脊柱側弯症は、脊柱が側方へ弯曲し、椎体の側方転位と回旋を伴う病態。
非構築性脊柱側弯症とは、筋・筋膜のインバランスなど機能的な問題による側弯を指し、左右の構造的脚長差の違いによって骨盤の高さの左右差を生じさせる場合と、骨盤周囲の筋・筋膜のインバランスによって骨盤の高さが変化して見かけ上の脚長差が生じる場合があります。側弯症を伴う場合も伴わない場合もあります。ここでは、前額面における立位の不良姿勢としてよく見られる左右の骨盤の高さの違いについて説明します(図2)。
非構築性脊柱側弯症 |
アライメント
●右腸骨が左腸骨よりも高い
●腰椎は軽度左凸
●右股関節内転位、左股関節外転位。この肢位では、右下肢が左下肢よりも見かけ上短くなる。これを補正するために、右足部は回外(踵骨内反)して足部外側縁に体重をかけ、右膝は内反傾向となる。一方、左足部は回内(踵骨外反)して足の内側アーチを低くし、左膝は外反傾向となる。
症状を起こしやすい部位
右側骨盤挙上側
●骨盤が上方に傾斜するので荷重が増加する。大腿骨頭を覆う範囲を減少させ、大腿骨頭の内側あるいは中央面の退行性変化のリスクが生じる。
●挙上によって、最下位の分節で腰椎の側屈を生じさせる。この例では左凸の右側屈を生じ、同時に反対側への回旋を生じさせ、この回旋が腰痛の一般的な要因となる。胸椎および頸椎には反対方向への代償性側弯が見られることがある。
●右側腰椎椎間関節には、関節の伸展および圧縮が見られ、椎間板の右側へは圧縮が加わる。また椎間孔の狭窄が生じ、血管の鬱滞または神経根への刺激を引き起こす。
●股関節外転筋力は低下し、内転筋群は硬くなる。
●大転子が外側に突出することによる股関節の腸脛靭帯炎や、梨状筋がその硬さによって坐骨との間でインピンジメントが生じる可能性がある。
●膝内側関節面に退行性変化のリスクが生じる。
●足関節内反捻挫のリスクが高まる。
●より高齢者の患者では、代償として長い側の下肢を曲げることを好む。高い側が遊脚期のときは、長い足を前に進ませるために飛び上がるようになり、身体の上下移動によりエネルギー消費量を増加させることになる。
左骨盤下制側
●大腿骨頭の上外側面の退行性変化のリスクが生じる。
●左側腰椎椎間関節には関節の屈曲および離開が見られ、椎間板の左側は広がる。
●膝関節外側面に退行性変化のリスクが生じる。
●膝関節の腸脛靭帯炎や鵞足炎のリスクが高まる。
●扁平足や外反母趾のリスクが高まる。
●立脚期と蹴り出し時に膝関節過伸展を生じ、膝蓋骨軟化症のリスクが生じる。
●より若い患者では、代償として短い側のつま先で歩くことを好むが、これにより、下腿三頭筋を発達させるための刺激が減り、結果的に拘縮を生じさせる可能性がある。
引用ここまで
胸椎と腰椎の側方弯曲が逆になったS字曲線の側弯や、股関節や下肢の非対称性も、多かれ少なかれ誰にもあります。側弯のS字曲線がキツくなりすぎると、さまざまなリスクを生じさせる原因になることがあります。
首や背中に持続的な慢性疼痛があると防御性の筋収縮反射が起き、機能的脊柱側弯が生じやすくなります。
わりと軽く考えられがちな胸椎と腰椎の側方弯曲が逆になったS字曲線の側弯ですが、思った以上にダメージを蓄積させることになりがちなので、対処が必要だと思います。