2023年12月31日日曜日

肩甲挙筋の下部付着部(肩甲骨上角・内側縁の上方)におこる痛みとトリガーポイントは、頭部前方位姿勢に対する反応が原因であり、この姿勢自体がストレスへの一般的な反応です。

 アナトミートレイン(医学書院)より引用します。

 アームラインの筋筋膜のいくつかは、LL(ラテラルライン)がすべき仕事を行ってしまう。すなわち、頭を支えるバランスを取るようになる。この筋筋膜の1つは、頸椎の横突起と肩甲骨の先端とを接続する肩甲挙筋である。肩甲挙筋は板状筋と並行して走り、頸椎または頭の前方への牽引と拮抗するにはよい位置にある。

肩甲挙筋とラテラルライン
 問題は、肩甲骨がしっかりとした支持基盤ではないことである。多くの場合、結果として起始と停止が逆転し、肩甲挙筋が「頸部前傾防止筋」として使用されることで、肩甲骨は頸後部に向かって上方に牽引され始める。

 対象者は、肩甲挙筋の下部付着部におこる痛みとトリガーポイントを報告し、これを「ストレス」のせいにすることが多いが、実際にはよくみられる「頭部前方位」姿勢に対する反応が原因である。この姿勢自体がストレスへの一般的な反応である。

頭部前方位姿勢と肩甲帯

 鎖骨の外縁に付着する僧帽筋の先端は、より安定した軸性の胸鎖乳突筋と同じように機能することができ、ここでも肩の部分は頭を支えることになる。このパターンはLLの誤用として理解することができる。

胸鎖乳突筋と頭板状筋

 胸鎖乳突筋の筋膜もSFL(スーパーフィシャル・フロントライン)とLL(ラテラルライン)の両方の一部であることから、SFLが下方に牽引されるとLLに悪影響が出る。

 LLで胸鎖乳突筋に相当するのは頭板状筋、すなわち「X字」の「前方に上行する」路線である。頭板状筋は、頸椎下部から胸椎上部棘突起に起始し、後頭骨外側縁と側頭骨後側部に停止する。

 引用ここまで

関連記事→アームラインの筋筋膜のいくつかは、LL(ラテラルライン)がすべき仕事を行ってしまう。

肩甲挙筋のトリガーポイント

 上図の✕印あたりに痛みがある人の姿勢を観察してみると、頭部前方位であることが確認できるかと思います。 肩甲挙筋は胸鎖乳突筋の深部から起始することがあり、頭板状筋に起始と中間部が隣接または深く入り込み、僧帽筋の深部に下部が位置しています。

 肩甲挙筋が収縮すると、肩甲骨を内上方に引き上げます(肩をすくめるような動き)。起始と停止が逆転すると、肩甲骨に向かって第1~4頸椎の横突起が引かれることになります。つまり、頭部前方位姿勢では肩甲挙筋が頸部前傾防止のために酷使されることになり、肩甲骨の下方回旋がうまくいかなくなります。

肩甲骨の下方回旋と肩甲挙筋

 肩甲骨の下方回旋に関わる筋肉の短縮やスパズムは、上肢挙上(腕をあげる)の際の肩甲上腕リズムを妨げてしまうため、肩関節の疼痛につながりがちです。下方回旋に関わる筋肉は、肩甲挙筋の他に、大菱形筋、小菱形筋、小胸筋、前鋸筋上部繊維があります。頭部前方位では、これらの筋肉に複雑な負担がかかることになり、腕の動きが悪くなっているのが観察できます。

頭部前方位姿勢

 負の感情(怒りや恐れ)は上頸部の過伸展を引きおこします。そして、肩甲骨の機能を狂わせて肩関節や股関節に問題を引き起こします。頸部姿勢保持筋の過緊張と負の感情を持つ人たちに対するアプローチとして、感情にではなく、姿勢保持筋に対する姿勢改善や運動療法がより重要であるという知見があります。頭部中間位姿勢の実現によりリラックスできるようになることで感情的な余裕が生まれ、気持ちが穏やかになり、頭がクリアになります。

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