2023年3月31日金曜日

足のやわらかさが、歩行時などの衝撃吸収の要となります。足が硬い人は、衝撃を吸収できません。

Truss mechanism(トラス・メカニズム=トラス機構)

Truss mechanism(トラス・メカニズム=トラス機構)

 「トラス」は建築用語で、構成される三角形を単位とした骨組構造のひとつです。

 足部は、縦アーチ(三角の二辺)と足底腱膜(三角の底辺)で構成されるトラス構造によって荷重を分散しています。この三角構造を(トラス・メカニズム)といいます。アーチを構成する伸縮しない底辺以外の2辺を構成する骨、関節、靱帯と伸縮する足底腱膜が底辺の三角形を描いています。

 足部が荷重を受けると、足底腱膜が遠心性に伸張し、アーチを低下させます。トラス・メカニズムは、歩行周期における立脚初期の踵接地から立脚中期にかけて作用し、足部接地時の衝撃緩和や立脚中期の合理的な荷重の分散と吸収を担っています。立脚中期では、距骨下関節および横足根関節(ショパール関節)が回内(外がえし)し、足根中足関節(リスフラン関節)が背屈するため、この運動連鎖によって足底腱膜はさらに伸張されます。これによって、トラス構造の重要な役割である衝撃吸収を最大限に発揮することが可能となります。

 まとめると、

  • 歩行時など、荷重がかかったとき、アーチの弾性によって衝撃を吸収する。
  • 底辺の足底腱膜が伸びながらアーチの低下にブレーキをかける(足底腱膜の張力)
  • 大きな筋力を必要とせずにアーチを保つことができる。 

過去記事→Windlass mechanism(巻き上げ機構)ウインドラス・メカニズムと内側縦アーチ。足底腱膜が弛緩した扁平足例では、アーチ挙上が出現しない。

 足が硬い人は、衝撃を吸収できません。かかとから足趾先に向かって扇状に広がる半円形の弓状の縦アーチは、複数の可動骨を経由することで柔軟性を得て、強い衝撃も吸収することができます。骨と骨がくっついていたら足が硬くなり、機能しなくなrます。

また、足の個々の骨を結んでいる靭帯には、「位置覚」を感じる神経センサーがあり、バランスをとるための情報を得ています。足が正常に機能していれば、ごくわずかな傾きも検知することができます。

4月のワークショップで解説します。

☆下関ワークショップ

4月1日(土)→ 詳細

 

機能運動学大牟田サークル

4月2日(日) → 詳細


☆東京ワークショップ

4月7・8・9 日(金・土・日)→ 詳細  

Windlass mechanism(巻き上げ機構)ウインドラス・メカニズムと内側縦アーチ。足底腱膜が弛緩した扁平足例では、アーチ挙上が出現しない。

 運動療法のための機能解剖学的触診技術 下肢・体幹 メジカルビュー社より引用します。

足部の内側縦アーチの構成要素と巻き上げ機構(Windlass mechanism)
足の機能解剖 図説足の臨床 メジカルビュー社

足部の内側縦アーチの構成要素

 足部には大きく3つのアーチが存在するが、そのなかでもっとも重要なのが内側縦アーチである。後方から踵骨、距骨、舟状骨、内側楔状骨、母趾中足骨により構成され、特に舟状骨はこのアーチの要石となる。このアーチが高すぎる足は凹足、低すぎる足は扁平足と呼ばれる。

Windlass mechanism(巻き上げ機構)

 Windlass mechanismとは、母趾中足趾節関節(MTP)関節を過伸展することにより足底腱膜が遠位に巻き取られ、その結果、内側縦アーチが挙上する現象をいう。足底腱膜が弛緩した扁平足例では、このようなアーチ挙上が出現しない。

引用ここまで
ウインドラス・メカニズム(巻き上げ機構)によるアーチ挙上
 
母趾球で立った時のウインドラス・メカニズム

 足趾を反らせるとアーチが引き上げられて足の剛性が高まり、地面を蹴る足先の力が生まれます。中足趾節(MTP)関節伸展に伴う足底腱膜の巻き上げにより内側縦アーチが緊張して、足部の剛性が高まるメカニズムをウィンドラス機構といいます。

 距骨下関節が回外すると、横足根関節の縦軸と車軸の交差が強まります。この結果、可動性が制限され、強固な足部を形成します。ウインドラス機構とともに機能して、歩行・走行時の蹴り出しの力を高めています。

 ウインドラス機構が正常に機能していない状態で、下肢の過剰に動かすと足が壊れます(足底腱膜炎など)。ウインドラス機構が正常に機能している人の足は正常な足部アライメントを示し、安定した高い剛性が確保できています。一方、ウインドラス機構が機能していない人の足は回内足(pronated foot)のアライメントを示していることが多く不安定で、足部に剛性の欠如が生じてしまいます。

 距骨下関節の過回内を防止し、適度な回外位を保つ訓練が有効です。母趾が伸展し、十分に底屈し距骨下関節レベルで適正回外位を保持できるように意識します。真っ直ぐゆっくり遠心的に踵をおろす訓練も有効です。

4月のワークショップで解説します。

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2023年3月30日木曜日

足裏(足底)・足の甲(足背)・すね・ふくらはぎを、ボディーローラーミニとリラクゼーションボールでほぐす。

  トリガーポイントと筋肉連鎖 GAIABOOKS より 引用します。

表層部にある足の内在筋

深層部にある足の内在筋


下腿の深層筋



脛の表層筋

ふくらはぎの筋

引用ここまで

 足関節(または距腿関節)は、足の骨と下腿骨を結んでいる関節単位です。ヒトが立位と2足歩行に適応進化したため、足部の静力学と歩行の展開において重要な役割を果たすようになりました。

 距腿関節を動かし安定化させうる筋は、すべて多関節筋であり、それは足のすべての運動を行います:いかなる筋も距骨には付着しません。いかなる筋も、足根骨の第1列には付着しないのと同じように。

