その第1段階として位置づけられているのが、「シャト・カルマ(6つの浄化法)」(本書では「ガタ・シュッディ=器の清浄」とも呼ばれる)です。身体を徹底的にクレンジングすることで、病気を防ぎ、エネルギー(プラーナ)の通り道を調えます。
以下に、その6つの浄化法の概要をまとめます。
『ゲーランダ・サンヒター』が定める6つの浄化法(シャト・カルマ)
1. ドーティ(Dhauti)― 洗浄法
身体の内部や外部を洗い流す技法です。『ゲーランダ・サンヒター』では、これがさらに細かく4つのカテゴリー(内ドーティ、歯ドーティ、胸ドーティ、直腸ドーティ)に分類され、計13種類もの方法が紹介されています。
- アンタル・ドーティ(内ドーティ): 空気を飲み込んで排出する(ヴァータ・サラ)、水を飲んで吐き出す(ヴァーリ・サラ)など。
- ダンダ・ドーティ / ヴァサ・ドーティ(胸ドーティ): 蓮の茎(あるいは細い棒)を食道に通す、または細長い清潔な布(ヴァサ)を飲み込んで引き抜き、胃を洗浄する。
2. バスティ(Basti)― 浣腸法
下腹部、特に大腸を洗浄する技法です。
- ガラ・バスティ(湿式バスティ): 水の中にへそまで浸かり、大腸の吸引力(ウッディヤーナ・バンダの応用)を利用して肛門から水を吸い上げ、排泄します。
- シュシュカ・バスティ(乾式バスティ): 水を使わず、空気を利用して同様のクレンジングを行います。
3. ネーティ(Neti)― 鼻腔洗浄法
鼻の通り道を清める技法です。
- スートラ・ネーティ: 紐(現代ではカテーテルなどが使われることが多い)を片方の鼻の穴から入れ、口から取り出して前後に動かすことで、鼻腔を刺激・洗浄します。視力を高め、カパ(粘液)の乱れを整えるとされています。
4. ラウリキ(Lauliki)― 腹部攪拌法
一般的には「ナウリ(Nauli)」として知られる技法です。
- 立った姿勢で前傾し、腹直筋を左右、あるいは円を描くように激しく回転・攪拌させます。内臓をマッサージし、消化火(アグニ)を活性化させ、すべての病を取り除くと絶賛されています。
5. トラータカ(Trataka)― 凝視法
視覚と精神を集中させる浄化法です。
- まばたきをせずに、小さな対象物(一般的にはろうそくの炎など)を涙が出るまでじっと見つめます。
- 視力を向上させるだけでなく、雑念を払い、瞑想の準備(サマーディへの道)を開く心の浄化法としての側面が強い技法です。
6. カパーラバーティ(Kapalabhati)― 頭蓋骨光輝法
現代では呼吸法(プラーナーヤーマ)の準備として行われることが多いですが、古典では浄化法に分類されます。『ゲーランダ・サンヒター』では3つのアプローチが示されています。
- ヴァータ・クラマ: 片鼻ずつ空気を吸って反対から吐く、素早い呼吸。
- ヴュト・クラマ: 鼻から水を吸って口から出す洗浄。
- シート・クラマ: 口から水を吸って鼻から出す洗浄(※これらは現代の「ネットゥ」のバリエーションに近いアプローチです)。
【注意点】
『ゲーランダ・サンヒター』に記載されている布を飲み込むドーティや、水を吸引するバスティなどは、解剖学・生理学的な知識、そして何より熟練した指導者のもとでの正しい実践(あるいは現代的な安全な代替法)が不可欠です。独学での無理な実践は粘膜を傷つけるリスクがあるため推奨されません。