2022年12月26日月曜日

筋膜を解放して身体構造のバランスを整える。1月3日新宮校よりスタートします。

  2023年1月の各地のワークショップは、「身体構造のバランスを整える筋膜解放技術」について解説します。年始は、1月3日新宮校よりスタートします。セルフケアテクニックを中心に解説いたします。

深後頸部の解放

 筋膜の解放は、筋膜を伸ばし、筋膜と外皮、筋肉、骨の間の結合を解放するための手技を指し、痛みを取り除き、可動域を広げ、体のバランスをとることを目的としています。

  筋膜は、直接的または間接的に操作され、結合組織繊維がより柔軟で機能的な方法に再編成されることを可能にします.。

 筋膜は、皮膚とその下にある筋肉と骨の構造の間に位置し、体内の筋肉、器官、骨格構造を覆い、接続する結合組織のシームレス(継ぎ目のない)なウェブ(結びつけるシステム)です。

 筋肉と筋膜は結合して筋膜系を形成しています。

 ケガ、ストレス、炎症、外傷、および姿勢の悪さは、筋膜の制限を引き起こす可能性があります。

 筋膜は相互につながったウェブであるため、ある場所での筋膜への制限または緊張は、時間の経過とともに、セーターの引っ張りのように体の他の場所に広がる可能性があります。

 筋膜の解放の目標は、筋膜の制限を解放し、組織の健康を回復することです。

■身体構造のバランスを整える筋膜解放技術

 《前半》

①胸腰筋膜

・脊柱起立筋

・多裂筋

・腰方形筋

②腸腰靱帯と第12肋骨

③腸間膜と腹部

④大腰筋

脇腹の解放

《後半》

①頸部

・胸鎖乳突筋の解放

・僧帽筋の解放

・後頭下筋群の解放

・斜角筋の解放

②顎関節

・咬筋の解放

・側頭筋の解放

・顎二腹筋の解放

・内側翼突筋の解放

 ・外側翼突筋の解放

へその解放

☆新宮校ワークショップ

  1月3日(日)→ 詳細

 

☆下関ワークショップ

1月7日(日)→ 詳細

 

 機能運動学大牟田サークル

1月8日(日) → 詳細

 

☆新宮校ワークショップ(平日)

 1月9日(月) → 詳細

  

☆東京ワークショップ

1月13・14・15 日(金・土・日)→ 詳細  

 

☆新宮校ワークショップ(平日)

 1月日(月) → 詳細調整中

  

☆大阪ワークショップ

1月26日(木)→ 詳細

 

☆名古屋ワークショップ

1月27日(金)→ 詳細

 

☆神戸ワークショップ

1月28日(土)→ 詳細

2022年12月20日火曜日

下腹では、アウターマッスルである腹直筋の上にインナーマッスルである腹横筋がある。

この記事の続きです → 腹筋群(外腹斜筋、内腹斜筋、腹直筋、腹横筋)のはたらきを学ぶと、お腹をほぐさなくてはならない理由がわかります。

外腹斜筋・内腹斜筋・腹横筋・腹直筋の重なり

 ファッシャル・リリース・テクニック 医道の日本社 より引用いたします。

■腹部の筋膜鞘

 腹直筋は、腹部で最も表層に位置する筋である。腹部の前面のどこかにピンを刺せば、最初に触れる筋は腹直筋である。しかし、筋膜の観点から言えば、全く別の話である。

 第5肋骨での上部付着においては、実際に最も表層の筋であるが、肋骨の数センチ下では、外腹斜筋の筋膜が腹直筋を覆う。そのため、筋膜を考慮すると、腹直筋は外腹斜筋よりも深部に位置していることになる。

 さらにもう少し下の部位では、内腹斜筋の伸びた筋膜が腹直筋を覆っている。へその数センチ下の腹の高さである弓状線では、腹横筋の裏に潜り込み、恥骨に達する頃には、腹部で最も深層に位置する筋になっている。そして、腹直筋は骨盤底とつながっている。151P