 運動筋は距踵舟関節、および距骨下関節を介して、距腿関節に作用します。

 運動筋は、4つの群に分類されます。
  • 前方筋群(背屈筋)
  • 外側筋群(底屈筋と外返し筋)
  • 内側筋群(内返し筋)
  • 後方筋群(底屈筋と内返し筋)
(内側筋群と後方筋群は、《表層後方筋群》と《深層後方筋群》として記載することもできます)

※参考文献: 図解 関節・運動器の機能解剖 下肢編 共同医書出版社

 安部塾では、足まわりと下腿まわりを、ボディローラーミニとリラクゼーションボールでほぐします。面白いことに、真っ先に首の緊張が抜けます。足関節と顎関節は相互に影響を与えあっているからです。首が楽な人の体重は、足の母趾と2趾の真中のラインに落ちています。首が苦しい(硬い)人は、小指側のラインにに重心が落ちてしまうため、身体のバランスを取りにくくなります。首が楽な人は脛骨に、苦しい人は腓骨に乗っています。

 足首のアライメントが崩れてしまうと、膝関節→股関節→脊柱と身体バランスの連鎖が崩壊します。もちろん、肩関節→肘関節→手関節への連鎖も崩れます。

 地道に足まわりの機能を改善すると、多方面に好影響があります。

4月のワークショップで解説します。

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2023年3月29日水曜日

肩甲骨の解放。体幹から分離することで、肩甲骨は体幹に対して十分に自由に動く。

   図解 関節・運動器の機能解剖 上肢脊柱編 共同医書出版社 より引用します。

 肩関節は、上肢と体幹を連結している。

 《上肢の大部分は、特殊化した高度な機能に対応するため、系統発生学的発達本来の目的に沿ってきた、すぐれた高度な働きと自由な動作の連結を満足させ、同時に運動において必要な力と正確性を確保するために十分な安定のある運動単位の実現が、人類にとって、必要であった。この一般的目的~大きな動きをする器官の実現~は、体幹と連結する上肢と、骨盤と連結する下肢の比較において、それは特に明白になる。》

1 肩の運動域の増大と正確性の向上は、2つの力学的方法により獲得される。

1-1 肩甲ー上腕関節運動域の増大

 関節の柔軟性の増大には制限がある。なぜならば、運動域がある限度を越えれば、関節は《不安定》となるからである。

 そうなれば関節表面は、わずかな運動においてさえ接触を失い脱臼してくる。このため、脱臼を避けるために、関節の周囲には多数の筋が必要になってくる。つまり関節機構は複雑となり、それゆえ脆弱性を伴い、それを防ぐためには、筋をはじめとする複雑な協調機構のエネルギー消費の負担も大きくなる。

 肩関節の他動機構には安定上限界があり、その安定性は筋によってのみ保持される。人間のいかなる他の関節複合体も、このような筋のみによる安定化機構は存在しない。

 関節を効果的に働かせるために必要な腕の運動域を得るために、《自然》は、お互い荷重しあう上腕骨頭と相対する肩甲骨の両方を動かすことにより運動連鎖を実現したのである。

※運動連鎖:複合関節運動単位を形成する、一連の多数の関節の組み合わせ。

1-2 肩甲骨の解放

 系統発生学の発達の第1段階(両生類)では、肩甲骨は、体幹の強固な棒のごとき骨による連結にとどまっており、体幹から分離することで、肩甲骨は体幹に対して十分に自由に動くことができるようになった。体幹に対するこの運動は、肩甲ー上腕関節に伴い、それゆえ、肩甲骨の真の解放が存在するこの運動の中に、その解剖学的な複雑性と相対的な脆弱性があるのである。

肩甲骨の解放

2 このような特性を有する関節複合体が効果的に機能するためには、以下の解剖学的機構が必要となってくる。

2-1 肩甲ー上腕関節の力学的構造は、他動的に制限されるべきではなく、関節周囲筋により自動的に正確に制御されなければならない。

肩関節複合体における筋の自動制御

2-2 錐体様の胸郭に対する肩甲骨の移動行程が、可能にされ、導かれなかればならない。そのためには、以下のものを必要とする。

  • 滑走面(肩甲ー胸郭の仮性関節)
  • 運動の調整と制御機構
  • 車の前部車体受けの中の、弯曲した棒の役を果たす調整軸としての鎖骨:鎖骨はある種の金属ほどには柔軟でなく、その両端において肩鎖関節と胸鎖関節に連結している。
  • 肩甲骨と鎖骨の位置の制御と、その運動を誘導する筋群

2-3 完全な運動の協調において、関節複合体のすべての要素を機能的に完全な状態におくことが必要である。なぜなら、腕の各運動は、肩関節複合体のすべてを動かさせ、多数の関越・筋要素を同時に機能させるからである。本来、正常の生活においては、単純な運動(短関節)は現実には存在せず、基本的運動単位を理解し、正確な徴候学を分析できるように便宜的に分離しているにすぎない。

 引用ここまで

 肩甲骨が解放されていてはじめて、腕の各運動は、肩関節複合体のすべてを動かさせ、多数の関越・筋要素を同時に機能させることができます。

4月のワークショップで解説します。

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2023年3月28日火曜日

正常の足においては、無意識的に「内転、回外、底屈の組み合わせで内返し」「 外転、回内、背屈の組み合わせで外返し」という肢位をとる。

   図解 関節・運動器の機能解剖 下肢編 共同医書出版社 より引用します。

2 屈曲ー伸展運動は、距腿関節で行われる。

 多少の屈曲ー伸展運動は、足部の他の関節部位……とりわけショパール関節でもなされうる。しかし、それらの動きは無視できるものとみなして検討する。

屈曲(背屈)ー 伸展(底屈)

