2021年4月30日金曜日

縫工筋は薄筋と半腱様筋と交わって鷲足を形成し、膝の内側部の安定性を高めています。

 

縫工筋・薄筋・半腱様筋・大腿筋膜張筋

■縫工筋

起始:上前腸骨棘

停止:鷲足を通過して脛骨粗面内側

作用:股関節の屈曲・外転・外旋、膝関節の屈曲・内旋

 縫工筋は人体の中で最も長い筋肉で、「仕立て屋の筋肉」と呼ばれています。これは、仕立て屋が脚を組んだ状態で、すなわち足首を反対側の膝の上にのせて仕事をすることから名づけられました。この体勢をとるためには、縫工筋のすべての機能が使われています。つまり、脚を組んで座るためには、股関節を屈曲・外転・外旋し、さらに膝を屈曲させなければなりません。

 縫工筋は長くて細い筋肉で、大腿部の表面近くに位置しています。大腿部表面に大腿筋膜張筋と共に逆V字型を形成しています。縫工筋と大腿筋膜張筋は、股関節を屈曲するという共通の機能を持つが、回旋に関してはそれぞれ逆の方向への動きを担います。両筋肉のこの関係性は、股関節と膝関節の回旋運動、すなわちピボット運動を補助しています。

 縫工筋は薄筋と半腱様筋と交わって鷲足を形成します。鷲足とは、文字通り鵞鳥の足のことで、三叉の形をしていることからこう呼ばれることになりました。この3つの筋肉は膝の内側に集中しており、脛骨の内側に停止します。この3つの筋肉が一緒に機能し、膝の内側部の安定性を高めています。縫工筋は前面から、薄筋は内側から、半腱様筋は後面からそれぞれ下方向に走行しています。これらの筋肉の深層に位置している内側部靭帯の損傷はよく起こり、特に筋力が弱かったり、筋力間のバランスがとれていない場合に起こることが多くなります。

■薄筋

起始:恥骨下枝

停止:鷲足を通過して脛骨粗面内側

作用:股関節の内転・屈曲、膝関節の屈曲・内旋

 薄筋は、恥骨筋、短内転筋、長内転筋、大内転筋と共に、股関節を内転させます。薄筋は内転筋群のなかで最も内側部に位置する筋肉であり、筋肉の形や機能が縫工筋に似ています。この2つの筋肉は股関節と膝関節をまたぎ、遠位部では鷲足部に付着しています。薄筋の起始は恥骨枝にあるため、他の内転筋と比べて股関節の屈筋力が強くなります。

 薄筋は、膝関節の3つの鷲足部に停止している筋肉のなかでは真ん中に位置し、膝関節の屈曲と内旋に使われます。これら3つの筋肉はすべて鵞足部に付着し、接地している足に対して上半身が回旋するときに、下肢に安定性を与えています。また、これらの筋肉は内側側副靭帯をサポートし、大腿骨と脛骨が分離するのを防ぐ役割を持ちます。鷲足部に付着している腱は強いため、膝の障害のなかでも比較的よく起こる内側側副靭帯損傷を予防する役割も持ちます。

■半腱様筋

起始:坐骨結節

停止:鵞足腱を通過して脛骨内側

作用:股関節の伸展・内旋、膝関節の屈曲、屈曲した膝関節の内旋

 半腱様筋は、ハムストリングスを形成している筋肉です。この細い筋肉は、大腿二頭筋の内側、半膜様筋の表層に位置しています。起始部である大臀筋の下の坐骨結節に付着している部分を除いて、この筋肉は大腿骨後方の表層に位置しています。半腱様筋は鵞足の後方3分の1を形成しています。

 半腱様筋は足部が地面に接していないとき、大腿二頭筋、半膜様筋とともに、大腿骨を後方に引き股関節を伸展させます。半腱様筋は足部が地面に接していないとき、大腿二頭筋、半膜様筋とともに、大腿骨を後方に引き股関節を伸展させます。ハムストリングスは膝を屈曲させ、半腱様筋は膝を内旋させる役割をもちます。膝の回旋は、膝が軽度屈曲しているときのみ可能です。膝の完全伸展時は大腿脛骨関節がロックされるので、回旋動作は起こりません。

※参考文献 「ヴィジュアル機能解剖学 南江堂」