安部塾では、呼吸エクササイズ時(肩甲骨エクササイズを含む)の手指のそろえ方は伝統的な「挙手の敬礼」で用いられる『舞の手』のかたちにするように指導しております。本来は右手をあげますが、下図ではあえて左手をあげております。
∠(`・ω・´)ビシッ
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呼吸エクササイズ時の理想的な手指のそろえ方=挙手の敬礼
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蓮華合掌(てのひらをぴったりと合わせる合掌)の指のそろえ方(=舞の手)のまま、片腕を体側におろし、もう一方の腕の指先を眉尻に当てて、ひじを真横に張ります。これにより、胸と背中がひろがります。下位肋骨にてのひらを当てるやり方と合わせておこなうことで、肩甲骨の正しい位置をつかみやすくなります。
手指が反りすぎる指のかたち(踊りの手)や、手指が曲がって離れてしまうかたち(鬼の手)では、綺麗な敬礼はできません。それはすなわち、正しい呼吸エクササイズや肩甲骨の動きの改善ができないということを意味すると、私は考えております。
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鬼の手 |
安部塾では、呼吸エクササイズは格調高く『舞の手』にて行うように指導しております。
敬礼とは、相手に敬意を表すこと(礼)です。相手に敬意を示す動作であり、下位の人が上位の人に対して敬礼をし、上位の人は「答礼」で応えます。同位の人同士も敬礼を交換します。自衛隊における挙手の敬礼は、「右手をあげ手のひらを左下方に向け、人さし指を帽のひさしの右斜め前部にあてて行う(自衛隊の礼式に関する訓令第10条)」となります。
陸上自衛隊の挙手の敬礼は、直立不動の状態(不動の姿勢)から、二の腕を水平にし、肘から先は指先まで一直線に伸ばした状態で帽子のつばの右端に向かって曲げます。親指を曲げないようにして、てのひらを受礼者に対して見せてはいけません。不動の姿勢から一挙動で素早く行わなくてはなりません。そしてその姿は、文句なしに美しいものです。
挙手の敬礼の起源には諸説ありますが、プレートアーマー(西洋甲冑=板金鎧)を装着した騎士が、自らの顔を見せるために顔の前のシールド(鎧戸)を手指でずり上げる動作が元であるという説が好きです。鉄兜の目の部分にも覆いがついており、主君の閲兵を受ける際には顔を見せる際、重い兜を脱ぐのではなく、舞の手をつくり指先で覆いを引きあげて主君に顔を見せていたのが始まりだとすると、絵になりますので。
敬礼は、相手に対し危害を加える意志がない(利き手を見せることで戦闘意志がない)ことを示すものであり、両手をあげたり、組んだりすることなどから起ったともされます。 1750年くらいより、通りかかる者に対して反対側の手をあげて帽子に触れていた習慣が、右手をあげる挙手の敬礼となったという説もあります。また、現代組織の挙手敬礼の直径の先祖は脱帽の動作を簡略化したものという説もあります。
脱帽時は挙手の敬礼をせず、「頭を正しく上体の方向に保ったまま、体の上部を約10度前に傾けて行う(自衛隊の礼式に関する訓令第10条)」(10度の敬礼)。または「頭を正しく上体の方向に保ったまま、体の上部を約45度前に傾けて行う(同)」(45度の敬礼)。
この時、背骨に沿ってまっすぐな棒が一本入っているように、背中を曲げてはいけない。10度の敬礼は、脱帽時の会釈に用いられる。45度の敬礼は、天皇陛下、国旗、隊員の棺に対して行うものである。……とされております。
挙手の敬礼ができない人の手指を見たら「鬼の手」となっているのがわかるかと思います。鬼の手のまま関節炎となり、固まっている場合も多いように感じます。
舞の手をつくることで、他者への敬意をあらわす素地ができると考えております。お辞儀の場合も舞の手を用いますし、相手に対して手を合わせる気持ちがあれば自然と舞の手になるものだと思うのです。逆に、舞の手を心がけることで、自然と身体全体の動きも良くなっていくように感じます。手の動きは心の動きとつながっておりますゆえ。
運が悪い人は、舞の手を意識したエクササイズに励んでみるといいかもしれません。