2-1 屈曲(背屈)とは、下腿前面と足背により形成される角度を閉じることである。

 その平均値は20度である。しゃがみ動作の多いアジア人では、背屈は45°、またはそれ以上に達することがある。

2-2 伸展(底屈)とは、下腿前面と足背により形成される角度を開くことである。

 その平均値は40°である。個人差が大きい(30~60°)。

2-3 これらの運動は、矢状面と15°前外方に開いた垂直面で行われる。

 屈曲ー伸展の運動面は、(後下方に位置する)外果と(それより前外方に位置する)内果とを通る軸に垂直である。これは、足関節の機能のおおまかな見方にすぎないが、実際上はこれで十分である。

 背屈の際、足尖が自然と上外方を向き、一方底屈の際は下内方を向くことを、自分自身で確かめることができる。

2-4 相対的肢位、つまり解剖学的肢位においては下腿に垂直である。

 しかし、距骨だけを考慮すると、距骨の(体部、頸部、頭部を通る)前後の長軸は、解剖学的基本肢位では脛骨軸に垂直ではなく、15°底屈している。

3その他の足の運動

 分析上、距腿の運動(底屈、および背屈)からの他の運動を区別して考える場合でも、他の運動を考慮する必要がある。なぜなら、実際は他の運動も距腿の運動と組み合わさっているからである。足部と足関節は、多関節の組み合わせであり、その中で遠位(足部)の関節が運動筋が近位(距腿)の関節に多少とも影響を与える。

内転ー外転

3-1 内転と外転

  • これらの運動は、(下腿の垂直軸に直交する)水平面で行われる。
  • 内転では、足尖は内方を向く(体の対称面、または矢状面に近づく)。
  • 外転では、足尖は外方を向く(体の対称面より遠ざかる)

回外ー回内

3-3 回内と回外

  • これらの運動は、前額面と足部の矢状軸(第2趾列を通る軸)に垂直な面で行われる。
  • 回外では、足尖は内方を向く傾向がある。
  • 回内では、足尖は外方を向く傾向がある。

内返しー外返し

3-3 正常の足においては、無意識的に運動の組み合わせがおこっている。

  • 内転、回外、底屈が組み合わされて、足は内返しという肢位をとる。
  • 外転、回内、背屈が組み合わされて、足は外返しという肢位をとる。

外反と内反

3-4 距骨(または後足部)では、回外、および回内は、一般的には内反、および外反と呼ばれる。

  • 後足部の回外(内反)は、踵骨の外側面を地面につけようとする動きである。
  • 後足部の回内(外反)は、踵骨の内側面を地面につけようとする動きである。

 内反、および外反の動きは、ほとんどいつも内転、および外転の動きと関連している。その意味から、これらの運動は次のように定義されることもある。

  • 内反:底屈なしで、内転と回外が組み合わさった運動。
  • 外反:背屈なしで、外転と回内が組み合わさった運動。

 引用ここまで

 安部塾では、ボディローラーミニでふくらはぎをほぐすとき、内返しと外返しを使います。内返しではふくらはぎの内側面が、外返しではふくらはぎの外側面がローラーに触れます。

2023年3月27日月曜日

尺骨が固定された場合、回内ー回外軸は第5中手骨(小指)を通る。尺骨が動きうる場合、回内ー回外軸は第3中手骨(中指)を通る。

 前記事 → 回内位では、尺骨は動かず、前腕の固定中心軸を形成するが、橈骨は尺骨のまわりを巻きつくように動き、尺骨の前方に交叉してくる。

   図解 関節・運動器の機能解剖 上肢・脊柱編 共同医書出版社 より引用します。

肘が屈曲位にある場合、回内ー回外運動軸は第3中手骨を通過する。

1 尺骨が固定された場合、回内ー回外軸は第5中手骨を通る。

  • 手が基本肢位にあれば、第5指の軸は前腕の機能軸の延長上に位置する。この場合、手の回内ー回外は尺骨の橈側縁のまわりで行われるであろう(図Ⅳ及び図Ⅳ-2-2)。
  • しかし、この種の運動は現実的ではない:もし、このような回内-回外が行われるならば、ドライバーや鍵を回すことはたいへん困難になるであろう。
  • 実際は、回内ー回外はこのようにはなされない。尺骨は、肘が伸展位にあるときのみ固定される。上腕骨の回転が回内ー回外運動に伴うことで、この運動を実用的なものにしている。
回内-回外軸の偏位

回内ー回外軸(肘伸展位と肘屈曲位)

2 尺骨が動きうる場合、回内ー回外軸は第3中手骨を通る。

 肘が屈曲位にあるときは、尺骨の滑車切痕、上腕骨滑車の継手、靱帯の緊張は尺骨のわずかの側方運動さえも防ぐほどは強くはない。尺骨の腕は長いので、尺骨頭は大きく偏位しうる。

2-1 橈骨と尺骨の遠位端は、回内ー回外軸において、互いに反対方向に円弧を描く。

  • 回外位から中間位までの工程において、尺骨頭は背側(肘の部分では2~3°の尺骨の伸展)と外方(4~5°の尺骨の外転)へ偏位する。
  • 運動が中間位から回内位に進むと、尺骨頭は外方、腹側に転位し続ける。
  • 尺骨頭は、このように中心が第3指軸上にある円弧を描く。回外から回内においては尺骨の外転は8~10°である(図Ⅳおよび図Ⅳ-2-2参照)。

2-2 このように手においては、回内ー回外は第3中手軸のまわりで行われる。

第3中手骨は、手の機能的長軸である。
ネジや鍵を回すためには、回転軸が第2指を通る必要があるか、第3中手骨を通る回内ー回外運動軸に一致させるためには、手をわずかに尺側に傾斜させれば可能である(図Ⅳ-2-2参照)。

