日田の女王から質問があったので予備知識的な解説を。
■前庭動眼反射
頭が動くときに視点に固定するために頭と反対方向に眼球が動く反射。
目標物を固視する際に機能する。
例)頭を右に回旋したとき、視線を正面に保つには左右の眼球は左に向く
■視運動性反応
眼球がある方向へ動くときに頭が眼球と同側方向に動く反応。
目標物を追視する際に機能する。
例)眼球を右方向に向けたとき、頭もその動きに合わせて右回旋する
こちらを読んでみてください → .小脳による運動学習・運動制御機構
衝動性眼球運動と頭部の動きが協調することが、機能的な動きの基本です。
固視と追視の大切さが、最近の視知覚(ヴィジョン)ブームのおかげで周知されつつあります。
身体操作に問題を抱えている人・姿勢が崩壊している人には、ある共通点があります。
「原始反射が消失していない」のです。
発達の教科書には、「生後出現した原始反射は乳児期に消失する」とあります。
原始反射が消失していないと、感覚過敏となります。
視知覚と前庭感覚、協調運動の問題を生じます。
身体機能がまともに発達しません。
学習面でも問題を生じます。
左右両眼が円滑に動きません。
輻輳眼球運動(両目が同時に内側を向く動き)ができません。
乗り物に酔います。
球技が苦手です。
不必要な情報を無視できません。
表面的なことに意識を奪われてしまい、本質的なことに集中できません。
聴覚過敏であり、雑音が気になり注意集中ができません。
よく知られているように、視知覚の機能の発達は「寝返り運動」で促されます。
2000年以降、寝返り系エクササイズが一気に一般化した理由です。
寝返りによる移動が、前庭動眼反射を強化してくれるのです。
身体操作に問題を抱えている人たちは総じて、寝返りができません。
寝返りができないということは、感覚が統合できていないということです。
舌の動きも悪いし、足の機能はガタガタです。
固視=対象をじっと見つめること=注意してみている状態。
正確無比な固視ができることが、精密な身体操作の基本です。
斜視では、両眼固視ができません。
単眼固視・偏心固視」という状態になったりします。
弱視や眼球振盪があれば固視が不正確になります。
身体操作に問題を抱えている人たちは固視が苦手で、すぐに視線を外してしまいます。
網膜に映る外界の像のブレを防ぐ前庭動眼反射。
眼・脳・体の相互関係の確立は生後1年間が大切です。
頭を回転させたときに前庭動眼反射によって眼球が反対方向に回転することで固視を維持します。
片方しか向けない状態が続くと、前庭動眼反射が現れにくくなります。
結果、固視できなくなるのです。
ある1点を見ようとすること。
まわりの人たちとアイコンタクト(視線を交わす)すること。
そして、追視(追従性眼球運動)できるということ。
対象が動いているとき、眼球がその動きを追従してゆっくり動き、注視し続ける機能。
滑動性眼球運動(ゆっくり動くものを追視する)ができないと、頭が動いてしまう。
頭が動けば、球技はできない。
眼で球を追うことができないだけではない。
衝動性眼球運動は、中心窩固視を得るために行われるすばやい共同性眼球運動。
衝動性眼球運動が不正確だと正確に視線を飛ばすことができない。
本を読むときに、同じところを2回読んだり、行を飛ばしたりしてしまう。
つまり、本が読めない。
その他、いろいろなことができない。
正確な衝動性眼球運動をするにに頭の動きは不必要。
衝動性眼球運動ができないのを、頭の動きで補おうとすると負のループに陥る。
固視→衝動性眼球運動→固視→…という流れが、本を読むコツ。
「まとまり」単位で文章を固視し、次のまとまりを衝動性眼球運動により眼を動かして固視、そしてまた衝動性眼球運動により次のまとまりへ……
瞬間視ができなければ、本は速く読めない。
とまあ、ここまで書いてみて思いました。
そもそも、視知覚に問題があると、この記事自体が読めないということに(笑)。
私はブログを書くとき、身体操作に問題を抱えている人が読みやすいように「まとまり」で書きます。
3行以上になると読むのが困難になると予想されるので。
で、解決策は、素直にヴィジョントレーニングを学ぶことです。
アイックスのヴィジョントレーナー小松佳弘先生がおすすめです。
関東の方は、視機能訓練士宮田ちひろ先生(元小松)がおすすめ。
素人が自己流でどうにかできるほど、視知覚の世界は甘くはありません。
時間とお金をかけるなら、まずは視機能改善からです。
安部塾でも、極々初歩的な眼筋と後頭下筋群の使い方を教えています。
正確な身体操作に、正確な固視・追視は不可欠ですから。
7月16日(月・振替休日)の薬院校集中講座は、眼筋と後頭下筋群からポーズを決めていきます。
お楽しみに。