自分と違う意見の人をすぐに「この人おかしい」と考えてしまう人は、多様性を受けいれるという現代の潮流に乗れません。自分と他者の意見が違うことは当たり前だからです。意見(ある問題についての考え)とは、それまでの自分の人生の経験から得てきた思い込みでしかありません。
「快・不快」は、感情を構成する主要な要素であり、好悪次元の両極に位置します。快はそれに対する接近傾向ないし持続欲求を、不快は退避傾向ないし終結欲求を伴います。日常感覚的には「好き・嫌い」という感情の反意語対になします。いずれも対象とする人物、事物、事象から喚起される情緒が意識された心的状態です。多くの場合、外部環境から影響を受けるとはいえ、対象に対する個人の評価を伴うことから、評価的感情ともいわれています。好悪感情には、後天的な経験によって獲得されるものが多くあります。
意思決定において優先されるものは感情であり、「好きだから自動車を購入し、魅力的だから仕事や家を選び、その後になって、さまざまな理由を挙げてこれらの選択を正当化する」。~ザイアンス
推論や意思決定を行なう際には、直感と感じられる身体感覚(快・不快)が生じ,それが重要な役割を果たすとする。ソマティック・マーカー仮説~ダマシオ
意思決定における感情優先は、認知的不協和理論(不協和によって生じる不快が認知の再体制化=修正を促すというものであり、感情が認知に優先されて処理されるものとみなす)からも間接的に肯定されています。この理論は,~フェスティンガー
印象形成においては、不快を感じさせるネガティブ情報の方が、快を感じさせるポジティブな情報よりも大きな影響力をもつことが知られています。これは対人印象の形成に限定的な現象ではなく、幅広い対象に対して見られます。
扁桃体 |
脳の扁桃体には交感神経活動を促し、副交感神経活動を抑える部位があります。不快な刺激を受けたり、不快なことを考えると、活動レベルが高くなります。扁桃体では外部からの刺激が快か不快のどちらに相当するかという判断もなされると考えられています。この判断に基づいて視床下部の報酬系または嫌悪系のどちらかが活性化されて情動行動が起こるとされます。
扁桃体での判断には、その人の過去の経験とそれに基づく記憶が影響する≒情動反応の処理と記憶において扁桃体が主要な役割を持つことが示されています。情動と感情の処理や直観力、ストレス反応に重要な役割を果たしており、恐怖・不安・緊張・怒りなどのネガティブな感情に関わっているとされ、何かを見たり聞いたりしたとき、その情報の内容というよりも、「闘うか逃げるか反応」を起こすか起こさないかを一瞬で判断しているようです。
交感神経が優位な状態になり、身体の過緊張が続くと、扁桃体はものごとをよりネガティブにとらえてしまいます。身体の過緊張とともに恐怖・不安・嫌悪感という感情がわき起こる理由です。情動が大きく動いた時の記憶を、脳は強く刻み込みます。嫌な経験をすると、また同じことが起こるのではないかという予期不安が生じるようになります。
扁桃体の過剰活動が続くと、些細なストレスに対しても過敏に反応してしまうようになります。ストレスホルモンであるコルチゾールやノルアドレナリンが分泌され続け、免疫システムが崩壊し、脳や身体に炎症が起き、免疫力が顕著に低下します。海馬や前頭前野も壊れ、感情制御だけでなく記憶力や注意力の機能がダメになります。
扁桃体の過剰な活動にすぐに対処したいときには、正しい姿勢の維持と正しい身体操作が効果的です。ネガティブ感情や身体の不調の原因となるストレスホルモン(ノルアドレナリン、アドレナリン、コルチゾールなど)の分泌を抑えることができ、扁桃体の過活動を鎮静化させ、慢性ストレスによる不快な症状や気分の落ち込みに対して改善効果をあげることが期待できます。