2-3 この関節複合体(前腕、橈尺関節、骨間膜)の構築の安定性は十分に大きく、それゆえ手の正確で適合した運動を可能にしている。


日常のある種の動作における回内ー回外運動

  • 家の鍵をあけるためには手を回外位にもってこなければならない:この場合、肩の作用はこの運動を補強しえない。
  • ネジを正確に締めるためには、前腕の運動だけが利用される。しかし、力強くネジを締めるためには、前腕を中間位に固定し、肘をまず体幹から離し、次に腕を内転位にもってくることで、回外運動を補強運動を補強することが必要である。
  • 食事をとるためには、回内ー回外の巻き戻しを利用している。食べ物を拾い集めるときには、手を回内位にし、肘を伸ばしている。食べ物を口にもっていくには、手は回外位、肘は屈曲位にしなければならない。この場合、上腕二頭筋は肘の屈曲筋および回外筋として主要な働きをする。
  • もし、前腕が回外位で固定されていると、いかなる形の代償運動も、手を回内位へもっていくことはできない。
  • 一方、前腕が中間位で固定されていると、腕の外転による代償で、手を回内位にもっていくことができる。つまり、《肩とともに回内する》といえる。前腕の固定の際には、拘縮のおそれのため、前腕を中間位にしておく必要がある。

 引用ここまで

 前腕の回内ー回外運動は、とても重要な運動であるにも関わらず、あまり重要視されていません。例えば、猫背を改善したいのであれば、前腕の回外運動からの運動連鎖を意識しながら息を吸えば、自然と胸がひろがって背中が伸びます。また、肩が痛いとき、前腕の回内外の可動域テストをしてみると、回外に制限があることがあります。なので、前腕の筋膜リリースを施して回外制限を解除すると、いきなり肩の痛みが消えたりします。

 トーマス先生によると、「肩・前腕・手の回旋能力には多数のラインの切換が必要であり、これによって運動における可動性と安定性が増す」とされています。なので、アームラインを意識しつつ、肘・肩の2側面からのアプローチを行うことで運動連鎖の改善を試みることで、動作時における肩に対する負担を最小限にすることができると考えています。

 肘の機能的な動きが失われると、上肢全体の機能が障害されます。4月のワークショップは、前腕の機能改善による全身の動きの改善の解説をします。

回内位では、尺骨は動かず、前腕の固定中心軸を形成するが、橈骨は尺骨のまわりを巻きつくように動き、尺骨の前方に交叉してくる。

 前記事 → 前腕がその軸に対して回転する回内ー回外運動は、上肢の発達の中で出現してきた運動であり、手のいろいろな表現を行ううえで不可欠である。

前腕の回内と回外

  図解 関節・運動器の機能解剖 上肢・脊柱編 共同医書出版社 より引用します。

Ⅱ 回内ー回外機構の分析

1 回内ー回外の運動軸

 回外位では、橈骨と尺骨は同一平面上にあり、おおよそ平行位にある。

 回内位では、尺骨は動かず、前腕の固定中心軸を形成するが、橈骨は尺骨のまわりを《巻きつくように》動き、尺骨の前方に交叉してくる。

  • 橈骨上端(橈骨頭)は、橈骨長軸を回転する。
  • 橈骨下端は、尺骨下端の周囲に円弧を描く。

 このように、回内ー回外の運動軸は、橈骨頭中心と尺骨下端中心とを結ぶ線で示され、この軸は下外方に斜めに向いている。回内ー回外を説明する図は、肘90°屈曲位の前腕を上から眺めた図であるが、解剖学的に記述しやすいという理由で肘伸展位で下垂した前腕のごとく描かれている。

回内ー回外

2 回内ー回外運動を可能にするためには、すくなくとも次の3つの解剖学的条件が満たされなければならない。

2-1 近位および遠位橈尺関節は、旋回運動を可能にするような解剖学的形態をもたなければならず、回内ー回外運動の十分なる可動域を可能にさせなければならない。この2つの橈尺関節の1つが拘縮すると、回内ー回外運動は制限される。

2-2 橈骨と尺骨は、《交叉》をするために特殊な形態をもたなければならない。

  • もし橈骨がまっすぐであると仮定すれば、回内運動は非常に制限される。なぜならばこの場合、橈骨が尺骨前方へ交叉してくると、この2つの骨の間においてかなり厚い筋で満たされてくるので、より早期に制限されることになる。この2つの棒の一方が他方を回転できるためには、それがまっすぐだとすると、それらの両端は離れている必要があり、このことは、実際の関節では脱臼を意味する。ゆえに、橈骨がまっすぐであるという仮説は否定される。
  • 次に、回内を可能にするためには橈骨は直線ではなく弯曲していると仮定する:この場合、《回旋誘導弯曲》はかなり強く内側に曲がっていて、前方に凹状の形が必要である。この橈骨の形態は、自転車のクランクハンドルと比較できる。また、それは短い柄をもつ鉈ガマと似ている。同様の理由で、尺骨はまっすぐではない:その上端は大きく、また骨幹部の下方1/4は外方へ凹状をなしている。(尺骨の遠位関節面は、尺骨の長軸に関して、外方腹側に反っている)

橈骨の回内誘導弯曲形

2-3 前腕の2本の骨は、同じ長さを有していなければならない:もし、片方が短ければ、橈尺関節の回転点の1つが破綻するか、運動軸が偏位することにより、回内ー回外は不可能となる。

 引用ここまで。

 「回内位では、尺骨は動かず、前腕の固定中心軸を形成するが、橈骨は尺骨のまわりを巻きつくように動き、尺骨の前方に交叉してくる。」という知識があるかないかで、腕の動きの質がまるで違ったものとなります。正しく前腕を回内することができないために、四つん這い位で手をついて身体を支えたときに手首が痛いとか、肩が下がらずに浮き上がってリキんでしまうとか、肘関節が過伸展して反張してしまうとか、いろいろな問題が起きてしまいます。

