2021年5月1日土曜日

広背筋の緊張が高いと、代償として腰を反り、脊柱後方の構造を圧縮してしまいます。持ち上げたり押したりする動作を繰り返し行う人が腰痛になる原因として一般的です。

広背筋

■広背筋

起始:胸椎7番~腰椎5番の棘突起、腸骨稜後方、仙骨後方(胸腰筋膜を通して)

停止:上腕骨の小結節稜

作用:肩甲骨の内転・水平外転・伸展・内旋

 広背筋は背中の大きな筋で、主に上腕骨を動かします。胸腰筋膜への付着部は広く、上腕骨の特殊な付着部は肩甲上腕関節に驚異的な力を生み出す可能性を持たせます。まれに肩甲骨の外側下方部の大円筋あたりに付着部を持つ人もいます。

広背筋の独特な捻り

 広背筋は上腕骨の付着部付近に金育の独特な捻りを持ちます。これと類似した捻りは大胸筋にもあります。両者のこの特徴が、大きく力強いこれら2つの筋肉の相乗関係の鍵となっています。広背筋と大胸筋は、大円筋や三角筋後部と共に働き、投げたり打ったりする動作時に、挙げた腕を下に引き降ろす(これは遠位の付着の捻りがほどける肢位)。また、広背筋は大胸筋と共に腕を内転し、よじ登る動作などでは腕を固定して体を持ち上げます。最後に、この広背筋と大胸筋は共に働き、イスからの立ち上がりや松葉杖で歩行しているとき、体操の吊り輪や平行棒を行なっているときのように腕で体重を支える際に、体幹部が下にずれるのを防ぎます。

 広背筋による関節可動域が十分かどうかにより、頭上で適切な動作が可能かどうかが左右されます。広背筋の緊張が高いと、代償として腰を反り、脊柱後方の構造を圧縮してしまいます。このことは、運動選手が持ち上げたり押したりする動作を繰り返し行う人が腰痛になる原因として一般的です。

※参考文献「ヴィジュアル機能解剖学 南江堂」

下部肋骨3本の外側部に付着する広背筋最外側繊維

 IFLの起始筋である広背筋の最外側繊維をたどっていくと、LLで説明した外腹斜筋の後部繊維との強力な筋膜接続によって、下部肋骨3本の外側部に付着しているのがわかります。外腹斜筋から上前腸骨棘に達したのち、上前腸骨棘を越えて縫工筋と筋膜的に接続する。縫工筋は脛骨内側顆の鷲足まで下行し停止します。

 第3の安定線。これは広背筋の最外側繊維から下部の外側肋骨、外腹斜筋後部まで進み、上前腸骨棘を越えて縫工筋から膝の脛骨内側顆に至る。IFLは、体操選手の吊り輪競技において体幹を安定させ、水泳選手ではクロールのストロークで上肢を引き下ろすときに体幹を安定させる。

※参考文献 「アナトミー・トレイン第3版 医学書院」

作用:肩関節を内転、内旋する、屈曲した上肢を伸展する

 広背筋は、よじ登るための筋肉のひとつで、肩関節を下方に引いたり、固定した腕に体幹を引き上げる。下位肋骨を上げることによって努力性吸気を補助する。

適応
安静時の「胸背部」の痛み/四十肩・五十肩/胸郭出口症候群/寝返りを打つときの痛み/肩甲下の鈍痛/肘かけについたときに出現する肩の鋭痛/手を伸ばしたときに出現する痛み

※参考文献 「トリガーポイント治療 緑書房」