2021年4月19日月曜日

小胸筋の攣縮。素人考えで姿勢を良くしようとして背すじを伸ばすとドツボにハマります。

 

小胸筋

■小胸筋

起始:第3~5肋骨

停止:肩甲骨の烏口突起

作用:肩甲骨の外転・下制、第3~5肋骨の挙上

 小胸筋は、肩甲骨の烏口突起に強力な付着部を持ち、肩甲骨を胸郭につなぎとめておく機能があります。これは、腕を介して体重が加わったときに、肩甲骨を前方に固定する補助となります。小胸筋は前鋸筋と連結して動き、腕で身体を押し上げるときに身体に対して肩甲骨の位置を保ちます。腕で体重を支えてイスから立ち上がるときや腕立て伏せで地面を押すときに、この肩甲骨の固定機能は不可欠です。これらの筋肉と鎖骨下筋の組み合わせで、肩甲骨を動的に固定し、姿勢が維持されます。

 小胸筋は肩甲骨を固定し、第3~5肋骨を引き上げ、胸郭を拡張することで、胸腔の容量を増大させ、副次的な呼吸筋として作用しています。この機能においては、小胸筋は横隔膜、外肋間筋、斜角筋、前鋸筋、上後鋸筋と相乗的に働いています。これらの筋はすべて胸郭に付着し、努力呼吸時に胸郭の拡張を引き起こします。

 小胸筋の拘縮や使い過ぎは、肩が丸まり姿勢の偏りにつながります。これは、パソコン作業、車の運転、押したり、持ち上げたりなどの、身体の前での動作を繰り返し行う人に多く見られます。

※参考文献 「ヴィジュアル機能解剖学 南江堂」

 肩関節疾患患者では、小胸筋の筋スパズム(筋肉が意図せずに収縮すること。 攣縮=れんしゅく)により、上肢下垂位において肩甲骨が前傾していることがよくみられます。小胸筋短縮群は小胸筋正常群と比べ、矢状面・肩甲骨面・前額面挙上のいずれにおいても、挙上角度90°以上で肩甲骨内旋角度の増加と後傾角度の現象が認められました。こうした肩甲骨運動の変化は、上肢挙上時の肩甲下スペースの現象をもたらし、肩峰と上腕骨頭によるインピンジメントのリスクを増大させます。

※参考文献 「身体運動学 メジカルビュー社」


 一般的には、上肢下垂位において肩甲骨が前傾している状態は「巻き肩」と呼ばれています。両肩が、内側へ巻きこむように縮んでしまっている状態を意味します。前にかがみこむ姿勢で、手を前に出し、背中を丸めて頭を前に出し(頭部前方位)、両肩を前に突き出した(巻き肩)姿勢になっています。首や鎖骨で神経が締めつけられて手にシビレが出たり、肋骨を締めつけてしまうために、息を吸ったときに胸が広がらずに呼吸が浅くなります。

 素人考えで姿勢を良くしようとして背すじを伸ばすとドツボにハマります。腰を反らせてどうにか代償しようとしてしまうからです。巻き肩の人は肩を後ろに持っていくのが苦手なため、得意な腰を反らせるという動作が出てしまうことになります。一見すると良い姿勢に見えますが、肩は巻きこまれたままなので、それを補うためにさらに腰を反ってしまうという負の連鎖が始まります。正しい知識を持った指導者の元で、正確な動作を学習しないと奈落の底(奈落の底とは、地獄の底。 抜け出すことのできない状態)に落ちます。