2024年4月22日月曜日

頭部前方位姿勢は、深刻な健康問題を引き起こす可能性があります。呼吸の質が落ち、社会交流に必要な機能を持つ五つの脳神経と、脳幹への血液供給を減少させます。

 

からだのためのポリヴェーガル理論 スターレン・ローゼンバーグ 春秋社

 からだのためのポリヴェーガル理論 スターレン・ローゼンバーグ 春秋社より

頭部前方位姿勢に由来する健康問題

 後弯症あるいは頭部前方位姿勢(FHP)は、深刻な健康問題を引き起こす可能性があります。これは僧帽筋と胸鎖乳突筋の機能不全に関係します。頭部前方姿勢は、一般的に、姿勢の悪さから発生します。

 私たちは、歳をとるにつれ、姿勢が悪くなり、呼吸が浅くなり、めまいに悩まされるようになります。この問題は、医学的な問題とは考えられていません。医師は、これは加齢によるもので、改善の手立てはないと言います。こういった症状を治療するための薬も手術もありません。

 FHPになると首がたるむ傾向があり、頭が前方に突き出すようになります。胸の上部が潰れ、心臓と肺のための空間が減少します。FHPはまた、吸気の間、第一肋骨を持ち上げる筋肉群の動きも阻害し、その結果、呼吸の質が落ちてしまいます。

 頭部前方位姿勢は、頭に血液を運び上げる椎骨動脈を圧迫し、顔、脳の一部、社会交流のための脳神経Ⅴ、Ⅶ、Ⅸ、Ⅹ、Ⅺが始まる脳幹への血液供給を減少させます。このような状態に陥ると、顔色が青白くなり、自然な顔の表情に欠け、社会交流していないように見えます。これら五つの脳神経が十分な血液供給を受けられないと、適切に機能できなくなり、慢性ストレス状態か、背側迷走神経が過活性な状態に陥りやすくなります。

 姿勢が悪化していくにつれて、痛みや強張りが発生します。メイヨー・クリニックのニュースレターによると、、「FHPは、長期的な筋肉の緊張、椎間板ヘルニア、関節炎、神経の圧迫を引き起こす」ということです。

 後弯症の人は、しばしば、呼吸困難、軽度の腰痛、背骨の圧痛と強張りを併発します。感情的には、周囲に無関心であったり、無頓着になるなど、背側迷走神経が優位になっている引きこもりのような状態に陥ります。

 マッサージや運動は、身体の筋肉に作用します。しかし、僧帽筋と胸鎖乳突筋は、脳神経に神経支配されているので、違ったアプローチが必要です。これら二つの筋肉のどちらかにある緊張を正常化するためには、基本エクササイズをしてもらいます。このエクササイズをすると、たとえ初めてでも、クライアントの頭が後方の正しい位置に戻ることがよくあります。184-187P

FHPと後頭下筋の緊張

 胸鎖乳突筋と僧帽筋が、首と頭の回旋の大きな動きを提供する一方で、これらの動きの微調整は、後頭骨と頸の最初の二つの脊椎の間にある、小さな後頭下筋によって行われます。これらの筋肉のうちの三つは、後頭三角と呼ばれる領域を作っています。

 これらの後頭下筋の筋肉が緊張すると、後頭下神経、後頭三角の結合組織の中に埋め込まれている、椎骨動脈の近辺に圧をかける可能性があります。これが、社会交流に必要な機能を持つ五つの脳神経と、脳幹への血液供給を減少させます。

 FHPでは、顎が胸に向かって前方に落ちないようにするために、後頭下筋が緊張します。もしこれらの筋肉が、何か月も、あるいは何年も絶えず収縮した状態に置かれると、収縮がさらにひどくなり、FHPをさらに悪化させ、脳幹への血流も、ますます減少します。

 基本エクササイズは、後頭下筋の緊張を解放します。第一頸椎が回旋して、後方の元の位置に戻り、椎骨動脈への圧が減少し、脳幹への血流が増し、社会交流の能力が改善されます。189-190P

引用ここまで


 安部塾では、頭部前方位姿勢を頭部中間位姿勢に改善するのが基本だと考えています。厄介なことに、頭部前方位姿勢が悪化し続けている人ほど交感神経系か背側迷走神経系の状態であるため、自分の健康問題を環境のせいだと考えてしまいがちであり、他者とのつながりにも問題を引き起こしがちです。他者の価値観、動機、行動を理解するのが困難となり、不合理な行動をとりがちになります。

 社会交流には、視る能力と聴く能力が必要です。頭部前方位姿勢が悪化し続けている人で、「見えてるし、聞こえています」と主張する人がおられますが、「視る・聴く」ためには、社会交流の腹側迷走神経系が活性化している必要があります。相手のことを視ていないし、相手の話を聴いていない状態では、相手の言動を理解するのは困難です。結果、妄想により相手はこんな人だと勝手に決めつけることになり、結果的に距離を置かれることになりがちです。

 視ることと聴くことは、別々の体験ではなく、まぶたの制御と中耳筋の制御の経路は共有されています。社会交流の腹側迷走神経系が活性化していると、連携がうまくいきます。

 他者と交流すると、自分の存在意義を感じることができます。頭部中間位姿勢で社会交流の腹側迷走神経系が活性化している人同士は、お互いに目と目・耳と耳で通じ合えるので、お互いの肯定感情を高め合うことができます。お互いに視合い、聴き合いできているからです。社会交流の腹側迷走神経系が活性化している人たちと過ごす時間は至福です。

 一方、頭部前方位姿勢で交感神経系が過活性な人は、他者に意見して、自分の意見を受けいれてもらったときに自分の存在意義を感じがちです。相手が社会交流の腹側迷走神経系が活性化している人であれば、それでもまあどうにかなりますが、相手が同じく交感神経系が過活性な人だった場合、怒りをぶつけあうことになりますので、平穏な日々とは縁遠い人生となります。眉間を緊張させて、不平不満ばかり並べている人と過ごしてくれるのは、同じく不平不満ばかり並べている人ばかりです。知り合いは多いのに、友だちはいない的な、同気相求む状態。

 頭部前方位姿勢で交感神経系が過活性なストレス状態が続くと、破滅的な展開になりがちです。自律神経について学んでいる人たちを観察すると、健康状態の改善より先に、社会交流の改善が起きるのがわかります。

ゴールデンウイークに、自律神経のワークショップやります。

☆新宮校GWワークショップ

4月29日(月・祝) → 詳細

5月6日(月・祝) → 詳細

 

☆大手門ワークショップ

5月4日(土・祝) → 詳細