「体力」は、「健康に生活するための体力=防衛体力」と「運動をするための体力=行動体力」に分類されます。
防衛体力は、病原菌やウイルスから体を守るための免疫力や、心的ストレスから体を守るための体力だとされています。運動に必要な体力=基礎体力は行動体力に分類されます。
外部環境が変化しても内部環境を常に一定に維持しようとするホメオスタシス:恒常性の能力、外界からの刺激に対してしなやかに適応する適応性の能力、さまざまな病原菌やウイルスに対する抵抗力(免疫力)などの働きによって、生体をとりまく外界からのいろいろなストレスに耐えて、健康を積極的に維持しようとする自動調節能力が防衛体力です。
基礎体力には、「運動を力強く、速く行うための能力」、「運動を長く続ける能力」、「運動を調整する能力」などがあります。基礎的運動要因である体力と、基礎的運動能力である運動能力の歯車が噛み合わせることが大切だと考えています。基礎体力の錬成を怠ったまま小手先の技術ばかりを増やしていくと、いずれは破綻してしまうように思います。
脳・神経系の発達による動作の習得のピークは8歳前後だとされています。この時期は、いろろな動きを経験することでを自分の体を操作する能力を高めることができます。バランス能力も、この時期に伸びるとされています。あとで取り戻すのは大変なので、この機会を逸しないようにした方が良いと思います。
現実的には、動作の習得を年をとってからやっていくより先に、基礎体力の錬成に注力した方が良いように思います。運動が苦手な人は、運動そのものを避けてしまいがちなので基礎体力が低い傾向があると感じております。筋力・持久力・柔軟性・バランス能力の向上に心血を注ぐことで、基礎的な運動スキルを学び直す土台ができてきます。
私は「動作の修正」を仕事にしておりますが、8歳前後で身に着けた動きの修正にはかなりの時間と訓練が必要であると実感しております。体型や姿勢を含め、さまざまな影響を身体に及ぼしているからです。考え方も、身体の使い方の影響を強く受けていると考えられます。姿勢と感情の関連性を考えてみればすぐにわかりますが、動作の修正は簡単なことではないと思います。
「地道にコツコツ努力する」という行動様式も、これまでの動作パターンがつくりあげてくれるものだと考えております。すぐに飽きてしまって堪え性がなく目移りを繰り返し、5年間以上継続的な努力ができない場合、基礎体力も基礎的な運動スキルも低いのが観察できると思います。地道にコツコツ努力するための基礎体力がないということです。厄介なことに、基礎体力をつけるためには地道にコツコツ努力しなければなりません。
そう言った意味で、尻を叩いてくれる良質な指導者がいるのは良き結果につながっていきます。できない人に丁寧に指導するのはとてつもなく消耗する行為なので、わざわざそれをしてくれる指導者は稀有な存在です。悪質な指導者は、自分よりできない人をカモにして耳障りのいい嘘を並べて改善の機会を奪ってしまいます。自分の動作を変えていくのは簡単なことではないし、耳に痛いことばかり言われるのが基本だと私は考えています。
人生は一度きりですし、自分の肉体はひとつしかありません。体力は人生における財産であるとともに原動力でもあると思います。日々、自身の肉体を研磨し、体力を錬成していくことが大切だと思います。