 腹直筋と腹横筋は、ともに腹腔の2つの”ベルト″を形成する上で非常に重要な筋である。腹横筋は、前面の白線を通して脊柱の横突起から横突起へと走っており、横方向へのベルトの大部分を構成している。この横方向のベルトは、脊柱起立筋の周囲を走る筋膜(腰筋膜の表層と深層の薄い膜)によって完成され、棘突起で結合している。

 縦方向のベルトは腹直筋から発生し、横隔膜の中心部となって上昇し、前縦靱帯を骨盤底に向かって下降する。恥骨尾骨筋は腔の底とこのベルトを越え、再び恥骨で腹直筋の後ろの筋膜と出会う。

 これら2つのベルト付近の適切なバランスを保つことで、体の上部の胸郭や頭をしっかりと安定させ、よい基盤を与えることができる。152P

引用ここまで

弓状線

 講座 X線解剖学・10 前腹壁,背部の筋 腹壁の筋より引用いたします。

 弓状線arcuate lineは内腹斜筋の腱膜のうち,その後葉が臍の下約5cmの所で下方に凹む線で終わる部分をいう.三層の筋の腱または腱膜は腹直筋を鞘状につつむが,後葉と前葉からなる腹直筋鞘は弓状線の上と下で異なる.

 弓状線の上方では外腹斜筋の腱膜は前面に,内腹斜筋の腱膜は腹直筋の外側で二葉となり,うち前葉は腹直筋の前面を覆い,後葉は後面を覆う.後面にはさらに腹横筋の腱膜が加わるので腹直筋鞘の前面と後面との強さは同様である.

 弓状線の下方では,三層の筋の腱膜はすべて腹直筋の前面を覆い,後面には腹横筋膜が覆うのみである.外腹斜筋と皮膚の間には脂肪層である外側のCamper's fasciaと線維層である内層のScarpa's fasciaがある.

引用ここまで

 いわゆる「下丹田」と呼ばれている場所は、ちょうど弓状線のあたりになるという説があります。実際、ここを意識することで、とても動きやすくなります。ここが機能するためには、お腹がほぐれていなくてはならいないと考えております。お腹がほぐれると、胸が開いて肩甲骨がお尻の方へ下がって、頭が美しい位置で安定します。

腹筋群(外腹斜筋、内腹斜筋、腹直筋、腹横筋)のはたらきを学ぶと、お腹をほぐさなくてはならない理由がわかります。

腹筋群のユニオンジャック

 ファッシャル・リリース・テクニック 医道の日本社 より引用いたします。

外腹斜筋

 外腹斜筋は下部肋骨と肋骨の下の軟骨を(反対側の内腹斜筋を通って)反対側の上前腸骨棘に結びつけるだけでなく、直接、同じ側の恥骨にも結びつけている。

 腹部の筋の最も外側の部分に目を向けると、後方下部肋骨から、同じ側の上前腸骨棘へと走っていることがわかる。この部位は、体を回旋するときに機能するが、側屈するときにより強い力を発揮する。

内腹斜筋

 内腹斜筋も同様に、シートのような形状であるが、同時に三角形でもある。”X”の一部として、反対側の肋骨へ到達している。上前腸骨棘の反対側へ走っており、腹横筋が下部腹壁を強化するサポートをしている。また、恥骨に向かって鼡径靱帯へも走っている。149P

腹直筋と腹横筋

 ユニオンジャックの十字(赤十字、またはプラス記号のよう)部分は、垂直に走る腹直筋と、まるで軟らかい腹部の周りの大きなベルトのように繊維が水平に走る腹横筋が組み合わさって形成されている。

腹直筋と腹横筋

 腹横筋は、腰部と(仙骨の多裂筋とともに)仙腸関節を安定させる上で大きな役割を果たしている。この筋の動作は、腹部の中身に圧力をかけて、圧力下での安定性を作り出す。この筋なしに重いものを移動させることはできない。

 腹横筋と骨盤底の間には神経的な結合があることが、研究によりわかってきている。この2つはしばしば同時収縮を起こす。問題なく機能しているときは、腹腔および骨盤腔を強力に安定させている。一方で、うまく機能していないときは、尿失禁や不安定な腰の原因となる。

