図解 関節・運動器の機能解剖 上肢脊柱編 共同医書出版社 より引用します。
肩関節は、上肢と体幹を連結している。
《上肢の大部分は、特殊化した高度な機能に対応するため、系統発生学的発達本来の目的に沿ってきた、すぐれた高度な働きと自由な動作の連結を満足させ、同時に運動において必要な力と正確性を確保するために十分な安定のある運動単位の実現が、人類にとって、必要であった。この一般的目的~大きな動きをする器官の実現~は、体幹と連結する上肢と、骨盤と連結する下肢の比較において、それは特に明白になる。》
1 肩の運動域の増大と正確性の向上は、2つの力学的方法により獲得される。
1-1 肩甲ー上腕関節運動域の増大
関節の柔軟性の増大には制限がある。なぜならば、運動域がある限度を越えれば、関節は《不安定》となるからである。
そうなれば関節表面は、わずかな運動においてさえ接触を失い脱臼してくる。このため、脱臼を避けるために、関節の周囲には多数の筋が必要になってくる。つまり関節機構は複雑となり、それゆえ脆弱性を伴い、それを防ぐためには、筋をはじめとする複雑な協調機構のエネルギー消費の負担も大きくなる。
肩関節の他動機構には安定上限界があり、その安定性は筋によってのみ保持される。人間のいかなる他の関節複合体も、このような筋のみによる安定化機構は存在しない。
関節を効果的に働かせるために必要な腕の運動域を得るために、《自然》は、お互い荷重しあう上腕骨頭と相対する肩甲骨の両方を動かすことにより運動連鎖を実現したのである。
※運動連鎖:複合関節運動単位を形成する、一連の多数の関節の組み合わせ。
1-2 肩甲骨の解放
系統発生学の発達の第1段階(両生類)では、肩甲骨は、体幹の強固な棒のごとき骨による連結にとどまっており、体幹から分離することで、肩甲骨は体幹に対して十分に自由に動くことができるようになった。体幹に対するこの運動は、肩甲ー上腕関節に伴い、それゆえ、肩甲骨の真の解放が存在するこの運動の中に、その解剖学的な複雑性と相対的な脆弱性があるのである。
肩甲骨の解放 |
2 このような特性を有する関節複合体が効果的に機能するためには、以下の解剖学的機構が必要となってくる。
2-1 肩甲ー上腕関節の力学的構造は、他動的に制限されるべきではなく、関節周囲筋により自動的に正確に制御されなければならない。
肩関節複合体における筋の自動制御 |
2-2 錐体様の胸郭に対する肩甲骨の移動行程が、可能にされ、導かれなかればならない。そのためには、以下のものを必要とする。
- 滑走面(肩甲ー胸郭の仮性関節)
- 運動の調整と制御機構
- 車の前部車体受けの中の、弯曲した棒の役を果たす調整軸としての鎖骨:鎖骨はある種の金属ほどには柔軟でなく、その両端において肩鎖関節と胸鎖関節に連結している。
- 肩甲骨と鎖骨の位置の制御と、その運動を誘導する筋群
2-3 完全な運動の協調において、関節複合体のすべての要素を機能的に完全な状態におくことが必要である。なぜなら、腕の各運動は、肩関節複合体のすべてを動かさせ、多数の関越・筋要素を同時に機能させるからである。本来、正常の生活においては、単純な運動(短関節)は現実には存在せず、基本的運動単位を理解し、正確な徴候学を分析できるように便宜的に分離しているにすぎない。
引用ここまで
肩甲骨が解放されていてはじめて、腕の各運動は、肩関節複合体のすべてを動かさせ、多数の関越・筋要素を同時に機能させることができます。
4月のワークショップで解説します。
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