呼吸と陰陽のお話。
基本的には、「吸気(吸息・吸う)は陰」「呼気(呼息・吐く)は陽」とされている。
陰陽論では、この世の森羅万象を陰と陽に分ける。
陰陽のバランスがとれているか、いないかによって、あらゆる現象の生成や変化を知る。
陰と陽それぞれが独立して存在するのではない。
陰があるから陽があり、陽があるから陰があると考える。
この世の始まりは「混沌」の状態。
の混沌の中からまず明るく澄んだ「陽」の気が上昇して「天」になった。
次に、暗く濁った重い「陰」の気が下降して「地」になった。
混沌から生まれた陰と陽は、常に密接な関係を保ち、お互いに影響し合っている。
対立した存在でありながら依存し合い、密接に往来し交わる。
そして、事物が発生し、変化を繰り返し、この世界のバランスを保っている。
陽が盛んになれば陰が衰え、陰が盛んになれば陽が衰える。
陰と陽が交われば新しいものが生まれる。
こうして、森羅万象が休むことなく盛衰を繰り返す。
陰と陽、どちらか一方が無くなれば変化は生じない。
残った一方の働きも終息してしまう。
この世の事象すべては、「陰(-)」と「陽(+)」という対立した形で保たれている。
陰陽の対立と和合によって、万物の生成と衰滅がある。
「吸気(吸息・吸う)は陰」「呼気(呼息・吐く)は陽」
「副交感神経・末梢神経は陰」「交感神経・中枢神経は陽」 ※逆の説の方が一般的かも
「腹式呼吸は陰」
腹式呼吸では、息を吸うとお腹が膨らむ。副交感神経が働き、身体を休息状態にする。
「胸式呼吸は陽」
胸式呼吸では、息を吸うと胸が膨らむ。交感神経が働き、身体を緊張させる。
ストレスがかかると、交感神経が常に緊張状態となる。
交感神経は「闘争と逃走の神経」。
例えば、大きな刺激を連続して繰り返し受けると、交感神経が緊張する。
毛細血管が締めあげられ、血流が悪化し、筋肉細胞が酸欠状態になる。
血液中の血漿(けっしょう)にブラジキニン(痛み物質)が溢れる。
この痛み物質が神経の先端についているセンサーに反応し、「痛み」を感じる。
交感神経が優位な状態が続いている人が、いつも体調が悪く、不要な痛みを感じている理由。
※正しい知識を拒絶するため、改善しづらい。
陰陽の知識がある人はどう対処するか?
①腹式呼吸を選択
②鼻からゆっくりと息を吸う
浅い呼吸は交感神経を、深い呼吸は副交感神経を優位にするからだ。
と、ここまでこの記事を読んだ人は「?」となっているはずだ。
自律神経の切り替えについての原則は、
「吸う → 交感神経」「吐く → 副交感神経」だったはずでは?
意識的に息を吐く時間を長くすることで副交感神経優位の時間を長くするのが基本では?
その通りだ(笑)。
体内の呼吸中枢と肺の伸展受容器の機能を学べばすぐにわかる。
息を吸ったときに交感神経は活性化し、息を吐いたときに副交感神経が活性化する。
理論上、吸う長さと吐く長さを同じにすれば、自律神経のバランスが整うことになる。
この理由で、落ち着きたいときは「吸う:吐く=1:2」にするのが基本とされている。
陰陽論と逆じゃないか?
よく考えてみよう。
ゆっくり息を吐けば吐くほど副交感神経を優位に活性化できる。
これは、「吸う=陰・吐く=陽」に矛盾しない。
ややこしいのだが、「ゆっくり吐く~陽の抑制~陰」ということなのだ。
再度、呼吸を見つめ直してみよう。
①みぞおちをゆるめてふくらませつつ、鼻から息を吸う。
②吸う息の倍の時間を意識してゆっくり、口から息を吐き、みぞおちをへこませる。
数呼吸正しく繰り返せば、その効果はすぐにわかる。
明日の
新宮校集中講座と9日の
下関集中講座で、安部塾初となる『慢性痛抑制呼吸』を解説したいと思う。
効能をうたうと医師薬事法に抵触するので、『慢性痛を抑制するらしい呼吸』にしておく(笑)。
「吸息は交感神経支配・呼息は副交感神経支配の原則」に基づいた内容となる。
みぞおちをゆるめる意味とともに、本物の至福メソッドについて解説したいと思う。