 当然、腹横筋は左右に1つずつある。基本的には、腹部の筋膜の最深層で機能する。臓器の腹膜のすぐ外側に位置し、横突起から横突起へと白線を越えて機能する。

 腹直筋は、腹部の筋の中では最も一般的な筋で(筋膜的な観点からこの後、意義を唱えるが)、最も表層に位置し、ビール腹と6つに割れた腹筋を区別する素晴らしい腱画を持っている。基本的に、腱画は腹直筋を左右それぞれ4つに分ける。

 腹直筋は、骨のサポートも受けずに、恥骨から胸骨へと長い距離をカバーしているため、このような腱画は必要である。腱画は、下腹部を補強しており、激しい運動をした場合や、体幹を伸展した際に下腹部が裂けないようにしている。

 もちろん、腹直筋は体幹の屈曲時も機能している。典型的な腹筋運動やクランチにおいては、胸郭の前面を恥骨に近づけ、多くの肋骨や、腰椎、さらには仙腸関節までを越えて機能する。他の腹筋と同様に、体を安定させる役割も持っている。さらに腹直筋は、腰椎の過伸展を防ぐ機能も持つ。150-151P

引用ここまで

 今月は、各地で「お腹ほぐし」をやっています。腹筋組織を持ち上げることで効果を得ます。適当にやっても効果は得られない(下手をすると有害)ので、意味を理解して行うことが大切です。

 お腹がほぐれると、頭部の前方へのずれが修正され、呼吸が楽になります。顔色が良くなり、見た目に若返ります(当人比)。

☆大阪ワークショップ

12月22日(木)→ 詳細

 

☆名古屋ワークショップ

12月23日(金)→ 詳細

 

☆神戸ワークショップ

12月24日(土)→ 詳細

2022年12月19日月曜日

美しい顔と肌をつくる内側翼突筋ほぐし

 昨日・今日の新宮校ワークショップは、「美しい顔になる効果」で定評がある「内側翼突筋ほぐし」で盛り上がりました。実際、顔を下方向に引っ張られなくなるため、ほうれい線が目立たなくなりすっきりし、血流が改善して肌が潤い、トーンが明るくなります。

 頭蓋全体の機能的統合、そして審美的な統合を図ることで、顔貌(目・口・鼻などの形・配置を含めた顔の様子)は、本来のその人がもつ美しい姿に近づくことができます(当人比)。

内側翼突筋

内側翼突筋ほぐし

 内側翼突筋ほぐしは、その卓越した効果から、女子受けがよいです(笑)。私的には、姿勢改善の要となる必須エクササイズですので、やってくれるなら万々歳です。

 アナトミー・トレインー徒手運動療法のための筋膜経線 第4版 医学書院 より引用します。

 下顎骨を頬骨弓から引き上げる咬筋と、蝶形骨の下側から持ち上げる翼突筋は、下顎角の部分でスリングを形成し、口内底部に接続する。側頭筋は下顎骨を通る一部のラインが機械的に接続しているだけで、側頭骨上の広範な付着部から下顎骨鈎状突起を上方に真っすぐ牽引し、その膜は帽状腱膜の下で頭蓋を冠状に越えて走る。帽状腱膜はSFL、SBL、LTL、SPLに関与する頭蓋の筋膜である。

下から見ると、2つの内側翼突筋とともに機能する2つの咬筋で
形成された下顎骨枝に不可欠なスリングがはっきりとわかる。

 
DFLの上部範囲には、外側の咬筋と内側の内側翼突筋で形成するスリングと、
SBLの帽状腱膜下で頭上ループのように越える側頭筋由来の膜が含まれる。

 引用ここまで(180-181P)

■手順(参加者復習用、いちばん上の図を参照)
①口を開ける。
②上歯に沿って、奥に指を進める。
③側頭筋が付着する下顎骨の筋突起を感じる。
④指をそれと歯の間で、さらに奥へと進める。
⑤上歯の臼歯の後ろにある内側翼突筋を探す。
⑥外側に置く手は方向づけに役立て、アーチ下で頭蓋骨の骨ばった組織を感じる。
⑦立体的に三次元でイメージして、内側翼突筋に触れる。
⑧内側翼突筋中の索状硬結を触知し、直径2-3mmのトリガーポイントを見つける。

