2024年5月13日月曜日

自律神経を整える「親切と寛容」。お互いにwin-winの状況を目指す人たちは健康的。

 多重迷走神経理論を元に、姿勢、動き、呼吸、口調、表情を観察してみましょう。

 交感神経優位な人たちには、腰痛、肩こり、頭痛、発汗、ほてり、動悸、胸苦しさなどが観察されます。

 背側迷走神経複合体優位な人たちには、しびれ、冷え、筋肉に力が入らない、感情表現の乏しさ、言語的表出が乏しさがみられます。

 どちらの場合にも、頭部前方位姿勢がみられます。


 協力と裏切りのゲーム理論における長期生き残り戦略の上位4つは、

①Nice 親切

②forgiving 寛容(報復はするが怨みを抱かない)

③retaliatory 報復

④clear 明確

……です。トリッキーで意地悪な戦略をとる人は生き残りづらくなります。親切の反対は悪意、寛容の反対は不寛容です。悪意に満ちた不寛容な人たちの末路を少し観察してみると、ゲーム理論の面白さがわかるかもしれません。

 実際に親切で寛容な態度をとっているかどうかが大事なのであって、利他的か利己的かはどちらでもよかったりします。真に利己的な人は、親切で寛容なものです。

 当たり前のことですが、お互いにwin-winの状況を目指すのが最適解となります。なので、社会交流の迷走神経である腹側迷走神経系複合体が優位であると生きやすくなるのは、理に適っていると考えられます。

 安部塾的には、①は腹側迷走神経系複合体優位、②は、腹側迷走神経系複合体+交感神経系と腹側迷走神経系複合体+背側迷走神経系複合体のハイブリッドな状態であると考えています。いずれの場合も、「安全であること」を前提としています。対人関係において、親切と寛容の態度がとれる人の自律神経のバランスの良さを観察してみると、面白いかもしれません。落ち着いた、穏やかな、優しい表情とまなざし・声が、安心感を与えてくれます。

 比較のために、ヨイショすることで相手を操作しようとする生存戦略や、権威や立場で威圧して相手を操作しようとする生存戦略を選んでいる人を観察してみると、自律神経のバランスの悪さをみてとることができるかと思います。粗暴で、荒くて、キツイ表情と目つき・声が不安感をかきたてます。

 これも観察してみると面白いのですが、腹側迷走神経系複合体がうまく機能していない人が、腹側迷走神経系複合体が機能している人の言動を斜め上の解釈をしていることがよくあります。自分の中にある自分では受け入れられない否定的な側面を他人に映し出している、防衛機制の投影という状態です。自我は自分の中に否定的な要素があることに耐えられないので、無意識に抑圧して投影してしまうとされています。いわゆる、「色眼鏡をかけて見る」わけです。ありのままを見るのではなく、自分の内的世界での意味付けによって世の中を見ているということです。

 受け入れがたい自分の感情や欲求を、他人のものであるかのように押しつけている人の自律神経のバランスは不安定です。相手や物事には、良いところもあれば、悪いところもあります。その両側面を統合することができない人は、良いか悪いかのどちらかを相手に映し出してしまいがちです。

 良いを相手に投影すると、過度に相手を理想化することになり、無条件に相手が素晴らしい人だと思い込んで尊敬したり、好意を抱いたりします。敬意を過剰に抱いて献身的に尽くしたり、讃えたりしてしまいます。

 悪いを相手に投影すると、自分を傷つけてくる人物として恐れたり怒ったりします。敵意を向けられていると感じ、投影した相手に攻撃を向け、関係性を自分で破壊してしまいます。

 「良い人だ」「悪い人だ」と、極端に区別してしまったり、良い人だと思い込んでいた人の中に悪い部分が見えてくると、「良い人」から「悪い人」へと急激に評価を下げしてしまったりすることがあります(理想化とこき下ろし)。

 相手に対する評価が極端に揺れ動いてしまうことで安定した人間関係が築きにくいのと、腹側迷走神経系複合体が機能していないのが、きれいにシンクロしているように見えます。

 自己嫌悪感を感じている人が他人を非難し、その感情を他人のせいにして、自分の不安や罪悪感から逃れようとしていたりします。自己中心的な行動をしている人が他人を自己中心的だと非難していたります。自分が嫉妬しているだけなのに、相手が嫉妬していると考えたりもそうです。交感神経系が優位になり過ぎて肌が荒れ、目の輝き(潤み)が失われているのが観察できるかと思います。

 自己評価が低い人は、自己価値感を守るために他人に自分の欠点や不安を投影することがあります。自己評価の低さは、他人に対する批判的な態度や要求を高め、投影の可能性を高めています。面白いことに、自己評価が低い人が、自分の自己評価を他人に投影し、他人を自己評価の低い人だと見ることがあります。

 投影は一時的な感情の軽減や自己保護には役立ちます。しかし、他人との誤解や対立を引き起こし、他者との関係や自己成長に悪影響を及ぼすため、長期的にはデメリットが大きくなります。

 安部塾では、ナチュラルに親切で寛容な態度をとっている人の自律神経系はバランスがとれていると考えています。ぎこちなく親切そうな人を演じているだけだったり、寛容そうに振舞っているだけだったりの人の自律神経系は、交感神経系や背側迷走神経系に振れっぱなしだったり、両者の間を激しくいったりきたりしているのだと考えます。

 改善のためには、眼や舌を動かしたり、他者の話を聴いたり、匂いを嗅いだりと、五感を使って世界をありのままに感じようとすることが不可欠だと考えています。

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