2021年5月23日日曜日

疲れにくく、楽な動きが身につく体の使い方。体がよみがえる姿勢と動作。

 6月の各地の集中講座の内容は、「体がよみがえる姿勢と動作」「疲れにくく、楽な動きが身につく体の使い方」です。インヒビション(抑制)、ディレクション(指示)、誤りやすい感覚評価、プライマリー・コントロールなどについて、安部塾的な視点でお話しします。

 教科書は、薬院校時代にも使っていた「アレクサンダーテクニーク完全読本」です。今回の内容部分を少し引用いたします。

アレクサンダー・テクニーク完全読本 / リチャード ブレナン  医道の日本社

■インヒビション(抑制)(47P)

 何かを抑圧するわけではありません。ただ考える「間」となるひとときをつくるだけです。「本能のままの表現を制限すること」です。

 アレクサンダーは、体の使い方をより良いものに変えるためには、まず。受けた刺激に対して習慣的、本能的に反応することを抑える(または、やめる)必要があることに気づきました。

 ある行為を行なう前に少し休止のひとときを持つことで、私たちはその行為を行うに当たって最も効率的で適切なやり方を選ぶという理性の力を活かすことができます。刺激と反応の間に「考えるひととき」をつくるという重要なステップが、あらゆる場面で自由に選択する力を私たちにもたらしてくれるのです。

 行動のために脳を働かせる前に、「行動をやめる」ために活かすのです。適切に準備できるまで自らの反応を遅らせる(休止させる)能力が、インヒビションの意味するところなのです。行動する前の休止のひとときは、何かを前にして固まってしまうことや、よく用いられる意味での抑圧、ゆっくり行動することとは違います。

■ディレクション(指示)(55P)

 ディレクションとは、脳から体のメカニズムへメッセージを出し、そのメカニズムを利用するために必要なエネルギーを伝えることに関係するプロセスである。

 あなたが特定の部位に指示を出す(例えば「指を伸ばす」と考えていく)ことや、自分全体に指示を出す(例えば、身体全体を伸ばした状態にする)ことは可能なことです。また、あなたがどこに行くか、そこにどのように行くかを意識的に決めていくなど、空間の中で自分の行く方向について指示を出すことも可能です。

■誤りやすい感覚評価(63P)

 第1に、自分に欠点、または解消の必要がある問題点があるということを、生徒ははっきりと認識していなければならないでしょう。第2に、教師はその問題点を明確にして、それを是正する手段を決めなければなりません。生徒は、自分の肉体的な動作についてメンタル面で混乱していること、つまり自己の感覚評価、または筋感覚が不完全であることを認めることになるでしょう。別の表現で言えば、日常の単純な行為を達成するために必要な筋緊張の程度の感覚ですら、誤っていて、有害だったりすることに気づくでしょう。そして生徒が「リラックス」や「集中」といった状態にしようと思っても、この感覚的な誤りのせいで、実現不可能になってしまうのです。

 人類は、自己の心と体のメカニズムを行使するに当たって、潜在意識レベルで、この不純な感覚と不純な感覚評価に依存しています。

 このアレクサンダーの言葉をシンプルにすると、「私たちが実際にしていることと、私たちが『している』と考えていることは、まったく異なる」ということです。

 正しいことをすることは、私たちが最も避けたいことである。なぜなら、私たちが「正しいことをしよう」と考えること自体が、邪魔するからだ。すべての人は正しくありたいと願うが、誰も「自分が正しいと考えていること」が本当に正しいのか考えようとはしない。

■プライマリー・コントロール(93P)

 自身を長くすることは、浮力を得る感覚に加えて、強さも与えてくれます。椎間板が広がる場合は、椎骨に付着する小さな筋は長くなり、それによってより強度を増すことになります。椎間板と小さい筋によって起こされる「長く、そして強くなる」ことは、純粋に機械的な方法で、より長い筋に伝えられ、そのプロセスは表層にも及びます。この「長く、そして強くなる」プロセスは、動作によってさらに強化されます。体や体の一部を重力に逆らって動かす際は、持ち上げる筋は、持ち上げられた部位によって伸ばされることになり、それによって力が促進されることになります(つまり、重力に逆らう動きは、重力そのものによって促進されるということです)。

 例えば、椅子から立ち上がる際には、頭と首、背中は1つのユニットとなって、その長さを失わずに、前に動くことになります。このプロセスの中では、腰部や臀部、大腿の筋は伸ばされます。その伸張がある強さのレベルに達すると、伸張された筋は反射で収縮し、股関節を伸ばすことになり、さらに膝周りの筋も伸ばすことになります。この結果、体はスムーズに、そして簡単に持ち上げられます。感覚としても少しの労力でできる、または力を入れずにできるように感じるでしょう。

※引用ココマデ