 橈骨が尺骨のまわりを巻きつくように動き、尺骨の前方に交叉してくると、リラックスした状態でありながら安定した動きができるようになります。

 さらに続きます。



前腕がその軸に対して回転する回内ー回外運動は、上肢の発達の中で出現してきた運動であり、手のいろいろな表現を行ううえで不可欠である。

  図解 関節・運動器の機能解剖 上肢・脊柱編 共同医書出版社 より引用します。

回内と回外

基本概念

 回内ー回外とは、前腕がその軸に対して回転する運動で、それは上肢の発達の中で出現してきた運動であり、手のいろいろな表現を行ううえで不可欠である。

 回内ー回外の運動域は、手関節の大きな柔軟性を伴っていて、他の動物と比べると人間の特長といえ、これは《手の解放》、つまり運動機能の解放といえる。

1 回内ー回外の定義

1-1 回内ー回外は、前腕がその長軸のまわりを回転する運動を総称したものである。

  • その運動は、日常生活の中でほとんど常に肘と手関節の運動を伴っている。
  • これは、肘の肢位(伸展または屈曲)、手関節の肢位(伸展または屈曲、橈側または尺側偏位)にかかわらず、行うことができる。
  • しかしながら、それらは肘と手関節の肢位によってその運動域が修正されている。他方、それらの正確な測定には、肘と手関節の関連運動を除外する必要があり、相対的肢位の設定が必要となる。
  • 運動器を機能的に分析するためには、肘を体幹にぴったりとつけて、回内ー回外運動を検討し測定すべきである。

1-2 機能的肢位から回内ー回外運動を定義することができる。

回外とは、親指を外側に、手掌を上方に向けさせる前腕の軸回転運動である。

回内とは、親指を内側に、手掌を下方へ向けさせる前腕の軸回転運動である。

前腕の回内ー回外

2 可動域

2-1 回内ー回外の可動域は、個人、年齢、人種、性によってさまざまである(たとえば、女性の方が男性より一般的に可動域は大きい)。

  • 次の可動域が正常範囲と考えられる。回外=80~90° / 回内=50~80°
  • 回内ー回外を合わせた全可動域の平均は、150°である。もし、肘が完全伸展位にあれば、この可動域は約100まで減少する。

2-2 日常動作においては回内回外の《実際》の可動域は、肩関節の運動を伴っているためより大きくなる。

  • 肘が伸展位にある場合 体幹長軸に腕を垂らした肢位から90°までの外転位においては、上腕骨の回旋運動と肩甲骨の運動が前腕の運動に伴うために、全体として約270°の回内ー回外運動域をもつ。
  • 肘が90°屈曲位にある場合 腕の外転と内転運動は、回内ー回外の不十分な部分を補うことができる。このことは、ネジを締めたり、ゆるめたりするために必要な力を増強させることになる。

回内ー回外域の増加の可能性
 引用ここまで

 3月23~26日の、大阪・名古屋・神戸・新宮校のワークショップで、前腕の回内=回外運動の解説をしました。とても大切な運動なのですが、きちんと正確にできていないことが多く、さまざまなケガや故障の原因となりがちです。肩が巻いてしまったり、後頸部が過緊張してしまったり、重心があがって全身のバランスが崩れたりといった感じです。前腕の動きを理解することで、いろいろと調子がよくなります。

 次の記事に続きます。


2023年3月22日水曜日

頭部の前方突出:自動的な顎引きによる不良姿勢の改善。ボディローラーミニが効く理由。

 エッセンシャルキネシオロジー 南江堂 より引用します。

頭頸部

 頭頸部は、環椎後頭関節、環軸関節、C2~C7までの頸部の関節の3種類の関節の連結である。頭頸部は、脊椎の運動の中でもっとも可動性が高い。この領域の個々の関節は、頭部のポジショニングのために協調的に機能し、視線を目標に向けること、音を聞くこと、目と手を強調させること、身体の平衡を保つこと、などに重要な役割を果たす。

頭部の前方突出:自動的な顎引きによる不良姿勢の治療

 頭部の前方突出は、頭頸部領域の不良姿勢のひとつである。これは典型的にはテーブル上に置かれた本を読むときのように、長時間にわたって頭部を過度に前方の位置へ保持する姿勢である。また頭部の突き出しによって、下位頸椎は屈曲し、上位頸椎は伸展(通常は過伸展)する(図8-27.A)。

 長期にわたると、上位頸椎の筋や靱帯が短縮し、この部分の骨構造が接した状態になじんでしまう(図8-27.Aにおいて、頭蓋底面にC1とC2の棘突起が接近していることに注目しよう)。

 この頭部の前方突出の治療のひとつが、顎を引くことである(図8-27.B)。顎を引くことは、実質的に頭部を後方へ引きつけることにつながる。この運動により、下位頸椎は伸展し、また上位頸椎は屈曲して、頭部の前方突出が抑制される。またこの運動を定期的に行うことによって、頭部の前方突出が改善されることも多い。

図8-27
 頭部の前方突出および後退。

A:前方突出の際、上位頸椎は伸展するのに対して、下位頸椎は屈曲する。
B:対照的に後退の際は、上位頸椎が屈曲するのに対して、下位頸椎は伸展する。
(Neumann DA:Kinesiology of the musculoskeletal system:oundations for physical rehabilitation,ed 2,St Louis,2010,Mosby,Figure 9-47 より)

引用ここまで

 顎を突き出した前屈み姿勢の人を観察してみると、胸鎖乳突筋が床に対して垂直に近くなっている状態になっているのがわかると思います。一般的には猫背と呼ばれています。現代生活において、パソコン作業や、車の運転をするときなどに頭部を前方突出させる悪癖があると、不良姿勢が固定化されてしまいます。

 頸部の筋活動や咀嚼筋を亢進させてしまうため、後頭部から上背部の筋を緊張させて緊張型頭痛の原因になったり、全身に痛みやコリを生み出します。
 
  1. 頭が脊柱より前方に突出してしまうと、頭部の重みで頭が下がってしまいます。自ずと視線が下がり、床を見るかたちになります。
  2. この状態で前方を見るためには、後頸部・背部の筋群で頭部を吊り上げて頭蓋を水平にバランスしなければなりません。
  3. この状態が長時間続くことで、後頸部・背部の筋群が疲労して筋痛が生じ、肩こり・緊張型頭痛・顎の痛みやだるさとして感じられるようになります。
 面白い研究結果が、あります。


