2020年12月28日月曜日

肋骨の動きの方向性を意識することで、脊柱の動きが改善いたします。

 明日29日の大手門KANON集中講座新宮校集中講座で、呼吸について解説いたします。

肋骨の動き

関西集中講座で配布した資料をブラッシュアップして臨みます。

この動きの解説に力をいれてまいります。
肋骨の動き(バケツハンドルアクション)のイメージ



肋骨でねじる

骨盤底筋群の大切さも語ります。

骨盤隔膜と横隔膜

お待ちしております♡



2020年12月23日水曜日

骨盤の後傾と前傾・外方腸骨と内方腸骨について

 12月24日の大阪集中講座、25日の名古屋集中講座、26日の神戸集中講座で、骨盤の後傾と前傾・外方腸骨と内方腸骨の解説をいたします。

骨盤は、左右一対の寛骨(腸骨・恥骨・坐骨)、仙骨、尾骨で構成されます。寛骨と仙骨の間には仙腸関節が仙骨の左右両側にあり、恥骨と恥骨の間には恥骨結合があります。これらの関節の安定性が大切です。

図にまとめてみました。

骨盤の後傾と前傾

仙腸関節において、仙骨のうなずき運動とのけ反り運動にともなって、左右の腰骨(前上腸骨棘)間の距離が遠ざかったり近づいたりします。この現象を外方腸骨(アウトフレア)・内方腸骨(インフレア)と呼びます。前開きになっているか、前で閉じているかをあらわします。外方腸骨をオープンフレア、内方腸骨をクローズフレアと呼んだりもします。

外方腸骨とは、水平面上で、寛骨が外方へ回旋する運動です。上前腸骨棘は外側へ、上後腸骨棘は内側へ偏位します。矢状面上で、寛骨は後傾(後方回旋)します。
内方腸骨とは、水平面上で、寛骨が内方へ回旋する運動です。前上腸骨棘は内側へ、上後腸骨棘は外側へ偏位します。矢状面上で、寛骨は前傾(前方回旋)します。

この知識がないと、腰腹から力を発揮する身体操作を理解するのが困難になります。

2020年12月20日日曜日

仙骨の動きと骨盤の動きなど

 仙骨のうなずき・のけぞり運動のとき、骨盤の腸骨は相対的に逆方向に動きます。

仙骨と腸骨の動き

仙腸関節は、ふたつの部位に分類できます。
①ブーツ(長靴)部:仙腸関節前方のブーツ形状の部位。呼吸する時に作動。
②ウエイトベアリング(仙腸関節体重軸受け)部:仙腸関節後方部位。体重を支持。
で、こんな感じで動きます。

仙骨のうなずき・のけ反り運動

カパンジー先生の古典的な解説では、仙骨がうなずくとこうなります。
仙骨うなずき運動時の坐骨と腸骨の動き

仙骨がのけぞったときは、この動きと逆に坐骨と腸骨が動きます。
仙骨のうなずきとのけぞり

息を吐くとき、仙骨はうなずき、靭帯性支持が強くなります。腰(コア:中心)と連動して軸ができ、筋の伝達性能があがります。
息を吸うとき、仙骨はのけぞり、筋性支持が強くなります。

■仙骨うなずく→腸骨前方閉鎖→仙腸関節しまる→腰椎前彎増強
■仙骨のけぞる→腸骨後方閉鎖→仙腸関節ゆるむ→腰椎前彎現象

そして、歩行時の骨盤の動きはこうなります。
歩行時の骨盤の動き

歩行のエネルギーは胸郭の肋軟骨・外肋間筋・内肋間筋に蓄積され、放出されます。息を吸うときに起きる肋軟骨のねじれがエネルギーを蓄積し、息を吐くときに元に戻るときにエネルギーを放出するように、歩行するときも逆方向のねじれが交互に生じて、蓄積と放出を繰り返します。仙腸関節のリズムと胸郭のリズムが合うと、楽に歩けます。

また、例えば、体幹を左に回旋すると、左仙腸関節がうなずき、仙骨が右に回旋します。仙骨は体幹の動きに合わせて回旋するのです。つまり、左右の仙腸関節に性能差があると、体幹が回旋しにくい側が生じる可能性がでてくるわけです。実際には胸郭の動きの左右差と絡んで複雑になります。

