■歩行時、女性は少し小股にしてみる。男性は外足で歩く。
■立つときは女性は片足を少し引いて、内足で立つ。男性は外足か大外足で立つ。
■イスに座ったときはひざをつけ、片足を引く。
※立っているときも、座っているときも、腰を伸ばして肩の力を抜き、首すじを伸ばす。立って写真を撮るときは、出した足の側の肩を下げる。
■物をとるときは、指をそろえて踊りの手で静かにとる。
続けてみるとわかりますが、自然と動作が美しくなっていきます。
基礎を固めた「正しく動ける身体」で生きていくことが大切だと思います。私たちは、考えるのも動くのも「脳」を使っています。正しく考えるためには、日常動作を正しくしておく必要があります。成長する脳~強まる神経接続もあれば、逆に衰え、廃れてしまう神経接続もある。の記事でも書きましたが、使わない神経接続は衰え、使っている神経接続は強くなるのです。
脳と眼球 |
「事実に基づいていない」「柔軟的ではない」「論理的ではない 」「証明できない 」「しあせな結果をもたらさない」……非合理的な信念に支配されているとき、その身体の動きもまた非合理的なのは、一見してわかると思います。
エリス先生によると、「外的な刺激があって、その刺激によって不合理な信念が生まれると、不適切な感情や行動となってしまう」ということだそうです。これは、不適切な感情や行動がもたらす「現実的な結果」が新たな外的刺激となって、不合理な信念が強化されやすいということでもあると、私は考えています。
「努力しなくていい」「サクッと~」「頑張らなくていい」という考え方もまた、「他人のレベルに追いつけないなら努力を放棄した方が良い」という非合理的な信念がもたらすものです。エコーチェンバー現象によって、閉鎖的空間内でのコミュニケーションを繰り返すことよって、特定の信念が増幅または強化されるようになった現代、自分の声が増幅・強化されて返ってきて、その自分の声がどこまでも響き続けるという状態になりやすくなっています。外から見た場合にどんなにおかしいことでも、それが正しいことだと閉鎖的コミュニティのみんなが信じてしまうということです。
脳の神経接続を正しくつなぎ変えていくためには、正しい動きについて学び、日常動作の間違いをなくしていくことが肝要です。習慣化した不適切反応を消去するためには、気が遠くなるような正しい動作の反復訓練が必要だと思います。そしてまた、正しい動きをしている人と一緒に同じ時間を過ごすようにして、ミラーニューロン的にも良い影響を受ける必要があります。
誤学習してしまった不適切反応を変えようとすると、これまで形成されてきた神経接続が全力で抵抗することになります。「わからない」「話を聞きたくない」「やらない」……ありとあらゆる受けいれ拒否の態度をもって、正しい神経接続の構築の妨害に血道をあげることになるかもしれません。そのくらい、生存競争に打ち勝ってきた神経接続の力は強力なのです。
仕事として身体操作技法の指導を考えてみた場合、指導者の仕事は「正しい姿勢と動きについて解説すること」「モデルを見せること」だけです。そこから先は、当事者が取り組むべき問題となります。どんなに優れた先人の知恵も、受けいれる気持ちがなければ何の効能も生み出しはしません。だからこそ、日常動作の中で和の身体操作を意識し、「正しく動ける身体の基礎」を固めていく必要があると、私は思うのです。
明日の神戸集中講座では、日常動作の中で和の身体操作を意識するための基本をしっかりと解説したいと思います。