相手の白目を見れば相手のことがわかります。
白目には「心」があらわれるから。
だから、白目を見れば、心を読むことができるのです。
白目の動きを追うために必要な対人距離は、近接相(45~75cm)です(E・T・ホール)。
近接相では白目の動きが追えるので、相手の内面の動きをとらえることができます。
相手の心の動きが、そのまま目にあらわれます。
白目の動きを追うことは、相手の心を読むということです。
会話域は、50~150㎝(西山和彦)。
会話なしではいられない距離です。
対人関係ストレスから、脳に炎症が起きている人たちの眼が怖い理由。
それは、白目の動きに、壊れた心の動きがあらわれるからではないかと思います。
眼球運動は、身体の動きを導きます。
眼筋→後頭下筋群→刺筋→全身の筋肉という流れです。
もし、心が壊れていたとしたらどうなるでしょうか?
壊れた心が、眼球の動きを壊してしまうはずです。
脳が炎症を起こしている人の動きが不自然な理由は、眼球運動が壊れてしまった結果なのだと思います。
解決策はあるのでしょうか?
昨日の記事でも書きましたが、「仲間と一緒にご飯を食べること」です。
ただし、対人距離近接相で、相手の白目を見つめて対話しながら。
お互いに、相手の心を読み合います。
しあわせになれます。
私たちが、ヒトに進化できた原点に還ればいいのだと思います。
サル化してはいけないのです。
それ以外のメソッドは、おおむね破綻します。
少し観察してみれば、すぐにわかるはずです。
慢性痛やうつの本質は、脳の炎症です。
炎症状態の脳は、まともに機能していません。
脳の炎症を鎮めることができるのは、「愛するということ(The Art of Loving)」です。
脳の感情障害を克服することが、筋肉の過剰緊張状態を解除するということなのです。
「お互いを思いやり、やさしく触れ合うこと」
それが、脳の炎症を鎮め、白目の動きを落ち着かせてくれます。
指技を受けた人の眼が大きくひらくのは、練習中によく見られる光景です。
心がやさしくなった(感情障害が緩和された)結果、眼が落ち着いたのです。
今日・明日の塾生講座では、『会い続けること』の大切さを解説します。
私の白目を見に来てください。