他人に触れる人は、この本に書いてあることを理解すると素敵な展開になると思います。
愛着障害の克服 「愛着アプローチ」で、人は変われる |
彼女の治療は、子供を抱いて、優しく撫でながら、だんだん良くなっていくことを語り続けるという簡素なものだった。そして子どもが希望をもてるように、親にも決して否定的なことは言わず、前向きなことだけを話すように指導した。
抱擁や愛撫は、まさに愛着システムであるオキシトシン系を活性化する。手で触れるという意味で、まさにそれは「手当て」なのである。57P
安定した愛着が育まれているケースでは、母親はわが子の変化や徴候を見逃さず、素早く反応した。それに対して、愛着が弱い、あるいはまったく見られないケースでは、わが子の反応に無頓着で、泣いていても抱き上げようとしなかった。93P
「安定型」の子どもの母親の特徴は、先にも触れたように、高い感受性をもって子どもに応えることである。これを「応答性」という言い方をすることもある。
つまり、子どもの危険な兆候を読み取り、泣くとすぐに抱っこして優しく慰めるが、同時に、子どもが求める以上には抱き続けることはせず、子どものニーズに合わせて対応を臨機応変に変える。一言でいえば「子どもの安全基地」になることができていたのだ。これらの母親は、授乳をはじめとしたスキンシップを楽しむ傾向も見られた。97P
1歳の時点で安定型を示した子どもは、成人したときも安定型を示しやすく、対人関係や社会適応でも困難が少なかった。ストレス状況に耐性が高いだけでなく、助けを求めたり、自己主張することもできたのである。そして安定型を示す成人では、離婚率も低く、心身の病気にかかるリスクも小さいことが示されている。100P
安定型の人では、人生の事実に対する受け止め方が、実際に恵まれた幸福なものであるかどうかにかかわらず肯定的で、また豊かな思い出を、整然としたまとまりをもって語ることができた。104P
その人の体に年輪のように刻まれた愛着パターンは、直接、体験的事実を知ることができなくても、またその人の現実の対人関係をつぶさに観察しなくても、その人の語りを通して高い精度で知ることができるということを、メインは裏付けたのである。
その後の研究で、成人に見られる愛着パターンは、幼いころに認められた愛着パターンと高い連動性があり、生涯にわたって維持されることが多く、「愛着スタイル」と呼ばれるようになった。105P
メインはこうした方法を用いて、40の家族において子どもと両親の愛着タイプを調べたのである。その結果は、驚くべきものであった。1歳のときと6歳の時の子どものタイプが、多くのケースで一致していただけでなく、母親の愛着タイプとも、かなりの割合で一致していたのである。105P
一方、父親の愛着タイプは、それほど強い関連を示さなかった。つまり、子どもの愛着タイプを見れば、母親の愛着タイプもおおむね予想することができたのである。とくに安定型か不安定型かという点では、高い確率で一致した。
言い換えると、安定型の母親の子どもは安定型に育ちやすく、愛着軽視型の母親の子どもは、回避的に、とらわれ型の母親の子どもは、両価型を示しやすかったのだ。
さらに、長期にわたる研究の結果、安定型の1歳児は、安定型の成人になりやすいだけでなく、母親となって子どもをもったときに、安定型の子どもを育てやすいということが示されたのである。そして逆もまた真なりだった。106P
このことは、愛着の安定性やタイプが、その人一代の問題にとどまらず、子や孫にも伝播しやすいという事実を示唆している。虐待が連鎖しやすいことや、同じような不幸がひとつの家系にくり返されやすいというような経験的な事実は、不安定な愛着が世代を超えて伝播しやすいという特性によって、ある程度説明できるだろう。
ただ同時に、そうした過酷な背景を抱えていても、不幸な連鎖を免れ、安定した愛着を示すようになる人もいる。そうしたケースでは、一体何が起きているのだろうか?106P
安定型と不安定型の語りや思考の違いは、安定型の人では、「メタ認知」という心の働きがよく発達しているということである。
メタ認知とは、ただ、物事を考えるのではなく、考えている自分を、第三者的に考えることである。自分のことでありながら、自分の視点にとらわれず、一歩下がって俯瞰(ふかん)するように自分を見る。つまり自分を客観的に振り返る力が備わっている。
それによって、たとえ自分にとってつらい体験をしても、そのつらさにだけとらわれるのではなく、視点を変えて事態を見ることができる。こうした柔軟な視点の転換が、安定型の人の思考の特徴なのである。107P