そして、仙骨がうなずくとき、締まった骨盤底筋群が尾骨を前方に引く動きをします。これにより過剰な腰椎の前彎が抑えられます。

骨盤底筋群は単独では働きません。骨盤底筋群を収縮させると腹部筋も収縮します。腹部筋の収縮により、骨盤底筋群も活性化します。腰椎を安定化させることができるということです。脚や腕の動きに先行して骨盤底筋群が働き、体幹の動的安定化の役割を果たします。呼吸の練習で動きが改善する理由です。

2020年12月17日木曜日

今年最後のヨガ解剖学☆12月20日(日)飯塚ワークショップの御案内

楽しくカラダの事を学びたい方を大募集です🤗✨

ヨガ未経験の方もご参加いただけます

「呼吸と肋骨・脊柱の動き」「骨盤底筋群の意識」などの解説を予定しております。

脊柱側屈時の肋骨の動き

 【日時】

12月20日(日)  10:00〜13:00

【会場】

穂波福祉総合センター 和室(飯塚市枝国402-100)

【参加費】

5000円

【持ち物】

ヨガマット、飲み物、タオル

動きやすい服装でお越し下さい☆

【申し込み】

ヨガ教室  Kadipyar~カディピアール~

☎ 093-982-8713

☎ 090-7459-4037

※レッスン中など電話に出られない場合がありますのでご了承くださいm(__)m。留守番電話に伝言を残していただけましたら090-7459-4037から、折り返しおかけ直し致します☆

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2020年12月16日水曜日

楽な呼吸の鍵~肋軟骨のやわらかさと肋骨の回旋

 12月の各講座で、肋骨の動きについて解説をしております。

ポンプ&バケツハンドルアクション

肋骨の動き

昨夜のツイキャスの解説と合わせると、なんとなく理解できるかと思います。

息を吸うと肋骨が上方回旋します。そのエネルギーは肋軟骨にたまります。吐くときにエネルギーが解放され、肋骨が元の位置に戻ります。ねじったゴムが戻るときのようなイメージです。肺の弾性と肋軟骨の弾性で、自然に息を吐くことができます。

姿勢が悪いと肋骨が回旋しなくなるため、肋軟骨の弾性がなくなります。結果、肋軟骨にエネルギーをためることができなくなり、深い呼吸をすることができなくなっていきます。加齢による肋軟骨石灰化が進むと、呼吸が浅くなるという説もあります。肋軟骨の弾力が失われると、背中を反らせたり横に曲げたりねじったりしにくくなります。

安部塾では、肋骨の回旋による呼吸の練習をします。本来の肋骨の動きを取り戻すことが大切であると考えております。12月18日(金)の新宮校集中講座で解説予定です。

2020年12月15日火曜日

側屈したときの胸椎と肋骨の動き

 脊柱を左側に曲げたときの胸椎と肋骨の動き。

脊柱を側屈したときの胸椎と肋骨の動き

右側では、吸ったときの肋骨の動きが生じます。
左側では、吐いたときの肋骨の動きが生じます。
胸椎は、右に回旋し、左に側屈します(逆方向に回旋、同側に側屈)。
つまり、通常呼吸で肋骨が動かない人は、側屈も回旋もしにくくなるということになります。

安部塾では、楽に呼吸ができるようになるまで、側屈や回旋は動く範囲でしか練習しません。それよりも、脊柱を長く伸ばすことと、呼吸を深くすることに注力いたします。結果的に、最短最速安全に、綺麗な側屈が可能になります。上の説明が理解できる人であれば、その理由はすぐにわかるかと思います。

2020年12月11日金曜日

肋骨を先導させない~胸郭は後下方に保つ

身体を安定させようと意識したとき、脊柱の伸筋(反る筋肉)を過剰に収縮させてしまうと、胸郭が前に突き出た状態になります。
「肋骨の先導」と呼ばれている動きで、好ましくありません。
身体操作時、胸郭に付着している上部腹筋で胸郭前部をやや後下方へ引き下げて中間位を保つようにします。
また、背中全体を丸めたいときは、胸郭下部を後下方に引き下げることで、脊柱を最大屈曲させることができます。
腰が反りすぎの人の場合、背中全体を丸めようとしたとき、首と上部胸椎だけが屈曲し、そこから下は伸展したまま(平らなままか、反ったまま)になってしまいがちです。腰椎を屈曲させるためには、腹壁を引っ込め、胸郭を後下方に引き下げるとよいかと思います。

