2021年4月21日水曜日

肩甲挙筋は僧帽筋や菱形筋とともに働きます。あらゆる機能不全が並行して起こる可能性があります。

 

大菱形筋・小菱形筋・肩甲挙筋

■大菱形筋・小菱形筋

起始:頸椎7番~胸椎1番の棘突起(小菱形筋)/胸椎2番~胸椎5番の棘突起(大菱形筋)

停止:肩甲骨内側縁、肩甲棘の根元から下角(小・大菱形筋)

作用:肩甲骨の内転、挙上、下方回旋

 菱形筋は僧帽筋、肩甲挙筋、前鋸筋と共に働き、荷重動作時に肩甲骨を胸郭に固定させます。特に菱形筋と前鋸筋は両方とも肩甲骨内側縁に付着部を持つが、それらの繊維は反対方向に伸び、完全に拮抗する関係にあります。これら2つの強力な筋肉が同時収縮することで、肩甲骨を胸郭に固定します。菱形筋、肩甲挙筋、小胸筋は関節窩を下方へ回旋させ、肩甲上腕関節の可動域を増加させています。引く動作では僧帽筋と菱形筋が同時に働き、肩甲骨を内転させます。

 菱形筋は僧帽筋中部繊維と共に未発達であることが多いです。これは肩の丸まった姿勢の原因となります。もし菱形筋が強力な前鋸筋のためにバランスを崩してしまうと、肩甲骨は外転し下制した位置に保たれます。それにより筋緊張が高まり、頚椎の可動性が減少します。肩甲骨や肩甲帯に付着する筋の近似した筋力を保つことで、上肢の適切なアライメントや可動性を獲得できます。

肩甲挙筋

■肩甲挙筋

起始:頚椎1番~4番の横突起

停止:肩甲骨の上角

作用:肩甲骨の挙上・下方回旋、同側の頚部の伸展、側屈、回旋

 肩甲挙筋と上部僧帽筋は共に働き、肩甲骨挙上と頭部伸展に作用します。また別のときには、肩甲挙筋は僧帽筋の上部や下部が肩甲骨を上方に回旋させようとするのに対抗して、肩甲骨を下方に回旋させます。大菱形筋と小菱形筋は肩甲挙筋による下方回旋を補助し、上肢の動きに合わせ関節窩を適所に保っています。この肩甲関節窩の操縦は、肩甲上腕関節の動き、特に内転に対して大きな可動性を持たせています。

 これらの筋や他の肩甲骨を安定させる筋(小胸筋や前鋸筋)が同時収縮することで、押すなどの荷重時の動作の際に、肩甲骨を胸郭に固定しています。頚椎横突起の付着部の近くに特徴的な捻りがあり、それが可動域全般に活力を与え、筋力発揮の手助けをしています。

 肩甲挙筋は上肢を非対称的に使って荷物を持ち運んだり、持ち上げたり、手を届かせたりすることによってよく使い過ぎが起こり、筋緊張が高まります。肩甲挙筋は通常、僧帽筋や菱形筋とともに働きます。それゆえ、あらゆる機能不全がこれらの共動筋のグループにも並行して起こる可能性があります。

※参考文献「ヴィジュアル機能解剖学 南江堂」

 肩甲挙筋が障害されていると、頚部回旋運動に問題を生じる他、肩甲胸郭関節障害(肩甲骨の翼状態化)、インピンジメント症候群などにつながることがあります。菱形筋が障害されていると、肩甲胸郭関節がきしんだり、肩で弾けるような音(ポキポキ音)が出たり、猫背になったり、肩甲骨内側部に痛みが出たりします。