2024年1月15日月曜日

他者の動きの観察をするときは、自らの姿勢を正して見ないといけない。

 「見取り稽古」

 他の人の稽古(練習)や試合を見てその技術を学ぶことです。単に上手な人の技術を真似るだけではなく、上手な人のやっていることを基準に、現在の自分の技術を相対化して、より良くなるための課題を明確にすることが重要です。

 直接教わるだけではなく、呼吸、タイミング、動きなどをよく見て目に焼きつけます。今後の練習に方向性や目標を見出していくことができます。先生や先輩・同輩の技術を見て、自分との違いを感じ取り、自分の体の使い方やあり方を見つめ直す機会とします。

 安部塾では、他者の動きの観察をするときは、自らの姿勢を正して見ないといけないと考えています。普段から正確な運動連鎖が機能していることが重要だからです。

 頭部前方位姿勢+何らかの姿勢崩れがある場合、他者の動きの質をニュートラルな視点でとらえることができません。人には、自分と似ているものを正しいと誤認する性質があります。反転して、自分と似ているものを嫌うこともありますが、いずれにしても中立的なものの見え方ができなくなりがちなのです。

 特に、自身の能力を高く見積もり過ぎて高評価している場合、レベルの高い動きをレベルが高いと認識することができません。わかりやすいのは、りきんで動いている人は、りきんでいる人の動きをレベルが高いと評価します。直線的な動きしかできない人は、直線的な動きをしている人をレベルが高いと評価します。そして、脱力した螺旋の動きができている人の動きをレベルが低いと低く評価してしまうのです。

 「決められた動きを、間違えないように動く」というスタイルの人と、「その場に合わせて自由に動く」というスタイルの人、どちらが難易度が高い動きができているかというと後者です。前者は過緊張状態でもやれますが、後者はリラックスしていないとできません。そして、過緊張状態の人は、「頑張っている人」のことを高く評価しがちです。過緊張から、筋肉痛や関節の破壊、荒れた皮膚などの身体的問題を生じていてもです。

 よく、頭部前方位姿勢&過緊張の人が、頭部中間位姿勢&リラックスの人を酷評していることがあります。周りの人は「???」となっているわけですが、頭部前方位姿勢&過緊張の人は素で「自分は正しくてすごい人」だと高すぎる自己評価に陥っているために、そのことに気がつけません。

 見取り稽古は、まずは自らの姿勢を正すことから始めないと、良い結果にはつながりづらいと考えています。