2020年12月10日木曜日

年末年始の集中講座(12/29大手門、12/30・1/3新宮校)の御案内・安部塾呼吸技法「息吹」を深める。

年末年始の集中講座の御案内です。

12月29日(火) → 大手門集中講座

1月3日(日) → 新宮校年末年始集中講座

内容は、「安部塾呼吸技法息吹」の解説と実技となります。

息吹・吸気

■よい姿勢と呼吸について

 ・首を楽にして頭と背中と腰の関係を良くすることで、二次的な結果として呼吸を改善する。

■吸う息の改善

・胸郭の動き

・横隔膜と外肋間筋・肋骨挙筋の意識

・吸気補助筋

■吐く息の改善

・胸郭の動き

・骨盤底筋群

・腹横筋

・内肋間筋ほか呼気補助筋

■運動時の事前収縮(予備収縮)

・頭が先に動いて脊椎が長くなりながら、腰(コア)から力を発し、四肢(手足・腕脚)を動かす。

息吹

あらゆる動作の基本となる呼吸「息吹」について解説いたします。御参加、お待ちしております。

2020年12月9日水曜日

呼吸ブームなので、呼吸の基本と腰の事前収縮について少し紹介いたします。

 12月の安部塾は、呼吸の基本を洗い直しております。

吸う

吐く

吸うときの注意点として、お腹に吸わないようにします。膨らませるのは肺のある場所=肋骨の上部の側方と後方です。横隔膜の脚は腰椎1~3番についているので、おへその高さで脊柱の前方を意識します。実際には、尾骨の方向へ横隔膜を下げるようなイメージで吸うとうまくいくかと思います。

吐くときの注意点として「つぶれない」ようにします。脊柱を長く伸ばしながら、背中をひろげながら胸をひらいて息を吐きます。肋骨下部は骨盤のほうへ下げます。

動作をするときは、まず息を吐きながら腰(コア)に予備収縮(事前収縮)を入れ、そこから手足を動かすようにします。骨盤底筋群(特に恥骨尾骨筋)と腹横筋を同時収縮させてから動作に入るということです。

12月11・12・13日(金・土・日)の東京集中講座で、腰(コア)に予備収縮(事前収縮)を入れるテクニックについて詳しく解説いたします。

2020年12月8日火曜日

肋骨挙筋は、安部塾呼吸技法「息吹」で重要視している筋肉です。

 

肋骨挙筋

■起始部

・短肋骨挙筋:第7頸椎および第1~11胸椎横突起

・長肋骨挙筋:第7頸椎および第1~11胸椎横突起

■停止部

・短肋骨挙筋:1つ下の肋骨の肋骨角 

・長肋骨挙筋:2つ下の肋骨の肋骨角 

■作用

・片側が収縮 ~ 胸椎を同側に側屈・反対側に回旋

・両側が収縮 ~ 胸椎伸展(反る)の補助

※胸椎側を起始とした場合(固定)、肋骨が挙上するための上方回旋が起きるとされる。上部肋骨では挙上の動きが、下部肋骨においては外旋の動きが生じる。吸気筋としてイメージできる。

肋骨の上方回旋

深い呼吸では、横隔膜と外肋間筋が最大限に働きます。合わせて、呼吸補助筋群が吸気の際の外肋間筋の働きを補助する。吸気時 に収縮して肋骨をもちあげる働きを補助するのは、斜角筋・胸鎖乳突筋・肋骨挙筋・大胸筋・小胸筋などがある。脊柱起立筋群が脊柱を伸展(反る)させると、肋骨の挙上が楽になる。

