腰痛 |
「患部を治す事」をしていても、今後、筋骨格系疾患の患者さんは増える事はあっても減る事はありません。
それは、20世紀までの医学で証明されてしまいました。
ターゲットは心理社会的因子です。
もっと言えば「脳」なんです。
患者さんが自分の体に対して、いかに、安心と勇気と自信を持ってもらえるかが勝負なのです。
発症後1年以内の腰痛患者144名と健常者138名の骨盤の歪みと下肢長差を厳密に測定した結果、どのような臨床的意義においても、骨盤の非対称と腰痛は無関係
(Levangie PK,Spine,1999)
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『腰の骨がズレると腰痛になる』などのウソの情報を教育してはならない」という報告も知ってます。
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【慢性化させる治療者】
過剰な検査を行ない、壊れた部品仮説を信じ込ませようとする
(ACC,急性腰痛と危険因子ガイド,2010)
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残念ながら、イエローフラッグは、私たち治療者側が与えている可能性が多々あります。
不安や恐怖心を煽る事を無意識に教育しいているのです。
その背景には、何か理由を付けて、患者さんに通院してもわないと経営が成り立たないという側面もあるのでしょうが。。。
脳は結構単純で、先生と言う立場の人から説明を受けると、「私の腰は○○になっているんだ」と、信じてしまう所があります。
引用ここまで
素晴らしい本があります。
腰痛 (第2版) 編著:菊地 臣一 |
慢性腰痛に対する新たな視点-「解剖学的損傷」から「生物・心理・社会的疼痛症候群」へ、という新たな潮流を解説する。
EBM(evidence-based medicine)というscienceの進歩が明らかにしたのは,皮肉にも,先人の知恵やknow-how,そして医療従事者1人1人の経験,すなわちartの重要性であった.最新の科学的解析手法が導き出した結論が,先人による経験の蓄積で辿りついた結論と同じであったのだ.今,医療と医学はここに合流したと言える.
腰痛を知るのではなく,腰痛をどう考えるかという捉え方である.そして,本書の底流に一貫して流れているのは,「痛み」である.人間にとって痛みとは何か,医療従事者は痛みをどう捉えるのか,その患者にとって痛みはどんな意味をもっているのか,そしてわれわれはどのように治療(cure)すれば良いのか,あるいは向き合う(care)のかを考えるための本である.
本書は教科書ではない.本書の内容を読者に押しつける意図もない.只,本書は,得られた事実とその事実の解釈,そして考察の記載である.
引用ここまで
安部塾で、「腰痛が~」とか「肩が~」とか訴えると、「脳の問題だと思います」って返ってきます。
不安・うつ・落胆などの情緒的因子に向き合うように奨められます。
こんなプレリリースがあります。
→ うつ病における脳内炎症の役割の一端を解明
→ ストレス・うつ病における脳内炎症の役割を解明
→ 脳が燃えている:慢性疲労症候群患者の神経炎症
僕なりに簡単にまとめてみます。
ケガをしたときに皮膚が赤く腫れるような状態を、『炎症』といいます。
脳内で起こる炎症も同じです。
健常な人の脳も、日々少しだけの炎症が起きます。
炎症の度合いが強くなると、脳の神経がダメージを受けます。
回復が難しくなった状態が、脳の慢性炎症状態ということになります。
脳の血流低下とやカルニチンなどの伝達物質の減少が続き、代謝が落ちていきます。
結果、セロトニン神経系のダメージが大きくなります。
痛みに対する感受性が高まり、筋肉痛や関節痛などの症状を引き起こします。
同時進行で、脳機能が低下します。
こだわりが強い人は、脳の炎症を悪化させやすいといえます。
こだわりが強い人が、引きこもり状態になりやすいのです。
ちょっとしたきっかけで、バーンアウト(燃え尽き)からドロップアウト(脱落)します。
ちょっと動いただけでも疲れが出てしまいます。
自室にこもり、外に出ることができなくなります。
仮に外に出ても、疲れ切ってしまうので、また引きこもります。
僕が、「常闇」と言っている状態です。
いったん一般社会と隔絶すると、不安が強化されます。
感情を引き起こす部位である「側坐核」の活動が低下します。
ドーパミンを放出する中脳の「腹側被蓋野」で神経伝達が滞ります。
細胞内のシグナル伝達などに関わっているアクチン多量体が増え、細胞運動が遅延します。
脳の認知機能を司っている神経シナプスの伝達効率が低下します。
側坐核から腹側被蓋野へと続くシナプスの前部で神経伝達不全が起こります。
mDia and ROCK mediate actin-dependent presynaptic remodeling regulating synaptic efficacy and anxiety(Cell Reports 2016年12月22日) 京都大学大学院・医学研究科 |
僕が個人的に好きなプレリリースはこれです。
腸内細菌叢が脳の働きに影響する話 ~近年の腸内細菌研究による医学情報~ 脳神経外科部長 鈴木 直
腸内細菌の活動やその代謝産物は、常在する菌の数自体が膨大であるためヒト自身への影響を無視できません。現在も解明されていない多くの謎が残っているものの、腸内細菌叢の善し悪しがヒトの体調・免疫・脳機能、そればかりかヒトの情動や社交性にまで影響を及ぼし得ることが示唆されています。
引用ここまで
動作音が大きく、よくつまずき、そして転ぶ。
情動(感情の動き)が安定しない。
いつも体調が悪く、服従するか支配するかの二択で対人関係を処理。
うまくいっていないのに上から目線で、高慢な発言を繰り返す。
思うに、腸内細菌叢の問題なのではないかと小一時間。
こっちの考え方も。
→ 精神的ストレスは腸管上皮の糖鎖構造を変化させる
精神的ストレスは消化管の機能に悪影響をもたらすと共に、腸内細菌叢(そう)を変動させることがよく知られています。逆に、腹痛などの腸管の不快な感覚や、特定の腸内細菌の産生する代謝産物の刺激は脳に伝達され、ストレスの症状をさらに悪化させます(腸内細菌−腸−脳相関4))。
引用ここまで
顔がやつれ、貧相になればなるほど、謎のポジティブ発言を繰り返すようになる。
疲労困憊して満身創痍で、自分が輝いていると訴える。
そんな破滅的行動を起こしている原因が腸内細菌叢の代謝産物の仕業だとしたら……
脳機能が健全に機能しないがゆえの悲哀です。
考え方を、キラキラ系にしたら、人生が良い方に変わる?
そんなことはありません。
脳の炎症や腸内環境の問題に、きちんとした対処をしなければならないのです。
壊れた脳機能で感じる感覚や認知機能で判断したら、どうなってしまうかなんて、火を見るより明らかです。
運動によって脳機能を改善していくためには、膨大な知識が必要です。
最近、特にそう思い知らされます。
これまで信じられてきたやり方が次々に覆されていく21世紀。
変化に順応して生きていきたいと思います。