2024年1月20日土曜日

雄弁は銀、沈黙は金。僧帽筋上部繊維と負の感情(怒り)の関係。

顎と骨盤 怒りに囚われると、頭部前方位姿勢からの顎と股関節の不調が。


『雄弁は銀、沈黙は金』

 雄弁には大きな価値があるが、沈黙すべき時やその効果を心得ているのはさらに価値がある。沈黙を守るほうがすぐれた弁舌よりも効果的な場合のあることをいう。

『三毒』

 貪欲(とんよく)・瞋恚(しんに)・愚痴(ぐち)の三つの煩悩。むさぼること、怒ること、の三つ。

①貪欲(とんよく)

 むさぼり(必要以上に)求める心。「欲」・「ものおしみ」・「むさぼり」。

② 瞋恚

 怒りの心。「いかり」・「にくしみ」と表現する。

 ③愚癡

 真理に対する無知の心。「理非のわからないこと」「おろかさ」

 ※ブッダは、三毒に打ち負かされた状態で、身口意(三業)の行動を行うことは不善根であるとしたとされます。

『馬鹿・莫迦(ばか)』

 梵語でmoha(慕何)モーハ。愚癡はこれを意訳したもの。無知の意。馬鹿は当て字。

 「愚癡」とは、「道理や物事を如実に知見することができないこと」です。「人生や事物すべては無常であり固定的なものは何もない」という事実(真理)に無知なこと≒無明(むみょう)です。


 沈黙を守るべきタイミングは、『三毒』に打ち負かされたときだとされています。

①自分が成功して自慢したくなったとき。

②他者に対する怒りに囚われたとき。

③他者が失敗してこき下ろしたくなったとき。

……などです。

 「人生や事物すべては無常であり固定的なものは何もない」ということが理解できていないと、好きな人やモノに執着したり、嫌いな人やモノに怒ったりします。「癡」は「貪」「瞋」の根元であり、人間のすべての苦しみ悩みの根源ということになります。愚癡がなくなれば心は平静になります。

①貪(とん):過度な欲望や執着により、不満やストレス、依存が生じる。

②瞋(しん):怒り・憎しみが心を乱し、対人関係を破壊し、心身の健康を壊す。

③癡(ち):無知・誤解が誤った判断や選択を引き起こし、貪瞋からの困難をもたらす。

 このタイミングで沈黙を守ることが大切なのです。

 怒り・憎しみなどの負の感情からの敵対心が心に宿ると、他者や状況に対して過度に反応してしまい、衝突や対立を引き起こします。対人関係だけでなく、自分自身の心の平和をも乱してしまうことになるのです。自分自身の負の感情に気づき、客観的に観察し、その原因を理解することが重要です。

 思い込み・偏見・先入観に基づいて他者を評価したり、事実や現実を誤解している状態は問題や困難を引き起こします。自分自身の能力や価値を過大評価したり、逆に過小評価することもよくありません。心が不安定だと、積極的な行動が取りにくくなり、消極的になってしまい、人生全体の質が低下します。

 すべてのものは縁によって起こり、縁によって滅していきます。あらゆるものが関わり合っており、自分も他者もお互いの存在それぞれに意味があり、関わりながら支え合って生きています。それが理解できず、自分の基準やものさしでしか物事を見ることができないから、「自分は正しい!」という誤謬に陥ってしまい無明の闇へ……誤ったものの見方、考え方に固執して暗闇をさ迷い、正しい見方・考え方からずれ、自らの誤りに気がつかずに怒りに囚われてしまう……沈黙が守れない。

 思い通りにならないと怒りが生じる……煩悩の連鎖の根本は無知なのです。


『頭頸部前方位姿勢(Forward Head Posture,FHP)』

 頭部が前方に出た姿勢のこと。正常は外耳孔(耳の穴)と肩峰を結ぶ線が一直線になるが、外耳孔が肩峰よりも前方に出ていると頭部が前方に偏位していると評価される。

 頭頸部前方位姿勢の人は、頭部中間位姿勢の人と比較してすべての姿勢で疲労の訴えが強く、僧帽筋上部線維の過剰な筋活動が生じていることがよく知られています。単に頭頸部の位置を変えても疲労や筋活動量は変化しないこともわかっています。頭頸部位置を変えるだけでは頭頸部前方位姿勢の人の疲労は軽減しないので、僧帽筋上部線維の筋活動異常を是正することが重要だと考えられています。

 前屈みで顎を突き出したような姿勢で、胸鎖乳突筋が床に対して垂直に近くなっており、いわゆる猫背になっています。咀嚼筋や頸部の筋活動が亢進し、こりや痛みを引き起こしています。また、後頭部から上背部の筋を緊張させて緊張型頭痛の原因にもなります。

① 頭が脊柱より前方に出ると、頭部の重みで頭が下がり自ずと床を見るかたちになります。

②この状態で前方を見るためには、後頸部・背部の筋で重い頭部を吊り上げて頭蓋を水平にバランスする必要があります。

③このため、頭頸部前方位姿勢を長時間続けると、これらの筋が疲労して後頸部・背部に筋痛が生じ、肩こり・緊張型頭痛・顎の痛みやだるさとして感じられます。

僧帽筋

 僧帽筋は、片側が三角形の形をした大きな筋肉です。左右の筋肉を合わせると四角い形の筋肉になります、主な働きは、肩甲骨を背骨に近づける動きです。上部・中部・下部の3つに分かれ、それぞれが肩甲骨の別の動きを担っています。

■付着

①上部繊維:後頭骨(C2-7棘突起)~鎖骨外側1/3

②中部繊維:T1-4高さの腱膜~肩峰

③下部繊維:T5-12の棘突起~肩峰棘

■作用

①上部繊維:挙上、内転、上方回旋作用

②中部繊維:内転、上方回旋作用

③下部繊維:下制、内転、上方回旋作用

 筋は、反対方向への運動を誘導することで伸長負荷が加わり、ストレッチすることができます。肩甲骨を脊柱から離れる外転方向へ誘導に加え、下方回旋を誘導すると、肩甲骨の内転・上方回旋作用を有する僧帽筋全体的がストレッチされます。

 僧帽筋上部線維は、挙上・内転・上方回旋作用がありますので、外転・下方回旋+下制方向に誘導することでよくストレッチされます。

 負の感情ストレスによって脳が異常興奮すると、僧帽筋が過緊張状態になり収縮します。負の感情ストレスは、これまでの人生経験(成育歴)によって生み出されるとされていて、潜在意識下に蓄積されていると考えられています。負の感情ストレスが解放されると、脳の異常興奮もだんだんと収まり、僧帽筋の緊張も和らぐとされています。感情ストレスよって僧帽筋が緊張している場合は、何をやってもすぐに元に戻ります。

 怒りに囚われイライラする→内臓に不調が起きる→首や肩・肩甲骨周りが固まる→怒りに囚われ……。エクササイズやマニュアルセラピーで改善しない頭頸部前方位姿勢の人に起きている負の連鎖です。

 もうおわかりかと思いますが、『思い通りにならないと怒りが生じる……煩悩の連鎖の根本は無知』であることを理解し、沈黙を守ることで負の感情ストレスを解放させる必要があるということになるのです。自分自身の負の感情に気づき、客観的に観察し、その原因を理解することで、負の感情ストレスは解放されていきます。

 このときに、僧帽筋上部繊維のストレッチングを組み合わせると効果的なのです。


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