2021年8月18日水曜日

妄想と現実~やらかして後悔することのないように身のほどを知る

 「世界に向かって自分を発信すれば、人生が良い方に変わる」

 そう信じ込んで自己発信した人たちが、次々に行き詰っています。

 ブロガーになりたい→ブログ書く→読んでもらえないor酷評→フェードアウト

 インスタグラマーになりたい→投稿する→見てもらえないor酷評→フェードアウト

 youtuberになりたい→投稿する→観てもらえないor酷評→フェードアウト

 歌手(シンガー)になりたい→歌う→聴いてもらえないor酷評→フェードアウト

 PV出したい→撮影・編集する→観ても聴いてももらえないor酷評→フェードアウト

 ダンサーになりたい→ステージで踊る→酷評→フェードアウト

 舞台に立ちたい→舞台に立つ→観客白けるor凍りつく→フェードアウト

 アドバイザーになりたい→自画自賛宣伝する→依頼者が現れない→フェードアウト

 ……例をあげればきりがありませんが、何をやっても好い反応がないため、いつの間にか消えてしまいます。原因は極めて単純で、才能もなければ努力も足りないということなのだと思います。発信していない=知られていないから廃れているのではないのです。単に「つまらないから関心をもってもらえない」というだけなのです。見る価値も聴く価値もないものをしつこく押しつけられれば、ミュートされるかブロックされておしまいです。

 単なる社交辞令(つきあいをうまく進めるための儀礼的な褒め言葉)を真に受けて、自分に価値があると思い込み、暴走し突き進んでしまった結果がどうなるのかは、「世界に向かって自分を発信すれば、人生が良い方に変わる」と信じ込んで行動した人たちを観察すれば、とてもよく理解ができると思います。求められてもないのに前に出れば、待っているのは残酷な現実だけだと思います。やってダメなら諦めがつくという理由でやるのなら、まだ救われるかもしれませんが。

 私自身は、「やらずに後悔するより、やって後悔した方がいい」という考えなのですが、普通に考えてやらない方がいいと思うことはやりません。人が死ぬ間際になると、やってしまった後悔よりも、やらなかったことへの後悔の念が強くなるそうです。ただこれも「やればできたはずなのにやらなかったこと」に限ると思います。やるかやらないかで迷っていることが、自分がやりたいことであればやっておいた方がいいと思いますが、それが「他人に賞賛されたい・チヤホヤされたい」とかいう性質のものだったら、やらない方がいいと思います。

 他者の存在がからむことがらの場合、やると後悔し続ける結果になる可能性が高いと思います。迷惑がられたり、困らせてしまったり、嫌われてしまったり、そんな結果になりがちなのです。他人がからむことで失敗した場合、後悔する余裕もなく逝ってしまうことになります。やって後悔は、メンタルはもちろんのこと、それ以外に色々なものを失うことになるのです。他者を巻き込んでしまった代償は、とても大きくなってしまいます。

 他者の存在がからまない自己完結してしまうことがらの場合は、やって後悔することはほぼ無いように思います。いわゆる趣味領域のことは、むしろ積極的にやるべきかもしれません。自分の努力次第でどうにかなることに全力を注ぐのは充実した好い経験となって、その後の人生を豊かなものにしてくれます。自滅だけで済むのなら、やった方がいいことはたくさんあるように思います。

 得るものと失うものを天秤にかけてみて、失うものの方がはるかに多いとしたらやらない選択をする方がいいかもしれません。やらない選択をする=現状維持を選ぶというのは、後ろ向きなことではないと思います。前向きに無謀なことをやるよりも、好い流れになっていくことが多いように感じます。やって後悔するときの無残な結果が出てしまったという現実の後に残るのは失敗したという残酷な事実しかありません。そう。やった後悔は、後々まで長く引きずることになりがちなのです。

 夢は必ず叶うという精神論を振りかざし、無責任に背中を叩く輩もいますが、彼らは何の責任もとってはくれません。「夢が叶う」という甘言に騙されて人生を棒に振る人たちも多くいるようです。成功の見込みが一切ないのに、思いあがって突撃すれば、結果は火を見るよりも明らかです。夢を追ってはみたたけど叶わなくて哀しいことになってしまうだけです。「人生は一度きり。チャンスは必ずつかむ!!」とかいう安易な煽りに乗ってしまうリスクは大きいように思います。

 他者を大切にし、きちんとした準備・計画をしたにも関わらず、様々な悪条件が重なって失敗した人を嗤う人はほとんどいないと思いますが、他者を大切にせず、ろくな準備・計画もせずに思い込みで突っ走って失敗した人は嗤われます。あまり考えない猪突猛進型の人たちを観察してみればすぐにそれがわかると思います。自分のやることは特別なことだからと、他者をないがしろにして無計画な突撃を繰り返し失敗を重ねています。

 「身のほど知らず(自分の身分や能力などの程度をわきまえないこと。また、そのさまや、その人。)」という言葉があります。自分の分際をわきまえずに、出しゃばった行動をする人のことです。『キーワード「身の程知らず」の四字熟語』を読んでみると、耳が痛い言葉が多くて学びになります。「知小謀大(ちしょうぼうだい)=見識が浅いにもかかわらず、大きなことを企てること。自分の力を考えず、むやみに大きな計略をめぐらすこと。」は、やって後悔でよく見かけるパターンですね。

 現在の自分の状況は、これまで自分が考えてきたことや、やってきたことの結果です。思考が現実化するというよりは、現実は自分の思考の結果だという感じです。何かを妄想したから現実が妄想通りになるのではなく、妄想していると往々にして恐ろしい展開になるから気をつけましょうということなのだと思います。身のほどを知り、きちんと準備・計画を立て、他者を尊重してやっていくことが大切なように思います。