肋骨挙筋が肋骨を持ちあげるように働くためには、脊柱の配列が正しい=脊柱が長く伸びて安定している必要がある。

2020年12月7日月曜日

自分と相手の境界線を踏み越えない~健全な人間関係は、適切な境界が土台となった感情的空間において成り立つ。

 「私」は「私」で、「あなた」は「あなた」。「私」と「あなた」はまったく違う別の人間です。なので、まったく違う別の価値観を持っています。その違いを認め合える関係は永く続きます。お互いの人間性を尊重することができるからです。

「私は私、あなたはあなた」という境界線が守れていると、お互いに脅威を感じることがありません。なので、安全にやりとりをすることができます。意見が合わないからといってムキになって相手の意見を変えようとすることもありません。意見が違うのは、そもその別の人間なのだから当たり前だからです。意見交換ができるのは、相手を尊重しているからです。

自分と相手の境界線を踏み越えて自己主張すると関係は途絶えます。境界線を侵して相手の安全=力を奪おうとするのは、支配・被支配の関係を求める行為だからです。

また、誰かに強く必要とされることで自分の存在意義を確認しようとする共依存関係も、、支配・被支配の関係同様に相手から力を奪い、依存的な関係になってしまいます。


個人の境界線より

個人の境界線(こじんのきょうかいせん, Personal boundaries)、他者との境界線(たしやとのきょうかいせん)、バウンダリーとは、自分に対して行動をとってくる他人に対して、合理的・安全・許容可能な手法であるかを判別するために個人が作成する、ガイドライン、ルール、制約である。それらのガイドラインは、結論、信念、意見、態度、過去における経験、社会学習の組み合わせから築かれる。

境界線は個人の定義に役立ち、それは好き嫌いをおおまかに判別し、他人が接近できる距離を設定するものだという。境界線には身体的、精神的、心理的、精神的といった種類が存在し、それらは信念、感情、直感、自尊心などによって編成されるという。ジャック・ラカンは、この境界線はピラミッド型に階層化されており、「人の生物学的・社会的地位のすべてを連結した包絡線」に基づくとしている。境界線は人間関係の相互作用において、内的・外的の2方向それぞれに影響する。これらは時に、「保護」として働くこともあれば、「封じ込め」として働くこともある。

個人の境界の概念は、他人をコントロールしようとする人や、自分の人生に責任を負っていない人がいる場面で特に有効である。

依存症患者はしばしば、他人を自分のコントロール下に置くことが、人生において成功と幸福を達成する方法だと信じている。この手法を取る人は大抵、それを幼少時に生存スキルとして使い、そして習得したのである。彼らがその手法を使い続ける限り、誰も彼らの気持ちを窮地に追い込むことはできない。

共依存患者は、しばしば自分のニーズよりも他人のニーズを優先し、他人の問題解決に夢中である。

共依存関係は、家族、仕事、友情、ロマンチック、ピア、コミュニティなど、あらゆる種類の人間関係で起こり得る。

健全な人間関係は、適切な境界が土台となった感情的空間において成り立つのだが、 共依存者はそのような限界線を設定することが困難なのである。境界を適切に守るスキルは、精神的健康を取り戻すには不可欠である。

共依存関係においては、共依存者の目的意識は、パートナーのニーズを満たすために極度の犠牲を払うことなのである。共依存関係とは、当人が自給性や自律性を持たない不健全なペアを意味する。すなわち、ペアの一方または両方が、自身の充足の為に、もう一方に依存しているのである 。多くは、自分の価値は他人に由来するという誤った考えのために、無意識的に他人の人生を第一義に考えているのである。

引用ここまで

「どこからが自分で、どこからが他人なのか?」

「他人と自分を区別する自分と他人の境界線がない問題」を抱えてしまうと、健全な人間関係が築けません。自分の人生における行動の責任は自分自身でとらなくてはなりません。同じように、相手の行動の責任は相手自身がとらなくてはなりません。自分が責任をとる機会を逃してはいけませんし、相手が責任を機会を奪ってはいけません。

善意のつもりで相手の境界を侵すと、関係が悪化したり破綻したりします。相手の所有物を粗雑に扱ったり、相手の時間を奪ったり、相手がやるべきことを代行したり、相手の個人的な世界を知りたがったり、相手に自分の期待通りにして行動して欲しがったり、自分の好みや考え方を押しつけたり……そんな人は、健全な対人関係を築くことができません。