「頭頸部位置を変えるだけでは疲労や筋活動は変化しないことを意味しており、さらに僧帽筋上部線維の筋活動異常を是正することが重要である」

 ボディローラーミニが効く理由のひとつだと思います。

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2023年3月20日月曜日

斜角筋群は、さまざまな角度から頚を安定させているため、構造的バランスにおいて、さまざまな姿勢パターンの原因になることもある。

   ファッシャルリリーステクニック 医道の日本社 より引用します。

 斜角筋は最近では第2の呼吸筋として広く認知されている。ちなみに肋間筋は第3の呼吸筋である。斜角筋は第2~第6頚椎の横突起を包み、まるで頚の周りにスカートのように第1、2肋骨へと下りてくる。呼吸時は、上の2本の肋骨を持ち上げ、下がるのを防いでいると表現してもいいだろう。

斜角筋群

 機能不全の際には、中斜角筋と後斜角筋(そもそも完全に分離しているとはいえない筋)と前斜角筋を分けて考えるべきである。中斜角筋と後斜角筋は傍脊椎筋であるため、「頚の腰方形筋」として機能する。頚の屈曲に関わる(または屈曲を防ぎ、安定させることの方が多い)。

 前斜角筋は第3~6頚椎の前結節から前方を、下前方に向かって、第1肋骨へと走る。前斜角筋は「頚の腰筋」といった方が適切である。頚を発生点とし、肋骨を付着点として使うように作られているため、吸引時には肋骨を上方向に引っ張る。胸鎖乳突筋を内側に押しのけて、その下にある滑らかで密な筋に指の腹を当てて、息を吸い込む。そうすれば、吸気の途中、または少なくとも息を吸い切った時点で、前斜角筋が硬くなるのがわかるだろう。178P

 この重要な筋群は、さまざまな角度から頚を安定させている。しかし、そのため、構造的バランスにおいて、さまざまな姿勢パターンの原因になることもある。前斜角筋は、頚部を下前方に引っ張る。片方がもう片方よりも強いと、回旋で問題となることもある。中斜角筋と後斜角筋は、頚を一方向に引っ張るため、外側へのずれや傾斜を引き起こす。237P

 引用ここまで

 斜角筋の機能不全は、その筋肉の小ささからは想像がつかないほど広範囲に悪影響を及ぼします。手、腕、肩、胸部、上背部などに、異常感覚(痛みやしびれ)を引き起こします。斜角筋の神経支配が、頚神経叢と腕神経叢という上半身に問題を起こしやすい神経であるためだとされています。

 安部塾では、母指・示指・前腕・上腕・肩甲部などに痛みが強く現れている場合、斜角筋群の機能不全を疑います。また、斜角筋は、吸気の際に第一肋骨と第二肋骨を引き上げる機能があり、激しい呼吸を繰り返すことで斜角筋にダメージを与えてしまうことがあります。呼吸器疾患などによって引き起こされる努力呼吸によりダメージが蓄積されることもあります。交通事故なども悪影響があります。

 以前も書きましたが、斜角筋の機能不全は、菱形筋の機能不全と負のフィードバックを起こしてしまいがちです。

 明日の大手門ワークショップで、解説します。

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胸鎖乳突筋と僧帽筋は同じ筋として発生し、鎖骨の発達がこれらの筋を分けている。僧帽筋はしばしば、胸鎖乳突筋の代わりを務めることがある。

  ファッシャルリリーステクニック 医道の日本社 より引用します。

胸鎖乳突筋(スーパーフィシャルフロントライン、ラテラルライン)230P

 頭部と頚部を前下方に引っ張り、前方へのずれを引き起こす筋群の中で最大の筋である。胸鎖乳突筋は、頭部にとって重要な筋膜による緊張を生じさせる。頚静脈と頚動脈に近いため、アプローチにナーバスになる施術家も多い。それももっともなことである。これらの構造体はデリケートで非常に重要であるため、かなりの慎重さが必要となる。しかし、それらを覆う胸鎖乳突筋は非常に動作性が高い頭部や頚部の周辺のバランスを取り戻す最初のステップとして、伸ばされなければいけない場合も多い。

表層シリンダー:僧帽筋と胸鎖乳突筋 208-209P

 頚部には広頚筋があるが、頚部を保護し、動かしている主な筋は、浅頚筋膜の2層の中に位置している。棘突起と項靱帯から発生している僧帽筋(表層部の筋膜の中に入っている)は頚部後面を包んでいる。もちろん、僧帽筋は肩の筋であり、じょうわんとの関係については第9章で扱っている。しかし、僧帽筋は頚を保護し、回す役割も持っている。

 僧帽筋の最上部は、後頭から鎖骨の部分である。後頭部の後内側面から、下前方へ、鎖骨の外側3分の1に向かって走行している。僧帽筋のその下の部位(頚から肩峰の部分)は頚部の棘突起から、下外側へ、肩甲骨の先端へ走っている。これらの部分はともに(胸鎖乳突筋のように)、肩の上の頭部の反対側への回旋筋であり、肩を挙上する筋でもある。しかし、これらの機能は異常となることもある(われわれはこれを機能不全と呼ぶ)。そして、肩は頚部や頭部を過度に安定させてしまうことがある。この一般的な機能障害は、頭部を安定させる軸機能において付属器官である肩でも起こり、さまざまな肩の損傷の原因となる

図8.9

 胸鎖乳突筋は頚の側面と前面を覆っている(図8.9)。胸鎖乳突筋は頭部の反対側への回旋筋である。しかし、姿勢筋としての役割が大きく、機能不全時には、頭部を前下方に引っ張る。胸鎖乳突筋と僧帽筋は、同じ筋膜に包まれている。ほぼすべての患者において、この筋膜は、前下方に引っ張られているため、後上方に動かさなければいけない

