嗅覚の低下や変化は、認知症(特にアルツハイマー型やレビー小体型)の極めて初期に現れるサインの一つとして、医学界で非常に注目されています。
なぜ鼻の異変が脳の病気と関係するのか、そのメカニズムと特徴を整理して解説します。
1. なぜ嗅覚に異変が起きるのか?
脳の中で「におい」を処理する領域(嗅球や嗅皮質)は、記憶を司る海馬や感情を司る扁桃体と物理的に非常に近い場所にあります。
認知症の原因となる異常タンパク質(アミロイドβやタウなど)は、記憶障害がはっきり出る前から、この嗅覚に関わる領域に蓄積し始めることが分かっています。つまり、「脳の異変が最初に出やすい場所」が鼻と直結しているのです。
2. 具体的な症状の特徴
単に「鼻が詰まっている」状態とは異なり、以下のような特徴が見られます。
- 嗅覚減退(においを感じにくくなる): 風味(味とにおいの組み合わせ)が分からなくなるため、「料理の味が薄くなった」と感じて調味料をドバドバかけてしまうことがあります。
- 識別能力の低下: におい自体はしているものの、それが「カレーのにおい」なのか「花のにおい」なのかを区別できなくなります。
- 異臭症(焦げ臭いなど): 実際には存在しないはずの「焦げたようなにおい」や「嫌なにおい」を常に感じるようになるケースもあります。
3. 認知症の種類による違い
嗅覚の異変は、すべての認知症に一律に出るわけではありません。
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認知症のタイプ |
嗅覚障害の傾向 |
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アルツハイマー型 |
かなり早期から現れる。記憶障害と並行、あるいは先行して低下する。 |
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レビー小体型 |
非常に高頻度で、かつ初期(あるいは発症数年前)から顕著に現れる。 |
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血管性認知症 |
脳のダメージを受けた場所によるため、嗅覚障害が出ないこともある。 |
4. 日常でチェックできるポイント
もし、ご自身やご家族に以下のような変化があれば、注意が必要です。
- 腐った食べ物やガス漏れに気づかない: 危険を察知するにおいに疎くなる。
- 香水のつけすぎ: 自分のにおいが分からず、過剰につけてしまう。
- 料理の味付けの変化: 嗅覚の低下を「味覚の衰え」と勘違いし、味を濃くする。
注意点
嗅覚の低下=即認知症というわけではありません。副鼻腔炎(蓄膿症)、鼻炎、あるいは新型コロナウイルスなどの感染症の後遺症でも嗅覚障害は起こります。