2020年11月5日木曜日

脊柱を長く伸ばすことが大切です。胸椎と肋骨が良く動かないと、他の部位が壊れます。

人間の脊柱は、胸部と仙骨部に一次弯曲(後弯)が、頸部と腰部に二次弯曲(前弯)が完成されています。直立二足歩行するためには、2種類の弯曲がどちらも必要です。体重を支え可動性を得るための身体下部の持続的強さ(耐久性)が、身体上部には呼吸や腕の動作のための穏やかで心地よい楽さが発達しました。

脊柱の弯曲

脊柱の屈曲(背中を丸める動き)は脊柱の後弯を強め、脊柱の前弯を弱めること。脊柱の伸展(背中を反らせる動き)は脊柱の前弯を強め、後弯を弱めることだということになります。前弯と後弯は相反する関係であり、どちらかの弯曲を強めると、もう一方の弯曲は弱くなります。自然な脊柱の形状変化は、吐く(呼息)で屈曲(丸まる)、吸う(吸息)で伸展(反る)であり、呼吸の形状変化は脊柱の形状変化だといことがわかります。また脊柱の形状変化は呼吸の形状変化でもあるので、脊柱屈曲の動きが呼気を生み出し、脊柱伸展の動きが吸気を生み出すこともわかります。

脊柱を長く伸ばすことを「軸伸長」といいます。脊柱全体が長くなるということは、頸部・胸部・腰部の弯曲をすべて弱めるということです。脊柱の前弯と後弯を同時に弱めることで、脊柱を長くすることができます。これにより、前弯と後弯の相反関係を回避することができます。

脊柱を長くするためには、呼吸構造の緊張と変化が必要です。声帯隔膜・横隔膜・骨盤隔膜(骨盤底筋群)が安定状態となる必要があります。胸腔と腹腔の形状が安定することで脊柱が長くなります。代償として、呼吸量が減少します。強制的に「吐く」ことが必要になります。

さて、楽に動くべき胸椎と肋骨が固まって動かないと、どうなるでしょうか?

他の部位に過剰な負担がかかり、連鎖的に壊れていきます。胸椎の機能として、伸展動作と回旋動作が重要です。胸椎全体での回旋動作角度は30~35度程度。体幹部全体の回旋動作角度は35~40°程度。つまり、体幹部での回旋は胸椎部の回旋がほとんどであるといえます。

胸椎と肋骨が動かない場合、腰椎の安定性が犠牲となります。胸椎と肋骨の動きの悪さを補うために、本来は腰椎の役割ではない回旋動作や伸展動作を強いられることになり、機能的に不安定な状態となってしまいます。

そして、胸椎と肋骨が動かないということは「呼吸ができない」ということでもあります。もうおわかりだと思いますが、「一見、動きを伴わない呼吸の練習で、なぜ首や腰が楽になるのか?」と謎の答えは、「胸椎と肋骨が楽に動くようになるため」だということです。安部塾の「息吹」は、古代製鉄における「ふいご(気密な空間の体積を変化させることによって空気の流れを生み出す器具。 金属の加工、精錬などで高温が必要となる場合に、燃焼を促進する目的で使われる道具)」のように呼吸を繰り返すことで、楽で動きやすい身体に鍛錬していく技法です。

11月の集中講座やグループレッスンで、しっかり練習していきます。