2021年4月15日木曜日

片脚で立てることが大切です。中臀筋・小臀筋・腰方形筋の機能を高めましょう。

 安部塾では、片脚で立つための練習に時間をかけております。フロアワーク(床でおこなう練習)の多くが、立位時の安定を目指したコア・プログラムとなっています。片脚で安定して立てるということは、歩く・走るなどの動作の基盤であると考えております。身体的安定性能は、そのまま精神的な安定に反映されるという説を支持しております。


腰方形筋と中臀筋


■腰方形筋

起始:腸骨稜後部と腸腰靭帯

停止:腰椎1~4番の横突起と第12肋骨の下端縁

作用:脊柱の伸展(両側の活動)、脊柱の側屈(片側の活動)、吸気運動時の第12肋骨の下制

 腰方形筋は脊柱の深層にある多機能筋です。腸骨と胸椎の外側および第12肋骨を連結しています。腰方形筋の筋繊維は肋骨と脊柱から後方の腸骨後部に向かって、下位外側にやや斜めに走行しています。脊柱起立筋群の深層で大腰筋の後方に位置しており、腹壁後部の形成を助けます。

 機能的には、下肢が固定されている場合、骨盤に対して脊柱を安定させます。立位姿勢を保持して脊柱起立筋群と協調することで、わずかに側屈や伸展を生み出します。起立したとき、中臀筋とともに活動し、身体が下肢の上に位置するように作用します

 歩行時には、腰方形筋と中臀筋は体重が一方の足からもう一方の足に移る際に骨盤の安定を補助します。これらの筋は骨盤が外側にずれるのを防ぎ、骨盤の動作を矢状面(しじょうめん。左右相称な動物の体の正中に対し平行に、体を左右に分ける面)だけに維持します。また、腰方形筋は荷重がもう一方の足に移るときに、腸骨を胸郭の方向に引きあげます。この活動により、足部を床に打つことなく脚を前方に振りあげることが可能になります。

 腰方形筋には呼吸を助ける働きもあります。吸気運動時には、この筋肉が第12肋骨を下方につなぎとめるため、胸郭を最大限に拡張することが可能となります。腰方形筋の機能低下は、頻呼吸、中臀筋の弱化、脊柱起立筋群・腹筋・腰筋のような姿勢筋の不均衡によって生じます。

■中臀筋

起始:前臀筋粗線と後臀筋粗線の間、腸骨外側面

停止:大腿骨大転子の外側面

作用:①股関節の外転②股関節の屈曲(前方の筋繊維)③股関節の内旋(前方の筋繊維)④股関節の伸展(後方の筋繊維)⑤股関節の外旋(後方の筋繊維)

 中臀筋は、小転子の表層、大臀筋の深層に位置します。この筋は股関節外転の主動筋です。中臀筋は肩関節の三角筋に、形・筋繊維の走行方向・機能の点で類似しています。三角筋のように、中臀筋の機能もまた多岐にわたり、それらは、股関節の外転、屈曲、伸展、内旋、外旋であり、下肢のなかでも強力で万能な筋肉です。

 起立時には、中臀筋、小臀筋、腰方形筋の働きにより、股関節は内側方向に保たれています。この働きは、臀部の位置をその他の下肢に対して適切な位置に並べるのに使われています。中臀筋の弱化は、片足で起立したり、歩く、走るなどの動作の際に骨盤を外側方向に移動させてしまいます。たとえば、片足での起立時に、足部と膝に対して骨盤を中心に保つことができなくなります。また、歩行時には矢状面での動作をコントロールすることができなくなり、あひる歩行が起こります。

※参考文献 「ビジュアル機能解剖(南江堂)」

中臀筋と片脚立ち


 以前、何もない平らなところで転倒する人を観察したことがあります。片脚立ちはまったくできませんでした。自分は動かずに、口先だけで他者を動かそうとするため、現実の人生はうまくいっていないようでした。自立できないということは、自身の機動性(状況に応じてすばやく活動できること)を失うことを意味します。機動性を失うということは、それだけ自由を失うということを意味します。

 生涯、フットワークの軽さを維持増進していくためのひとつの方法として、片脚で立てる能力を研磨し続けることが有効だと考えております。今後の安部塾は、これまで以上に片脚で立つということにこだわっていきます。