自宅に籠(こも)って、オンラインレッスン動画を配信しております。そして、「オンライン講座は、実際の講座の代用にはなり得ない」という現実を実感しております。アニメやドラマと現実を比べるようなものです。まったくの別ものであり、オンライン化の波は衰退することを確信しております。現在は緊急事態状況下であり、仕方なくオンラインによる講座をせざるを得ないだけです。双方向の場合、マンツーマンならまだしも、グループレッスンは無茶だと思います。会議レベルならむしろ実際に会うよりいいかもしれませんが、講座となると厳しくなるのではないかと思います。
身体をうまく使えない人の場合、そもそも「動きを目で追うことができない」という問題があります。加えて、「動ける人が発している言葉と実際の動きのつながりが理解できない」という問題もあります。つまり、元々動ける人が自分と同等かそれ以下の人の動きをオンラインで理解することは可能でも、自分より格上の動きを理解するのは困難を極めるということになります。実際に目の前で見ても困難な理解を、オンラインでできるはずがありません。わかったような気になりやすいため、危険性も高まります。
日本では古来より、『面授・面受』が大切にされてきました。「文章などで広く教えるものではない重要な教えを、師から弟子へと直接伝授すること」「まのあたりに授かること。弟子が師に口ずから教えを授かること」という意味となります。人と人とが直接ふれあっていのちの本質を伝えあい、あるいは直接体験で事実の真相に迫るのが基本だということです。眼と眼を合わせて眼から眼に授け、弟子は眼で受けるのです。フェイストゥフェイスということです。
「眼(まなこ)を開(かい)して眼に眼授(がんじゅ)し、眼受(がんじゅ)す。面(おもて)をあらわして面に面授(めんじゅ)し、面受(めんじゅ)す。面授は、面処(めんしょ)の受授(じゅじゅ)なり」正法眼蔵面授の巻
『師運』というものがあります。良い生き方をしている人は良い師に出会います。悪い生き方をしている人は悪い師に出会います。悪い生き方をしている人が良い師に出会えたとしても、その価値を理解できません。良い生き方をしている人が悪い師に出会うと、「この人とは関わってはいけない」として遠ざかることができます。このため、古代より「まず生き方を改めよ」という助言がされてきました。オンライン講座に関しても同様で、そもそもの身体の動かし方がダメな人はダメな師にしか出会えませんし、仮に良き師に出会えたとしてもその動きの素晴らしさを理解することができません。
新型コロナウイルスCOVID-19によって、いちばんの基本である『面授・面受』を封じられてしまったため、私自身の動きを一から見直しております。経験上、人生を良い方向に変えたいのであれば、自らの所作の品格を向上させるのが最良であると思います。思い込みによる間違った動きを廃絶することが、その第一歩です。動きを良くすることで、悪い師に出会うことがなくなります。そのぶん、各上の動きをしている人たちに学べる機会が増えてきます。そして、作法の大切さというものが理解できてくるはずです。
新型コロナウイルスCOVID-19流行鎮静後のフィットネス業界のスタイルが大きく変わると思います。流行直前に既にプライベートレッスンへの移行が進んでいましたが、さらに加速するのではないかと思います。そして、質の低いオンラインの流れが残って二極化していくことが予想されます。オンラインレッスンが、実際のレッスンの代用になると誤解した層が残ることになると考えております。
自宅で過ごそうの流れからオンライン化が進み始めたとき、「後で、自分の首を絞めることになるから、双方向のオンラインレッスンはやめた方がいい」という主張をしておりましたが、もうしばらくしたら意味を理解してもらえると思います。そのとき、この記事の続きを書きたいと思います。