1. なぜ「3型糖尿病」と呼ばれるのか?
アルツハイマー型認知症の患者の脳では、インスリンに対する感受性が低下(インスリン抵抗性)していることが近年の研究で分かってきました。
- 本来のインスリンの役割(脳内): 脳の中でインスリンは、エネルギー(ブドウ糖)の取り込みだけでなく、記憶や学習、神経細胞の生存をサポートする重要な役割を担っています。
- 脳のエネルギー不足: 脳がインスリンをうまく使えなくなると(インスリン抵抗性)、神経細胞が深刻なエネルギー不足に陥り、機能低下や萎縮を引き起こします。
このように、「脳の中で起こっている代謝異常が、糖尿病のメカニズムと酷似している」ことから、アルツハイマー型認知症を「3型糖尿病」と表現する学説が登場しました。
2. 特徴とメカニズム
アルツハイマー型認知症の病変(アミロイドbetaの蓄積など)と、糖代謝には深い関係があるとされています。
- アミロイドbeta(ゴミ)の蓄積: インスリンを分解する酵素(IDE)は、実は脳内のゴミである「アミロイドbeta」を分解する役割も持っています。しかし、血中のインスリン濃度が常に高い状態(高インスリン血症)が続くと、酵素がインスリンの分解にかかりきりになり、アミロイドbetaの分解が後回しになって脳に蓄積しやすくなると言われています。
- 血管へのダメージ: 血糖値が高い状態は脳の微小血管を傷つけ、慢性的な血流不足を招きます。
3. 一般的な「2型糖尿病」との関係
体が糖尿病(2型)である人は、そうでない人に比べてアルツハイマー型認知症の発症リスクが約1.5倍〜2倍高くなるというデータがあります。血糖値のコントロール不良や運動不足、肥満といった生活習慣は、ダイレクトに脳の健康(認知症リスク)につながっています。
補足:医学的な注意点
現在の臨床現場(病院)で「あなたは3型糖尿病です」と診断されることはありません。あくまで「糖尿病とアルツハイマー型認知症の強い結びつきを説明するための概念・比喩」として使われることが多い言葉です。
予防や対策としては、一般的な2型糖尿病と同様に、バランスの取れた食事、定期的な有酸素運動、質の良い睡眠、そして急激な血糖値の上昇(血糖値スパイク)を抑える生活習慣が、そのまま脳の保護(認知症予防)に有効であるとされています。