メンタライジング(メンタリゼーションともいう)とは、「心」というものを想定することで、相手の行動を理解する能力のことである。この能力を高めることによって、人は自分を振り返るだけでなく、相手の気持ちや全体の状況を考え、より高い視点を手に入れることができる。つまり、振り返る能力には、「共感能力」や「洞察能力」も含まれる。
振り返る能力が高い人では、実際に起きた出来事と、自分の感情や推測といった二次的な反応とを区別することができる。それによって、事実そのものではない、自分の中に湧き起こった感情に押し流されたり、足をとられたりするということが起きにくい。
つまり、主観的な感情に判断を曇らされず、事実だけを客観的に見て、行動することができる。その結果、墓穴を掘るような過剰反応を避けることができるし、余計なことを言って、傷つけ合うことにもなりにくい。自分の感情や思い込みに左右されず、有利な行動の選択ができる。安定型愛着の人で、この振り返りの能力が高いのである。109P
親が安定型の場合、この「メンタライジング」や「振り返り」の力が高いことにより、子どもの反応に対して高い感受性をもち、子どもの気持ちを汲み取り、今、子どもが求めていることを返してやることができる。それゆえ、関係も安定しやすいのである。110P
もうひとつ注目すべきことは、振り返る能力が高い人は、同じような逆境に遭遇しても、不安定型になりにくいということだ。そして、試練から回復する力も高い。110P
家族の各メンバーの行動や認知を、過去の体験に遡(さかのぼ)って理解する取り組みを通して、メンタイライジングを高めていこうとする。
これをおこなうことで関係が改善し、子どもの問題も改善に向かうとされる。なぜなら、問題が起きている家族においては、メンタライジングが弱く、感情ばかりが強いということが一般的に見られるからである。
しかもこの手法で注目されるのは、治療の前提となる考え方である。それは「家族の問題を長期的に改善するためには、『症状』の改善を図ろうとするよりも、愛着関係にかかわる部分で、『症状』に対する対処の仕方を改善していった方が効果的だ」というスタンスである。111P
物事をありのままに受け入れ、それを「どうにかしようとしない」態度を身につけようとする。「こうあるべき」ではなく「これもよし」と考える態度を、体得するのである。
こうした方法も、愛着が不安定な人が、それを乗り越えていく上で、ひとつの有望な手段となるだろう。112P
引用ここまで
この後、怒涛のオキシトシン解説が続きます(笑)。
愛着が不安定な人は、この本に救われ方が書いてあります。
いわゆる腰痛やら肩こりやらの慢性的な痛みは、愛着が安定している人には発生しません。
愛着が不安定で、ストレス耐性が低いので、脳が痛みを抑えることができなくなるのです。
で、手技です。
抱擁や愛撫は、まさに愛着システムであるオキシトシン系を活性化する。手で触れるという意味で、まさにそれは「手当て」なのである。
そう。
文字通りの「The Art of Touching」なのです。
今月から安部塾で指導する筋ほぐしのターゲットは筋肉ではなくオキシトシン系です。
筋肉を介して、愛着システムそのものの安定化を目指します。
トリガーポイントは、ある意味、「不安定な愛着そのもの」です。
そこに、愛着が安定している人が触れることで、愛着が安定するのです。
ここで問題になるのが、愛着が不安定な人が触れても意味がないということです。
この場合、受け手が愛着安定型なら問題ありません。
愛着が安定している人の筋肉は至高の触感を誇ります。
その身体に触れることで、触れた人の愛着が安定してきます。
愛着が不安定な人同士が触れ合った場合、トラブルが予想されます。
メタ認知もメンタライジングもできないのですから当然です。
物事をありのままに受け入れ、それを「どうにかしようとしない」態度を身につけようとする。「こうあるべき」ではなく「これもよし」と考える態度を、体得するのである。
私の課題ですね。
筋ほぐしのコツは、「どうにかしようとしない」態度です。
過去の体験を振り返る手段の一つとして、トリガーポイントに触れます。
すると、あっさり筋肉がやわらかくなります。
オキシトシン系が安定したからです。
愛着障害がある場合は、誰かの人助けをしたり、安全基地になることによって自分も安全基地を得ることができる!
なんて話を、今月の薬院校集中講座・東京集中講座・神戸集中講座・下関集中講座でします。
御参加、お待ちしております。