2023年3月2日木曜日

この世の最大の不幸は、仕事を持たず、従って生涯の終わりにその成果を見ることのできない生活である。才能と意志の欠けているところにいちばん嫉妬が生ずる。

 役に立つ仕事はそれ自体楽しみであることがわかる。仕事それ自体であって、そこから引き出す利益ではない。

 人間にとって最大の楽しみは、共同で行う困難で自由な仕事である。自分の仕事に我を忘れて、完全に没頭できる人が、もっとも幸福である。

 自然の休息による中断以外は、絶え間なく有益な活動をしている状態こそ、地上で許された最上の幸福である。

 あらゆるほんとうの仕事は、人間が真剣にそれに没頭しさえすれば、たちまち興味深くなってくるという性質をもっている。人を幸福にするのは活動の種類ではなく、労作(創造)と成功との喜びである。この世の最大の不幸は、仕事を持たず、従って生涯の終わりにその成果(実り)を見ることのできない生活である。


幸福論(ワイド版岩波文庫)  ヒルティ著  草間平作訳 大和邦太郎訳

「本当に大切なのは、なによりも習慣の問題である。第一の主要な規則は、すなわち、われわれは消極的に悪い習慣を捨てようと努力するよりも、むしろ常に良い習慣を養うように心掛けねばならぬということである」

「まず何よりも肝心なのは、思いきってやり始めることである」

「仕事の机にすわって、心を仕事に向けるという決心が、結局一番むずかしいことなのだ。一度ペンをとって最初の一線を引くか、あるいは鍬を握って一打ちするかすれば、それでもう事柄はずっと容易になっているのである」

「人々の求める休息なるものは、まず第一に、精神と肉体とを全く、或いは成るべく働かせないことによって、得られるものではない。むしろ反対に、適度に按排して両者を働かせることによってのみ、それは得られるのである。人間の天性は働くように出来ている」

「真の休息はただ活動の中にのみある。即ち精神的には、仕事の着々たる進捗を見ることにより、所与の課題の成就によって、それは与えられる」

「自然の休憩によってのみによって中断される、不断の有益な活動の常態こそが、この地上における最も幸福な境地である」

「恐怖はつねに人間の中に何か正しくないことが生じた徴侯である。…恐怖は、苦痛が肉体に対して果すのと同様に、精神に対しても貴重な警告者の役目を果す」

眠られぬ夜のために(岩波文庫) ヒルティ著  草間平作訳 大和邦太郎訳 

「われわれが、人生で当面する憎しみの大半は、単に嫉妬か、あるいは辱かしめられた愛にほかならない」

「才能と意志の欠けているところにいちばん嫉妬が生ずる」

「何かにつけて憤怒をいだくうちは自己を制御していない。すべての悪に対しては、平静な低抗が最高の勝利をおさめる」


 ヒルティの「幸福論」には、「幸福とは何か」というよりも「幸福になる方法」の具体的なやり方が書いてあります。「自分でつくる幸福は、決して裏切らない」なんて、シビレますよね。

 数年前、真面目に働く会社員を「社畜」と小馬鹿にする行為が一部の間で流行りました。社畜とは、勤めている会社に飼い慣らされ、自分の意思と良心を放棄し、サービス残業や転勤もいとわない奴隷と化した賃金労働者の自分を自嘲する言葉であったものが、会社員を揶揄するように使われるようになったと記憶しています。

 揶揄している人たちを観察してみると、会社に勤める能力が足りないように感じました。まともな会社に就職して勤務し続けるためには、それ相応の能力が必要になります。文字通り、才能と意志の欠けている自分にはできないことを容易くやっている会社員たちに、単に嫉妬していただけなのではないかと思います。

 「人を幸福にするのは活動の種類ではなく、労作(創造)と成功との喜びである」

 勤勉に働いて成果を出していくことを大切にしていれば、ずっと幸福でいれると思います。