呼吸と胸郭の動き |
『アレクサンダー・テクニーク完全読本 体がよみがえる姿勢と動作 リチャード・ブレナン』医道の日本社 141~144Pより
効率的で有益な呼吸は、良い姿勢や明確な思い、そして本来のデザイン通りに体を使うことにおいて、不可欠なものです。ほかの多くの体の機能と同じように、呼吸という単純な行為も、しばしば無意識の中で制限されています。
これまで述べてきたように、不利な姿勢と体の誤用は、筋の過剰緊張をもたらします。筋緊張は、胸郭、肺、鼻腔、口、のど(気管)に至る機能に影響を及ぼします。また、よくみられる上半身が崩れた姿勢や縮こまった姿勢を起こさせます。姿勢が崩れると、空気を取り入れる肺の容量に多大な制限をかけることになります。そして、「浅い呼吸」となってしまい、必要な空気を取り込むにあたって、より労力を要する状態となります。つまり、本来の楽な呼吸を、あえて労力をかけて行なってしまうということです。
この余分な努力は、ほぼ無自覚なまま行われています。私たちは浅い呼吸と負荷のある呼吸に慣れてしまっているからです。これが長年行ってきた呼吸の仕方であり、私たちはそれを「普通」「正しい」と感じています。
多くのボイストレーナーやスポーツトレーナーは、肺が本来の動きができる状態となる「深い呼吸」を勧めます。その目的は考え方としてはふさわしいのですが、彼らの推奨する呼吸の仕方は、多くの呼吸器系の問題を悪化せてしまう可能性もあります。人々はよく、息を「吸い込んで」または「押し出すように」して、肺の容量をひろげるように指導されます。しかし、これはすでに過度に負荷がかけられた筋群に、さらに緊張を加えるだけです。既存の呼吸法や呼吸エクササイズのほとんどは、「深く吸って」と指示するなど、息を吸うことにフォーカスしています。
しかし、これは呼吸メカニズムをさらに制限してしまします。胴体の筋を緊張させて胸を持ちあげて、背中の弯曲を大きくしてしまうでしょう。これが呼吸をより制限することになり、有害な呼吸パターンンをさらに加えてしまい、元々持っていた呼吸の悪癖をより強いものにしてしまいます。
自然な呼吸は、特定の呼吸法や呼吸エクササイズを行うのではなく、有害な習慣をやめていくことで得られるものです。
アレクサンダー・テクニークは、効率の悪い呼吸の習慣に気づいて、それを予防していくものとなります。「やっていることを、より少なくする」という考えをベースにしたアレクサンダーの有名な言葉に「呼吸をしようとしなければ呼吸ができる、ということが最終的にわかったことだ」というものがあります
多くの人の考えることとは反対に、息を吸うことではなく、息を吐くことが私たちの呼吸の仕方を決めるのです。私たちが息を吐くと、肺の気圧は低下し、部分的に真空状態が形成されます。これが外部の空気を肺の中に吸い込ませることになります。通常の状態であれば、呼吸メカニズムはすべて自律的に行われます。息を吐くほど、その後の吸気は深くなり、呼吸を深くできるのです。
呼吸が反射によって自然に行われることを理解しておくことは大切です。私たちが呼吸を改善しようとして行うすべてのことは、逆に自然な呼吸をさらに邪魔してしまうでしょう。私たちは「習慣を手放す」必要があり、そして「自然に任せていく」ようにすることが大切なのです。
~引用ここまで
胸郭と上腹部まわりに制限をかけている自分に気づくことができれば、その制限を解除するだけで、より自然な呼吸ができるようになります。安部塾では、「息を吐くことを制限している自分の悪癖」に気づくことができるよう、自分の緊張を観察するように促しています。無理に空気をはやく出そうとしたり、吐く息を長引かせようとしたりしないように(これらは新たな緊張を生み出します)、自然にまかせていくようにします。
8月の各地のワークショップで、深く正しい呼吸について解説いたします。
☆新宮校ワークショップ(休日)
8月11日(木・祝)→ 詳細
☆新宮校ワークショップ(お盆)
8月14日(日)→ 詳細
☆東京ワークショップ
8月19・20・21日(金・土・日)→ 詳細
☆大阪ワークショップ
8月25日(木)→ 詳細
☆名古屋ワークショップ
8月26日(金)→ 詳細
☆神戸ワークショップ
8月27日(土)→ 詳細
☆下関ワークショップ