なので、「集客」が必要な仕事はできません。過干渉で教えたがりな人たちがうまくいかないのは、簡単に境界線を踏み越えてしまうからです。相手との境界線をあっさり超えて侵入してしまう人は、いつも対人トラブルに見舞われています。そんな人ほど、「こうすればうまくいく」という話をしたがったりします。

孤立して孤独化してしまっている人を観察してみると、対人関係がうまくいかないのを相手のせいにしているのが、すぐにわかると思います。自分が「相手との境界線を踏み越えている」という「原因」に目を向けません。当たり前のことなのですが、境界線を踏み越えてこられたら、健全な関係は終焉を迎えてしまうのです。そして、孤立すればするほど、境界線を踏み越えようとしてしまうという負の連鎖を引き起こしてしまうようになります。

境界線を引く

来年は、「他者との境界線を守れない人」にはキツイ年になるそうです。今年は、境界線を守れるようになる準備期間だったそうで、コロナ禍もその流れでの出来事とのこと。来年からの安部塾の活動は、「自分と相手の境界線を守れる人」のみでやっていくことにいたします。

2020年12月2日水曜日

ほんとうの意味で立てていますか? 木の杭のように立ちましょう。

 この姿勢をとって、肩・胸・背中をそれぞれ押してもらって、自分が立てているか確認してみましょう。立てていたら、安定しているはずです。

ちゃんと立てていますか? 站樁

高度な身体操作技法は、基本的身体操作技法の延長線上にあります。基本が不正確だと詰みます。立てていない状態で先に進んでも、成果は出ないと思います。

「樁」は「杭(くい)」の意なので、站樁は「木の杭のように立つ」になるかと思います。中心線・正中線を守ることには精神安定効果があることがわかっているそうです。一説には、免疫機能の改善効果も期待できるとされております。とはいっても、やり方を間違えると有害無益ですので、正確な型で納めないのであれば、やらない方がよいかと思います。

2020年12月1日火曜日

まず両眼視する→頭から動く

 小松先生のコメント。視えないことによる二次的な問題について。

像を融合させるために必要な努力は……

私たちの全身の動きは、「まず頭が動く」ところから始まりますが、頭が動く前に眼が動くのが基本となります。視ることにより、後頭下筋群が反応します。

後頭下筋群

後頭下筋群は筋紡錘密度が非常に高く、視覚や前庭覚と統合する固有受容器(センサー)として中枢神経系との感覚運動制御に関与しています。多数の筋紡錘(きんぼうすい)によって、身体のGPS的な機能を発揮します。

顔が前に出ている状態になると、後頭部の頭と首の付け根の部分が強く折れ曲がる(反る)ことになります。椎骨動脈が圧迫を受け血流が悪化し、頸性眩暈が起きやすくなるそうです。小脳の主動脈につながるため、不活性状態に陥ります。小脳は運動制御のほか、短期記憶・注意集中・認識力・計画立案力のような知覚情報統合や情動制御に関わっています。悪影響は甚大となるそうです。

視運動性反射=眼球がある方向へ動くときに頚部が眼球と同側方向に動く
前庭動眼反射=頚部が動くときに視線を1点に固定するために頚部と反対の方向に眼球が動く

後頭下筋群の機能低下が生じると視運動性反射・前庭動眼反射機能も低下します。眼球運動と頚部の動きが障害されるため、代償運動が生じる可能性がでてまいります。視運動性反射が機能しなかった場合、反射的に頚部が動かなくなります。随意的な頚部の動きとなり頚部の胸鎖乳突筋や僧帽筋などが優位となりがちとなり、反応速度が低下するようです。

もうおわかりだと思いますが、息を吸ったときに胸鎖乳突筋や僧帽筋にりきみが生まれる人は、後頭下筋群の機能低下が生じている可能性があるということになります。

詳細は、12月の各地の講座で解説したいと思います。

呼吸時の肋骨と胸骨との動きのイメージ。後頭骨と脊柱と仙骨のイメージ。

 昨日の記事にも書きましたが、胸に息を吸おうとすると首が過緊張して詰みます。安部塾では、背中と脇をふくらませるように意識します。

呼吸時の肋骨と胸骨の動き

呼吸時の胸骨の動き

息を吐いたときが本来の位置だと意識すると、うまくいくかと思います。胸骨の後ろは心臓なので息が入りません。なので、背中と脇をふくらませるようにすると息が入り、横隔膜が楽にさがります。下手に胸骨を意識してあげようとすると詰みますので、あくまで胸郭の前後径をひろげるように意識します。後ろ側にふくらませる感覚です。

