アレクサンダー先生は、頭と首のバランスが、すべての身体活動における最も重要な要素であると定義し、プライマリー・コントロール(最初の操作)と名づけました。頭と背骨の関係や背骨の状態が整うこと=プライマリー・ムーブメント(最初の動き)となります。頭の中にある身体のイメージが重要な理由は、自分が抱いている身体イメージに基づいて身体が動こうとするためです。正確な身体のイメージが抱けていれば、何の問題もありませんが、身体に不調を感じたり問題を起こしている人は、すでに間違ったイメージを抱いていると考えられます。
コア・プログラムでは、すべての動きはコアから始まるとしています。一見矛盾しているように思えますが、実際にやってみればわかります。頭と背骨の関係や背骨の状態が整うのと、コアが機能するのが同時に起きるのです。誘導的には先に首と頭を自由にしますが、自由になる瞬間、同時にコアが機能し始めます。ヒップヒッチング(股関節の引きあげ)がわかりやすいのですが、首が自由になっていないと腰が張ってうまくいきません。
やわらかく楽に自由に動く首と平らなお腹はワンセットで、そこから生まれるやわらかい腰遣いや四肢の動きはとても美しく品の良い動きになります。固まった首と張りだしたお腹から生まれる硬い腰遣いと四肢の動きは、一見すると元気がよく躍動的に見えますが、無駄が多く品の悪い動きとなります。首が固まると、良い動きと悪い動きの判断の基準が逆転してしまうため、やわらかく楽に自由に動く首の持ち主の動きを低評価しがちだと教わりました。
わかりやすいところで、首が固まって不自由になると、全身のあちこちが固まってしまい、体をほぐしてから動くということが必要になります。全身に凝りや張りが生じるため、それを麻痺させるような激しい動きを好むようになります。そうするとさらに首が固まってしまい……という連鎖に陥ることになります。頭と背骨の関係や背骨の状態を整えるという視座を持たないと、この連鎖から抜け出すのは難しくなると思います。
ポイ・ヴェール |
もうひとつわかりやすいところで、ヴェールを振ってみるというのがあります。頭と背骨の関係や背骨の状態が整っている人は、動きに正確な面をつくれるので美しくヴェールを振ることができます。首が固まっている人は、動きに面をつくれないため、ぎくしゃくしてぐちゃぐちゃな動きとなります。ポイやロープスイングでも、わかりやすい結果が出ます。上の写真のポイ・ヴェールを振れるようなら、セーフだと思います。
関節が軟らかいというのと動きが柔らかいというのは別で、関節が軟らかすぎればケガや故障につながりますし、動きが柔らかければ乱雑な動きによるケガや故障に悩まされることがほとんどありません。逆に言えば、ケガや故障に悩まされているとしたら動きがかたい可能性が高く、すごぶる快調であれば動きが柔らかいということだと思います。動きが柔らかいは、現代風に言えば「スキルが高い」ということになるかと思います。
1月のワークショップは、コア・プログラムとヒップヒッチングの解説をいたします。