2024年4月19日金曜日

身体構造は、安全な状態の時に、タッチと手技を歓迎する。安全が身体構造に現れるとき、身体は治癒の基盤として機能する準備ができる。

 

からだのためのポリヴェーガル理論 スターレン・ローゼンバーグ 春秋社

からだのためのポリヴェーガル理論 スターレン・ローゼンバーグ 春秋社 より 

 スタンレーは、いともやすやすと「治せますよ」と言いました。私は喜びを抑えられない思いでした。スタンレーは私に、手と膝をついてリラックスし、背骨をなるべく水平に保つよう指示しました。それから両手の指を反対方向へ向け、滑っていた椎骨の上の組織を動かしました。すると椎骨はいとも簡単に所定の位置に滑り込みました。それ以来私は、腰痛が再発しないように、彼のやり方を15年間実施してきました。

 私は、彼が何をしているのかすぐに理解しました。組織の上部層をそっと動かすことで、スタンレーは身体にリラックスするように信号を送ったのです。組織がリラックスしたので、椎骨を支える筋神経を調整することができ、その結果、椎骨は穏やかに所定の位置に下がっていったのです。私の身体は、弱っていた腰椎を保護するために、防衛状態に入って収縮していました。スタンレーはそこにやさしいタッチを施し、それによって組織が安全であると感じられる状態へと導き、自分から自然な位置を見つけることができるようにしたのです。いわば、筋神経システムに安全であるという信号を送っていたのです。

 スタンレーの方法は、安全であることが、顔と頭の筋肉による社会交流システムの中や、腹側迷走神経経路にある内臓の中だけではなく、身体全体にとって大切なのだということを証明していました。人体のあらゆる側面で、安全であれば防衛反応が下方修正され、穏やかになっていきます。安全であると感じると、身体は、健康、成長、回復をサポートするために自らを再調整することができます。機能的には、神経系が安全であることを感じると、身体はタッチされることを歓迎し、それによって身体構造が整い、自律神経系が最適化されるわけですが、スタンレーはそれを暗黙の裡に理解し、具現化していたのです。

 私はスタンレーと出会って、即座に彼の本質とその輝きを理解しました。彼は、人々の痛みと苦痛を和らげたいと切望していたのです。彼は、穏やかな協同調整を通して安全な状態をサポートするという共感的なアプローチを用いていました。私は、彼が身体という統合的なシステムを直観的に理解していることがわかりました。

 彼は、クラニオセイクラルやその他の身体療法の素晴らしい恩恵の中に、ポリヴェーガル理論の特徴を鮮やかに統合しました。これを達成するために、彼は、「身体構造は、安全な状態の時に、タッチと手技を歓迎する」というポリヴェーガル理論の主要な原理を巧みに用いています。

 ポリヴェーガル理論では、骨格筋の神経調整を含めて、身体は、安全な状態では異なった働きをすると論じています。安全な状態では、腹側迷走神経経路が自律神経系を調整します。この状態では、自律神経系の防衛的な性質が抑制され、身体は、韻律のある発声や顔の表情にによる社会交流行動だけでなく、タッチも歓迎します。スタンレーの臨床的な成功の根底にあるのは、クライエントの社会交流システムとの相互作用を通して、クライアントにつながり協働調整をする彼の能力です。彼は、身体全体で安全を感じとることができるように導く腹側迷走神経回路の力を存分に引き出すための、信頼と安心の合図を伝えることができたのです。

 ヒーラーは身体が自身で治癒することを可能にしますが、スタンレーはこの役割を担っています。彼はクライエントと協働調整をし、クライエントが身体にもともと備わっているメカニズムを通して治癒するように励まし、それを可能にします。彼は、安全が身体構造に現れるとき、身体は治癒の基盤として機能する準備ができる、ということを暗黙の裡にりかいしています。そしてこれこそが、ポリヴェーガル理論の基本原理でもあるのです。

引用ここまで(ⅳ~ⅵP 序文より)


 「何のためにエクササイズするの?」と聞かれて、「社会交流を回復するため」「社会交流を強化するため」ということを、暗黙の裡に理解できている人は健康です。良質な健康状態は、迷走神経腹側枝が機能していなければ実現不可能です。慢性的な脊髄交感神経が過活性化してストレス状態に陥ってイライラしていたり、背側迷走神経系が過活性化して凍りつき反応状態に陥っていたら、良質な健康を満喫することはできないのです。

 楽しい社会交流ができる状態を具現化するためにエクササイズをすると、しあわせな気持ちになれます。頭部前方位姿勢を頭部中間位姿勢に整復すると、首と脊柱の可動性が回復し、社会交流に必要な5つの脳神経が出入りする脳幹への血流が増加します。眼を使ったエクササイズを加えることで、幸福度が爆上がりします。

 動きが雑で荒い人のタッチは、安全を感じさせるものではありません。動きが繊細で細かい人のタッチは、安全を感じさせます。言うまでもありませんが、前者は自他ともに破滅的な展開となり、後者は興隆・隆盛的な展開となります。

 ポイやソードスピン(剣まわし)、美しい人がただコスプレウオーキングしているだけのパフォーマンス、ワンコードでループするテクノやトランスを楽しめる人の幸福度が高いのは、「安全」という感覚を最優先にできているからなのかもしれません。腹側迷走神経回路が活性化しているので、穏やかな笑顔が溢れています。なにより、肌がきれいで、関節の動きも滑らかです。

 勧善懲悪的な劇や、派手な殺陣やアクション、不協和音や乱拍子による過緊張からの解決とかが好きというのは、慢性的に脊髄交感神経が過活性化してストレス状態に陥っているからかもしれません。しかめっ面を作る表情筋=皺眉筋の活性化がみられ、肌が荒れがちで、関節の動きがぎくしゃくしています。自分よりダメな人を見つけたときの歪んだ笑顔が特徴です。

 慢性的な脊髄交感神経が過活性化してストレス状態に陥ってイライラしていたり、背側迷走神経系が過活性化して凍りつき反応状態になってシャットダウンしていたり、激しく脊髄交感神経が過活性化↔背側迷走神経系が過活性化を繰り返していたりすると、腹側迷走神経回路が活性化している人たちの何がいいのかわからなくなることが多いようです。

 ゴールデンウイークに、自律神経のワークショップやります。

☆新宮校GWワークショップ

4月29日(月・祝) → 詳細

5月6日(月・祝) → 詳細

 

☆大手門ワークショップ

5月4日(土・祝) → 詳細