肺と心臓の位置関係

脊柱と仙骨の動きを考えると、おそらく頭がウニになるかと思います。胸椎が、吸って伸展(反る)、吐いて屈曲(丸まる)なので、「吸うときに肋骨が後ろにふくらむ」というイメージと合わない場合が多いようです。通常状態で脊柱がつぶれてしまっている場合に顕著だと思います。


脊柱と仙骨の動き

呼吸と脊柱・四肢の動き

普通に混乱しますよね。

呼吸と後頭骨・脊柱・仙骨の動き

そして、「吐く息で脊柱を長く伸ばしながら~」とか誘導されるので、さらに混乱するかと思います。意味がわかると面白いのですが、なかなかややこしかったりします。

12月5日(土)の下関集中講座、6日(日)の大牟田機能運動学サークルにて詳しく解説いたします。

2020年11月30日月曜日

どこに向かって息を吸えばいいのか?

 息を胸に吸おうとすると、首が固まって不自由になり、苦しくなります。では、どこに吸えばいいのでしょうか?

安部塾では、「腰に吸いましょう」と提案しております。仙骨岬角あたりを意識いたします。重心点に向かって息を入れていきます。

重心線と重心点(仙骨)

重心線と重心点(脊柱)

息は前には入りませんし、下側にも入りません。肺の位置を確認してみましょう。

肺の位置

まあ、入るわけがありませんね。右肺と左肺の間には心臓がありますし、横隔膜の前方部直下には肝臓・胃・脾臓がありますし、そもそも肺は肋骨上部にしかありません。入るはずがない場所に入れようとしたら、首が過剰に緊張してしまいます。重心はあがり、心は不安定になり、いいことありません。肺の下縁を意識して、肺の周りの筋群を緊張させないようにしましょう。

肺の下縁

肺は、思ったよりも上部にあり、意外と小さい器官です。そして、胸椎と肋骨の間の関節を動かさないと、息が吸えません。肋骨の動きを見てみましょう。

呼吸時の肋骨の動き

集中講座参加者には自明の理かと思いますが、ふくらませる場所の意識を間違えると詰みます。牛の腹側の肋骨に接する部分をハラミ(アウトサイドスカート Skirt steak)、背側の腰椎に接する部分をサガリ(ハンギングテンダー Hanging tender steak)と言いますが、これは人間も同様です。そう、腰椎を意識して息を吸うと、ちゃんと吸えるのです。

横隔膜の付着

言うまでもありませんが、腰椎1~3番は仙骨岬角と直結しておりますので、仙骨岬角を意識して吸うことで、骨盤底筋群に内臓で圧をかけることが可能となり、動きが美しくなるというわけです。

12月5日(土)の下関集中講座、6日(日)の大牟田機能運動学サークルにて詳しく解説いたします。

「何かをする」より「何もしない」ほうがよいことが多いものです。「優游 復 優游」

 姿勢改善のコツのひとつに、「何かをする」よりも「何もしない」ほうが姿勢がよくなるというものがあります。よく誤解されているコツだと思います。「余計なことをしない」という意味なのですが、ほんとに何もしないのだと解釈してしまったりするようです。「脱力」の問題と同様、「余計な力を入れない」ということの意味を理解するということ自体が難しいのではないかと思います。

よく例えに出されるのが、膝関節の過伸展(反張膝)です。膝はまっすぐな状態(完全伸展位)までしか伸びないのが無理がないのですが、その位置を越えて、さらに伸びた状態(過伸展位)までもっていってしまうのは無理が生じます。脚を横から見たとき、脚が後ろに弓のように曲がって変形している場合、膝関節の前面に過度のストレスを誘発するため、膝の痛みの原因になったりします。

