体が重力に負けて潰れてしまうと、筋肉がガチガチに固まってしまいます。首が潰れて肩があがってしまうことで、筋肉が過剰に緊張することになってしまうためです。固まった筋肉によって、さらに体が重力に負けてしまうことになり、悪循環から抜け出せなくなります。こうなると、感覚もおかしくなってしまうため、よかれと思って行なう様々な対処法によってますます筋肉を固めてしまうという展開となります。
筋肉の緊張をぬく方法として、手技療法やストレッチングがありますが、やり方を間違えると逆効果となります。手技療法やストレッチングには、想像以上に繊細な技術と、高度な知識レベルが要求されます。自己流で数年間やった人たちの末路を少し観察してみれば、その意味がすぐに理解できるかと思います。感覚をおかしくしてしまうことは、とても恐ろしいことです。
実際に筋肉をガチガチに固めている人が、どのような選択をするのかを観察してみると、高確率で「より筋肉を固める方向」での選択を繰り返すのがわかります。「頑張っている感があるやり方」が正解だと感じてしまうからです。「やっている気がしない」のが正解なのですが、生涯一度も正解を出したことがない人も多く、難しい問題となっているようです。
野球でのホームランやボクシングでのKOの経験がある人はすぐにわかってもらえると思うのですが、「何の手応えもない」のがクリーンヒットの特徴です。関節の角度や筋出力のタイミングがうまく噛み合ったときは、「あれ?」というくらい「やった気がしない」ものなのです。協調運動が苦手な人が筋肉の余計な緊張を抜くことができないのは、よく見かける光景です。
いままでやってできなかったことを、これまでと同じようにやっても、できるようにはなりません。同じ間違いを繰り返すだけです。「正解以外の動きをしない=不正解の動きをしない」という修正をきちんと入れていかないと、老化とともにますます動きも姿勢も崩壊の一途を辿る結果となります。トッププレイヤーほど、正しい意味でのリラックスとフォーム(型)のチェックに余念がありません。パッとしない人ほど、気分の高揚にばかり目を向けて、フォームを軽視しているものです。
フォームの軽視が筋肉を過剰に緊張させ、筋肉の過剰緊張がフォームを崩壊させるという負の連鎖が感覚をおかしくしてしまい、おかしくなった感覚が評価を狂わせてしまうという展開となります。筋肉がガチガチに固まっていると、「やります宣言」ばかりを繰り返して、何の結果も出せないという哀しい人生のまま終わってしまう確率が爆上りするように思います。「やっている感」はあるので、「できてる」という錯覚をしてしまいがちなのですが、客観的にはまったくできていないものなのです。
しょっちゅうあちこちを傷めているとか、いつも何かしらの不調を訴えているとか、そんな人に限って謎の上から目線となりがちなわけですが、その理由も過剰な筋緊張にあると考えられています。当たり前のことですが、深いリラックス状態にある人は、他者に対するマウンティング行為(「自分の方が優位」と思いたいがゆえに、「私の方が他人よりも幸せである」と一方的に格付けし、自分の方が立場は上であると主張し、更にそれをアピールする)をしません。する必要がないからです。
しょっちゅうあちこちを傷めているとか、いつも何かしらの不調を訴えているとか、そんな人に限って謎の上から目線で他者にアドバイスや説教をしたがるのは、ほんとによく見かける光景だと思います。そんな人の首や肩の緊張を観察してみると、「あぁこれはダメだな」というのがすぐにわかると思います。そもそもの表情がしんどそうなので、観察するまでもないかもしれませんが。
負の連鎖に陥らないためには、自分が抱えている筋肉の過剰緊張状態を正しく認識し、適切な対処をする必要があります。7月の安部塾は、体をほぐす=筋肉の余計な緊張をぬくということに集中していこうと思います。
7月の各地の集中講座で、体のほぐし方について解説してまいります。
☆東京集中講座
■7月9・10・11日(金・土・日)
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