口蓋(こうがい:口の天井部分)と姿勢には、非常に密接な関係があります。一見、口の中と全身の姿勢は無関係に思えるかもしれませんが、「呼吸」「舌の位置」「筋肉の連鎖」という3つの要素を介して深くつながっています。
主な関連ポイントを整理して解説します。
1. 舌の位置と口蓋の形状
正しい姿勢を保つための鍵は、舌が口蓋にぴったりと吸い付いている「正位(スポットポジション)」にあることです。
正常な状態: 舌が口蓋を押し広げることで、上あごのアーチが横に広がり、鼻腔(鼻の通り道)も十分に確保されます。
低位舌(ていいぜつ): 舌が下に落ちていると、口蓋に圧力がかからず、上あごの幅が狭く高い「高口蓋(こうこうがい)」になりやすくなります。これが原因で歯並びが悪くなったり、鼻呼吸がしにくくなったりします。
2. 気道の確保と「猫背・ストレートネック」
口蓋の形状や舌の位置が悪く、鼻呼吸がしにくい(口呼吸になる)と、体は無意識に空気を取り込もうとして姿勢を変化させます。
前重心の姿勢: 狭くなった気道を広げるために、あごを前に突き出し、頭を前方に移動させます。
姿勢の連鎖: 頭が前に出ると、その重さを支えるために巻き肩(猫背)になり、さらに骨盤の傾きや浮きゆび(足趾が浮く)など、全身のバランスが崩れていきます。
3. 筋膜のつながり(アナトミー・トレイン)
解剖学的にも、舌や口蓋周辺の筋肉は「ディープ・フロント・ライン」と呼ばれる体の深層部を通る筋膜のラインの終着点です。
このラインは、舌から喉、横隔膜、腰筋、そして足趾までつながっています。
そのため、口蓋の状態や舌の緊張は、横隔膜(呼吸の質)や体幹の安定性に直接影響を及ぼすとされています。
姿勢の悪さに悩んでいて、かつ「口がいつも開いている」「舌先が下の歯に当たっている」といった自覚がある場合は、MFT(口腔筋機能療法)の相談をするのが有効な場合があります。