2023年2月7日火曜日

膝の過伸展(反張膝)は不良姿勢。人が真っ直ぐに立つとき、膝はわずかに曲がった状態で保たれます。

 アナトミー・トレイン第4版 54P、39-40Pより引用します。

 脊柱では一次弯曲と二次弯曲が交互に生じ、身体の後面全体にわたり伸展しているのがわかる。SBLはこれらの弯曲すべての後部で伸展し、SBL組織の緊張はこれらの弯曲がゆるやかなバランスを維持するうえで役に立つ。

脊柱の一次弯曲と二次弯曲 過伸展した膝と正常な膝

 アナトミー・トレインの用語では、過伸展した膝は二次弯曲の問題として見ることができる。

(A)治療前、この二次弯曲は一次弯曲に逆戻りしており、他の二次弯曲、この症例では腰部と頸部に余分な緊張がかかっていた。

(B)構造的身体結合の手技を行った後では、膝の弯曲は正常になり、結果として残りの二次弯曲も正常になった。

 機能的な姿勢と運動では、これらの二次弯曲はすべて互いに関連している。多くの場合、1ヵ所でバランスを失うと、近くの二次弯曲に代償パターンが現れる。例示した膝と背下部との関連は、日常的な観察で簡単にわかる。


 SBL筋膜ラインの下部、すなわち足底筋膜とアキレス腱を「弓の弦」、踵を凹んだような「矢」としてイメージしてみる。

弓の弦と矢

 SBLの下部からなる筋膜の連続体が緊張する場合、(A)ピンと張った弓の弦で押し出される矢のように、踵骨は足根に押し込まれる。(B)踵周囲の膜が「支帯」、あるいは「カップ」として踵骨を包んで制御する様子に注目。

 SBLは慢性的に過緊張(両脚が前傾し、骨盤が前方移動している不良姿勢の人によくみられる)したままだと、踵は距骨下関節のほうへ押し出される。あるいは、別のよくあるパターンでは過緊張によって脛骨と腓骨は距骨の後ろ側に入り込むようになる。これは結局同じことである。

 このパターン評価には、立位対象者の足を外側から見て、外果下端から架空の垂直線を下す(あるいは、外果先端から床まで示指を垂直に下ろしてもよい)。足がこの垂直線よりどの程度前方、あるいは後方にあるかを確認する。

 解剖学では垂直線より前方部分のほうが長いとされているが、少し訓練すると、正常の比率に比べて、垂直線より後ろの踵部分が比較的短いことがわかるようになる。


 具体的には、外果下から第5中足骨頭までを前方に向かって測定し(足趾は可変性のため含めない)、外果下から踵の終点まで後方に測定する(支えの限界)。

 純粋に経験上の臨床的根拠に基づくと、足後部と足前部との比率が 1:3 または 1:4 の場合、効果的な支えが得られることがわかる。比率が 1:5 以上の場合、身体の背部の支えは最も小さくなる。

 このパターンはSBLが緊張した結果というだけでなく、さらに緊張を強める原因にもなる。なぜならこのパターンでは、足前部により体重をかけるように両膝や骨盤が前方移動するからである。この体重の前方移動がSBLをさらに緊張させ、このパターンが続く間は、両足上で股関節のバランスをとらせるようにしても、対象者は安定感を得ることができない。

引用ここまで

 人が真っ直ぐに立つとき、膝はわずかに曲がった状態で保たれます。膝が後方凸に反りかえった状態になることはありません。

 立脚時に膝が過伸展してしまう現象を反張膝(バックニー)といいます。立位や歩行時に膝が伸びきってしまう=膝関節がロックしてしまうため、スムーズな膝の曲げ伸ばしが困難になります。

 体幹前傾、股関節屈曲、膝関節伸展、足関節底屈が起こります。股関節屈曲は脚の付け根が前方に曲がる動き、膝関節伸展は膝を伸ばす動き、足関節底屈はつま先を床側に下げる動きです。

 反張膝では反り腰になるか骨盤が前方にスライドし(反り腰ではおへそが下を向き、前方スライドではおへそが上を向きます)、ふとももの前側と脹脛が張ります。膝の半月板や靭帯に負担がかかり、膝の痛みが慢性化しがちです。膝裏が伸ばされ過ぎるために、膝窩(膝裏)の痛みが出やすくなります。

 お尻を後ろに突き出す人、骨盤を前に突き出す人は、ともに身体がつぶれています。バレエやダンスをやっている人は、反張膝になりやすい傾向があります。反張膝を推奨している人がいたりします。かつては、体操や新体操でも反張膝を推奨している人がいました。現在は機能解剖学的理解が進み、反張膝を推奨する人は減っているようです。

 人が真っ直ぐに立つとき、膝はわずかに曲がった状態で保たれます。このことを理解できると、バランスが改善し、楽に立てるようになります。