 この2つの筋は、人間が胚の状態の時は1つであるが、鎖骨の発達によって、2つに分けられる。2つの頭を持つ胸鎖乳突筋の胸骨への下の付着点は容易に触診が可能である。そして、より幅が広く、外側にある鎖骨頭は、鎖骨の内側3分の1に付着している。

図8.8

 そのため、僧帽筋の前縁と胸鎖乳突筋の後縁は、鎖骨の中3分の1で分離されている。上部では、後頭側面と後側頭骨で2つの筋が近づいており、筋膜は融合している(そして、頭蓋骨へと上昇して、頭蓋筋膜と融合している)。2つの筋の間に形成されている長く、細長い長めの三角形は、この表層を囲む筋膜の奥にある斜角筋などのモーターシリンダーに該当する筋への窓となっている。

 引用ここまで

 安部塾では、胸鎖乳突筋と僧帽筋は同じ筋肉であると考えています。引用元の内容を読んでもらえば、そう考えている理由がわかると思います。首コリ・肩コリとは、「肩が頚部や頭部を過度に安定させてしまっている状態」だと考えているので、「余計な力を入れない=無駄な力を抜く」ためのエクササイズにこだわっています。

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前方にずれた頭部を代償するために、肩が後方にずれる(後ろに引っ張られる)。肩甲骨を内旋させ上腕骨頭を前方に移動させて、見かけだけ姿勢を良く見せる問題。

 ファッシャルリリーステクニック 医道の日本社 228-239pより引用します。

 頭部が理想的な位置にあれば、頭部の重心は胸郭の重心の上にくる。その場合には、サポートをする筋筋膜による緊張のすべてが、前方に飛び出している頭部を不安定な状態で保持するという余計な負担を被ることなく、本来の役割を果たすことができる。

 多くの参考書には、耳と上腕骨頭が縦一列に並んでいるべきだと書かれている。しかし、肩甲帯は独立した可動性を持っているために、この表現は混乱を招きやすい。運動により肩甲帯がカウンターバランスとして機能することが必要になるまでは、肩甲帯は頭部と頸部の安定とは関係がない。

 頭部を支持する肩甲帯は過去数年、「裸足ランニング」に対する興味の高まりに合わせて大変注目されてきた。Lieberman(2011)は軸椎の突出と肩甲帯と頭部後面を結合し、ランニングの足底接地時における頭部の前方移動を減速させる項靱帯の発達について議論をしている。この機能的な結合は項靱帯周辺の筋膜の構造に関係があり、多くの活動的な患者はこの領域における治療により多くの恩恵をうけるだろう。

 われわれの事例では(図8.35)、前方にずれた頭部を代償するために、肩は後ろに引っ張られている(後方のずれ)。そして、肩甲骨の内旋により、上腕骨頭は前方に移動している。さらに、肩甲上腕関節も前方にずれているように見える。

図8.35

 この患者は、胸郭に対して明らかに頭部が前方にずれている。しかし、耳と上腕骨頭の配置は、それほどずれてはいないことがわかる。

 その際、前下方から、後上方に走っているすべての組織が短くなっているのがわかる(胸鎖乳突筋、上部僧帽筋の前部、前斜角筋、小後頭直筋、上頭斜筋)。一方で、喉の上部や、頚胸部では、逆のパターンが見られる。図では、胸鎖乳突筋の線が後傾して乳様突起に向かわずに、ほとんど垂直になっている。

 側屈した頚部では、短くなっている側の中斜角筋と後斜角筋に注目する(図8.36)。しかし、まずは同じ側の僧帽筋と頚板状筋のより表面的な組織を見ていく必要がある。このような場合には、頭部は頚部とは逆の方向に傾くことで、目を水平に保つ補助をしていることが多い。このパターンを矯正するには、頭部が側屈している側の後頭下筋群と頭板状筋を伸ばす治療も必要となる(図8.37)。

 引用ここまで

 胸郭に対して明らかに頭部が前方にずれていて、耳と上腕骨頭の配置がずれていない人がいます。前下方から、後上方に走っているすべての組織(胸鎖乳突筋、上部僧帽筋の前部、前斜角筋、小後頭直筋、上頭斜筋)が短くなっているのがわかります。

 前方にずれた頭部を代償するために、肩が後方に引っ張られてずれています。肩甲骨を内旋させて上腕骨頭を前方に移動させ、肩甲上腕関節も前方にずらして、見かけ上だけ姿勢がよいように見せています。

 当然の結果として、肩が壊れます。「胸鎖乳突筋、上部僧帽筋の前部、前斜角筋」を伸ばしながら、「小後頭直筋、上頭斜筋」を伸ばすことで肩が楽になるのは、前方にずれていた頭部が中間位に戻るからです。

 このとき、「上部頸椎過伸展・下部頸椎過屈曲(上部胸椎も)」に対して「上部頸椎屈曲・下部頸椎伸展(上部胸椎も)」の動きを行うことになります。頸椎部が中間位になることで頭部が正しい位置に戻り、呼吸も楽になります。

 3月21日(祝)の大手門ワークショップでは、ボディローラーミニを使って「胸鎖乳突筋、上部僧帽筋の前部」と「小後頭直筋、上頭斜筋」を押圧伸ばしするテクニックの解説をします。

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2023年3月19日日曜日

目を動かせば、後頭下筋群はその動きに耳を傾け、脊椎を調整する。視能訓練とビジョントレーニングが後頭下筋群に与える好影響は計り知れない。

 ファッシャルリリーステクニック 医道の日本社 212-214pより引用します。

 最も深部にあるのが後頭下筋群である。小さいが、非常に重要な筋群である。小後頭直筋、大後頭直筋、上頭斜筋、下頭斜筋が含まれる。

 後頭下筋群は、第2頸椎(軸椎)の特徴的な棘突起を中心として星形を形成する(図8.12)。棘突起は、後頭部の下の最初の棘突起として容易に触診できる。

 第1頸椎(環椎)は実質、棘突起を持っていない。母指を自分の後頭部の下の第2頸椎の棘突起のどちらかに当てる。指は頭部の側面に置いて、頭が動かないようにする。そして目を回してみると(目は閉じていても、開けていてもよい)、母指の下で、これらの筋の緊張の変化を感じることができるだろう。

