「他人の足を引っ張っても幸福度は上がらない」というのは、単なる道徳的なお説教ではなく、心理学や脳科学の視点からも説明がつく興味深い現象です。なぜ他人を攻撃したり邪魔したりしても、私たちが本当の意味で満たされないのか、いくつかのポイントに分けて整理してみます。
1. 「相対的な順位」と「絶対的な幸福」の違い
他人の足を引っ張る行為は、相手を自分より下に下げることで、相対的な自分の位置を上げようとする行為です。
- 一時的な快感: 相手が失敗したときに感じる「シャーデンフロイデ(他人の不幸は蜜の味)」という感情は、脳の報酬系(ドーパミン)を刺激するため、一瞬の快感はあります。
- 持続性の欠如: しかし、この快感は長続きしません。自分の実力が向上したわけではないため、また別の「自分より優れている人」が現れるたびに、不安や嫉妬に苛まれるという無限ループに陥ります。
2. 脳内ホルモンの影響
幸福感に関わる脳内物質の観点から見ると、他人の邪魔をすることは逆効果です。
- オキシトシンの欠乏: 人との繋がりや信頼感で分泌される「オキシトシン(幸せホルモン)」は、他人に親切にしたり協力したりすることで増えます。他人の足を引っ張る行為は敵対心を生むため、この分泌を阻害します。
- コルチゾールの増加: 「攻撃されるかもしれない」「嫌われているかもしれない」という疑心暗鬼がストレスホルモンであるコルチゾールを増やし、長期的には心身の健康を損なう原因になります。
3. 「自己肯定感」へのダメージ
他人の足を引っ張るという行為は、潜在意識下で**「自分は正攻法では勝てない人間だ」**というメッセージを自分自身に送り続けることになります。
- 自己不信の強化: 卑怯な手段を使うたびに、自分に対する信頼(自尊心)が削られていきます。
- 帰属の喪失: 人間は社会的な動物であり、コミュニティに受け入れられている感覚が幸福に直結します。他人の足を引っ張る人は周囲から警戒され、孤立しやすくなるため、結果として孤独感による不幸を招きます。
結局のところ、他人の足を引っ張ることにエネルギーを使うよりも、「自分の足を前に進めること」に集中する方が、はるかに効率よく、かつ持続的な幸福を手に入れることができると言えます。