膝関節の過伸展

人によっては、「膝関節過伸展=美しい」という価値観をもっていたりするため、膝関節を後ろに押してしまって膝関節の機能障害を引き起こしてしまうことがあります。「バックニー」と呼ばれており、審美競技者が陥りやすい問題のひとつとして、よく知られています。姿勢改善の世界では、「膝は前にあること」が大切だと考えられております。

膝に限りませんが、審美競技者は過剰運動<hypermobility>症候群になりがちだと思います。私は、全身の複数の関節不安定性(可動域の亢進・関節過可動)があることには、デメリットが多すぎると考えております。

頭の位置を直す場合も、「余計なことをしない」という意識が重要だと考えています。本来、自然に「うなずく」構造になっているので、それに逆らわなければ、自然と頭部はあるべき位置に動いていき、姿勢と呼吸と動きがよくなっていきます。頭は前・上へ動き、首が自由で楽な状態にバランスするようになっているからです。余計なことをするから、おかしなことになってしまうのです。

頭部のうなずき運動

声がきれいな人の動きを観察してみましょう。
①軽く微笑みつつ、唇がわずかに少しひらく。
②下の前歯が上の前歯よりもわずかに前に出る(上あごに対して下あごがわずかに前に)
③下あごが落ちて、下の前歯の後ろに舌の先が軽くつく。
④りきみなく発声する。
……というような流れが見てとれるかと思います。何より、発声と同時に脊柱が長く伸びて頭の位置が高くなっていくのがよくわかるはずです。

きれいな声が出ない人を観察すると、身体の特定部分に力を入れて(りきみ)、発音したつもりになっていたり、口をあけるときに頭の位置が低く下がってしまっていたりするものです。この特徴はそのまま、余計なことばかりしてかえってうまくいかない人たちによく見られるため、指導者講習などでよく話題にあがります。声が重い人は、見た目の雰囲気も重く、頭が沈んでしまっており、筋肉的に発音することがよく知られております。筋肉的な声は耳障りなため、さまざまなデメリットを生じるようです。

「無為自然」という老子の言葉があります。「無為」とは「作為的なことをしない」という意味だと考えております。「自然」とは自ずから然り。

"doing nothing often leads to the very best something."
「何もしない」は、いつも最高の何かにつながる(プーと大人になった僕)。

ソファやベッドでゴロゴロして何もしないという意味ではないと思います。「やるべきことをきちんとする」ということが「何もしない」ということなのだと考えております。

良寛さまの「「優游復優游(ゆうゆうまたゆうゆう)、薄(いささ)か言(ここ)に今晨(こんしん)を永くせん」という言葉が好きです。「この草庵の暮らしは、何もない無一物だが、何にとらわれることもなく、心はただ「優游」と表現するしかない。これがわたしの生だ、朝がくるごとにその「いまここに」を大切に生きるとしよう」……何にこだわることもなく、何を憂えることもない心の状態であってこそ、「何もしない」ができるのだという気がいたします。


 

2020年11月29日日曜日

「あごを引く」と姿勢がよくなります。

 頭蓋は、主に脳を容れる部分である脳頭蓋(神経頭蓋)と、主に顔面を構成する顔面頭蓋(内臓頭蓋)に分けられます。

脳頭蓋と顔面頭蓋

人類の特徴として、顔面頭蓋に比べて脳頭蓋が大きいことがあげられます。他の動物に比べ、大脳が発達しているためです。
猿と人の頭蓋

安部塾では、「顔面頭蓋は、上あご+下あご」と考えております。なので、あごを引くイメージは下図のようになります。

あごを引く

回転軸は環椎後頭関節となります。耳の穴の前上方に頭部重心がくるため、自然とうなずき運動が起きます。

うなずき運動

なので、脊柱が長く伸びて、姿勢がよくなります。

あごを引くと姿勢がよくなる

本日の新宮校集中講座、12月5日(土)の下関集中講座、6日(日)の大牟田機能運動学サークルにて詳しく解説いたします。


2020年11月19日木曜日

安部塾呼吸技法『息吹(いぶき)』を再編しております。頭と背中と腰の関係をよくすることで、呼吸が整います。

 12月より、安部塾呼吸技法『息吹(いぶき)』の伝授に力を入れることにいたしました。

呼吸と肋骨・横隔膜

呼吸と横隔膜

肺の位置イメージ

人は、完全に呼吸ができなかったら死んでしまいます。死なない程度にしか呼吸ができなかったら、さまざまな活動能力を失ってしまいます。正しく呼吸ができたとき、本来の能力を発揮させることができます。