 これらの筋は、多くの筋紡錘を持っており、それらは目とつながっている。目を動かせば、これらの筋はその動きに「耳を傾ける」。そして、それに従って、脊椎を調整する。

図8.12

  • ⓐは、後頭下を後ろから見ている。解剖書には必ず掲載されている図である。
  • ⓑは、斜めから見た図。さまざまな回旋を生むために、異なる方向に筋が走っているのがわかる。
  • ⓒでは、小後頭直筋と上頭斜筋が後頭部を下前方、第1頸椎に向かって引っ張っているのがわかる。このような異常は、近視の患者や、外傷後の恐怖パターンを持つ患者でしばしば見られる。

 後頭下筋群の後退は、第1頸椎の上で後頭骨を前面に移動させる。そのため、過伸展の原因となる。そのような後退は、恐怖を感じている時の一般的な反応であり、不安を抱えている患者にしばしば起こる。

 上頭斜筋だけが短くなっている場合には、頚に対して、頭蓋骨が回旋してしまう。下頭斜筋だけの短縮は非常に一般的であり、常に脊椎の回旋と同時に起こる。脊椎の回旋は環軸関節において代償されねばならず、さらには下頭斜筋の緊張につながる。

 これらの筋のリリースが、脊椎の動作や仙骨の解放、頭痛の軽減、視覚のリリース、頭部の前方へのずれの矯正、恐怖反応による緊張の軽減、一般的な頸部と頭部の動作性に与える影響はどれだけ強調しても足りないくらいである。これらの筋はスーパーフィシャルバックラインの機能的な中心であり、アレクサンダーテクニークの中心的テーマである。

 引用ここまで

 安部塾では、眼の問題を抱えている方に、「ZEISS Vision Center Fukuoka by Personal Glasses EYEX」を紹介しております。視能訓練とビジョントレーニングが後頭下筋群に与える好影響は計り知れません。眼の機能不全があると、身体操作訓練に支障が生じます。ビジョンアセスメント(視機能の客観的評価・分析)に基づく的確な訓練が、身体操作を円滑にしてくれます。

 3月の安部塾ワークショップでは、ボディローラーミニを用いて後頭下筋群へアプローチしています。参加者のみなさまから、一様に「目が開いた!」「すっきりした!」という感想をいただいております。

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2023年3月18日土曜日

首こりがひどくなると、自律神経に影響が出て、副交感神経の働きが低下すると考えられています。さまざまな不快な症状の一因として頭板状筋・頸板状筋・菱形筋の機能不全があるかもしれません。 

  トリガーポイントと筋肉連鎖 GAIABOOKS より引用します。

頭板状筋、頸板状筋(図19.19,19.20)

起始

  • 頭板状筋:項靱帯、棘突起、第1~第3胸椎体の棘上靱帯
  • 頸板状筋:第3~第6胸椎体の棘突起と棘上靱帯

停止

  • 頭板状筋:項靱帯の上部と下部の間(後頭骨の外側)
  • 頸板状筋:第1~第3頸椎体の後結節

機能

 頸椎の伸展と同側回旋

 引用ここまで

 アナトミートレイン 医学書院 より引用します。

SPL(スパイラルライン)の詳細

 SPLは後頭骨と側頭骨接合部の上項線外側、あるいは上項線上で頭蓋骨の外側面に起始し、後頭を下行し頭板状筋に連結する。途中で頸板状筋とつながり、C6からT5の棘突起に至る。

 次に、C6からT5の棘突起を越え、反対側の大・小菱形筋の筋膜シートに接続する。

 板状筋から上後鋸筋までの薄い小さな機械的接続と考えることもできる。上後鋸筋は大・小菱形筋の深層にあり、脊柱起立筋のすぐ外側で肋骨に付着する。菱形筋は同じ牽引ラインに沿って肩甲骨の内側縁まで進み、頭蓋骨の左側からおこったラインは右肩甲骨に接続する。頭蓋骨の右側に起点したラインも同様に左肩甲骨に接続をする。

姿勢機能

 SPLは身体を二重の対向するラセンで取り巻き、この二重ラセンはすべての平面において身体のバランス維持を助ける。SPLの機能異常や不均衡が生じると、身体のねじれ、回旋、側方偏位を引き起こし、SPLに起因した代償パターンの助長を招く。

 SPLの多様な機能に関与し、SPLの機能不全は他のライン機能に影響を及ぼす。世界中のほとんどの人々は、利き手と非利き手、利き足と非利き足、利き目と非利き目があり、身体の左右でSPLのバランスが完全にとれることはまれである。SPLは機能的に広範囲の状況下における適応性がある。

運動機能

 SPLの全体的運動機能は、身体に斜めのラセンと回旋運動を生み出し、伝達することである。SPLの遠心性収縮や等尺性収縮は、体幹と下肢を安定化して回旋による転倒を防ぐ。

 引用ここまで

 頭板状筋・頸板状筋は首の後方にある筋肉で、首を伸ばす機能があります。うつむいたときなどに頭を支える働きがあり、板状筋が硬くなったり、弱ってしまうと猫背の原因になり、逆に猫背でいることで負担がかかり肩こりや痛みの原因となります。「首を後ろにらすときに痛みがある」という場合、板状筋の機能不全があるかもしれません。

 菱形筋は僧帽筋の深部に存在する筋肉で、過緊張状態になると肩甲骨の動きが妨げられ、肩こりや猫背の原因になります。

 首こりがひどくなると、自律神経に影響が出て、副交感神経の働きが低下すると考えられています。頭痛や頭重、全身倦怠感、めまい、不眠、イライラ感、動悸、血圧不安定、発汗、目の乾燥など、さまざまな不快な症状の一因として頭板状筋・頸板状筋・菱形筋の機能不全があるかもしれません。 

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