2020年8月5日水曜日

『自分を変えることができるのは、自分だけ』『脱皮しない蛇は死ぬ(脱皮できない蛇は滅びる)』

「自分が変われないのは環境(自分以外)のせい」と主張し続ける人は、自ら変わろうとしません。アドラー先生は、「本心では変わりたくないと思っているのだ」と言います。そんな人に、周りの人たちが関わってみたところで、変わりたくない人を変えることはできません。本心から変わりたいと思っている人は、自らの力で変わっていきます。

本心では変わりたくない人たちは、極端に自己肯定感が低いとされます。自分で自分という存在を「いい」と受けいれることができないということです。性格(持って生まれた性質の意)を変えることはできません。変わることができるのは「思考」「行動」です。自分の思考や行動を変えるのに、他人の助けはいりません。「現実の自分」と真正面から向き合うことで、それは可能になります。

現在の自分に対する不満から、新しい自分になろうとするというのは、違う自分(自分でない自分になる)になるということではありません。過去の環境によってつくられた自分のすべてを否定しようとしても、大抵は挫折してしまうと思います。変わりたい理由が「自分自身に対する不満」というのはストレスフルです。変わりたい理由は「満足度の高い人生にしたい」というのが円滑でいいかと思います。

本心では変わりたくない人は、他者とのコミュニケーションを深めようとしない傾向が強いそうです。「自分の思い通りにならないのであれば、他者と付き合う必要はない」という思考の元、幅の狭い対人関係を構築してしまうということです。最近のSNSで問題となっているエコーチェンバー効果もそうですが、本心では変わりたくない人は、自分の考えを否定するような考えの人たちを「間違い」だと認識し、「自分は正しい」と考えます。もしくは逆に、「どうせ自分は間違っているから」と殻に籠ってしまったりということになります。

「変わりたい」と口で言っている人に、変わる機会を与えたとします。多くの場合、全力で拒絶してしまうと思います。本心では、自分を変えたいとは思っていないからです。いまの現状を、いまの現状のままにしておきたいというのが本心です。いわゆる「現状維持バイアス」がかかっている状態です。「未知なもの、未体験のものを受け入れたくないと感じ、現状のままでいたい」とする心理作用です。現状を基準とし、変化を受け入れず固執します。現状維持を選択すれば、リスクを負う必要もありませんし、コストも労力も払わなくて済みます。

ニーチェは「脱皮しない蛇は死ぬ(脱皮できない蛇は滅びる。意見を脱皮していくことを妨げられた精神も同じである)」と言いました。古い自分を脱ぎ捨てて新しい自分に生まれ変わるのを拒めば、その先にあるのは「停滞」からの「死」です。『スッタニ・パータ』に、「この世に還り来る縁となる煩悩から生ずるものを、いささかも持たない修行者は、この世とかの世を共に捨てる―蛇が脱皮して旧い皮を捨てるようなものである」とあります。

8月からの安部塾は、「脱皮できない蛇は滅びる」をテーマにやっております。