首と肩を緊張させて固めた浅い呼吸では、「とりあえずどうにか生きることができている」という状態でしかないのではないかと思います。脇と背中を使った深い呼吸ができれば、ちゃんと生きていくことができると考えております。

直接的な方法で呼吸を変化させようとするやり方は、よくない結果につながると思います。間違ったことをやめることで身体各部の完全な調和を取り戻すことが大切だと考えます。安部塾では、呼吸は良い姿勢につき従う動きであると考え、意識で息を直接的に統制し続けようとはしません。間違いを認めて改めれば、正しい呼吸が自然と立ちあがるからです。

良い呼吸は、コア(中心)である『頭と背中と腰の関係』が良くなった二次的な結果として生じるものだとしております。

手足・腕脚をバタバタと振りまわしても、思うような効果を得ることはできません。まずは姿勢と呼吸を整えることが大切だと思います。頭と背中と腰の関係を良くすることに集中して、それができてから枝葉末節の動きをやっていきます。頭を正しい位置にもっていけるようになることを最優先にしていきたいと考えております。

12月前に、以下の集中講座で『良い姿勢が正しい呼吸を生む』というテーマで解説いたします。御参加、お待ちしております。

11月26日(木)大阪集中講座 → 詳細

11月27日(金)名古屋集中講座 → 詳細

11月28日(土)神戸集中講座 → 詳細

11月29日(日)新宮校集中講座 → 詳細

2020年11月18日水曜日

良い姿勢をつくるのは、頭の位置直しから。

 環椎後頭関節(第1頭関節)をつくる骨は後頭骨と環椎です。後頭骨下面の左右に存在する喉頭顆と環椎の上関節窩による関節であり、頭蓋の左右および前後運動に関与しています。環椎後頭関節(環椎と後頭骨の関節)には椎間板がありません。

環椎後頭関節に不具合があると、脳への血流量が半減するというデータがあるそうです。呼吸も苦しくなります。自分で意識して良い姿勢をつくろうとすると、新たに別の緊張を生むことになって環椎後頭関節の不具合が悪化し、本来のあるべき位置に頭を戻すことができなくなることが多いと思います。

姿勢の良し悪し

鍵は、環椎後頭関節の動きを意識した頭の位置直しだと思います。

頭の位置直し

呼吸のしやすさと声の出しやすさを基準に頭の位置を決めていくとよいかと思います。

2020年11月17日火曜日

首を楽にして、全身を整える~額(ひたい)を前方に出しながら頭頂を上にもっていく~頭と顔面について

 頭と顔面を混同していると、身体操作を誤ってしまいがちです。

脳頭蓋と顔面(内臓頭蓋)

頭蓋骨中心からおろした重力線は、全身の重力線よりも前方にあります。頭蓋骨重力線は、環椎後頭関節(乳様突起の奥)よりも前にあります。なので、頭は自然に「うなずく」ような構造になっています。

脳頭蓋と顔面(内臓頭蓋)

脊柱を長く伸ばそうとして、頭頂部を上にもっていかずに顎(あご)を引くとつぶれてしまい、結果的に脊柱が短くなってしまいます。乳様突起の奥を軸にしてうなずきながら、重力によって顎を引き、頭頂を上にもっていくと脊柱が長く伸びるはずです。呼吸がもっとも楽になる頭の位置が、頭が脊柱でバランスを保てる位置だと考えていいと思います。

ここで大切なのは、目(眼球)より上が頭、目より下が顔面だという感じ方です。「頭を前へ」と聞いて、顔面を前に出してしまうと首の後ろが緊張して詰まってしまいます。全身の筋活動が以上に高まり、りきみが生じて固まってしまいます。機能構造的に不安定な上に全身が短縮硬化するという状況に陥ってしまいます。

これに対し、脳頭蓋を前に出せば、過剰な筋活動が起きません。動きがとても楽に、そして美しくなります。頸部筋群(首の筋肉)の緊張が高まらないように保ち続けることが大切だと思います。