■内側翼突筋の作用
・下顎挙上
・片側の収縮は下顎の反対側偏位を生じる

 大阪・名古屋・神戸のワークショップで解説することにしました。

☆大阪ワークショップ

12月22日(木)→ 詳細

 

☆名古屋ワークショップ

12月23日(金)→ 詳細

 

☆神戸ワークショップ

12月24日(土)→ 詳細

美しい胸をつくる。胸筋群直下の胸骨下部を横切る接続の緊張をゆるめて、呼吸を楽にする。

 アナトミー・トレインー徒手運動療法のための筋膜経線 第4版 医学書院 より引用します。

スパイラルライン(後頭骨~肩甲骨~上前腸骨棘)

 前鋸筋は四角形の要素と三角形の要素が広範に組み合わさった複雑な筋であり、肩甲骨の位置の安定化と制御を行う。系統発生の初期には、前鋸筋は主に直立状態の肩甲骨内側の胸郭を支えるスリング形成に関与していた。114P

 前鋸筋の下部スリップは確かにSPLに属しているが、中間スリップは、「ブラジャーのライン」の高さの大胸筋下方で、胸骨下部で中心線を越えて互いに結合する。前鋸筋はSPLの「分岐線」を形成し、臨床で頻繁にみられる頭部前方位姿勢を治療する場合に注目される。

胸筋群直下の胸骨下部を横切る左右の前鋸筋間の接続は、
SPLを上行して後頭部につながり、呼吸運動を制限する。

 剣状突起上の正中線からSPLをたどると、前鋸筋中間のスリップを回り、菱形筋の中間まで行き、頭板状筋を横切り、最終的に反対側の後頭骨で停止する。

スパイラルライン

 きわめて多くの頭部前方位姿勢の人々は、胸部帯が緊張している。胸部帯は代償による力伝達の主要経路である。胸部帯をゆるめて呼吸を持続させたい場合、左右の前鋸筋を接続する筋膜バンドを徐々にゆるめながら、頭を身体の頂点へと徐々に戻す。SPLをゆるめ、呼吸時に胸部の可動性が完全な状態に戻るよう促す。115P

引用ここまで

交差症候群

 昨日の新宮校ワークショップで、お腹と顎(あご)をほぐしました。上の図を見てもらえばすぐにわかると思いますが、頭部前方位姿勢では咀嚼筋の柔軟性が低下して硬くなってしまいがちです。そして、胸筋の柔軟性の低下とともに、前鋸筋の筋力低下がみられます。

 頭部前方位姿勢の姿勢改善においては、肩甲骨を寄せつつお尻の方へ下げるという意識が基本ですが、これも上図を見れば一目瞭然です。うなづく意識の大切さも、よくわかるかと思います。

 胸筋群直下の胸骨下部を横切る左右の前鋸筋間の接続=胸部帯の緊張をゆるめると、いきなり呼吸が楽になります。今日の新宮校ワークショップと大阪・名古屋・神戸のワークショップで解説いたします。

☆新宮校ワークショップ(休日)

 12月18日(日)→ 詳細 

 

☆新宮校ワークショップ(平日)

12月19日(月) → 詳細

 

☆大阪ワークショップ

12月22日(木)→ 詳細

 

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2022年12月18日日曜日

美しい顔と胸をつくる。お腹の緊張をほぐし、恥骨から耳の後ろの骨(乳様突起)を遠ざける。

 ビジュアルでわかるトリガーポイント治療 緑書房 より引用いたします。

■腹直筋の作用 114P
・胸腰椎を屈曲する
・胸郭を押し下げる
・骨盤を安定させる(歩行時)
・拮抗筋:脊柱起立筋

■腹直筋の関連痛パターン 114P
上部繊維:背部に出現する痛み(胸椎領域に出現し、水平上〈帯状〉に広がる痛み。胸やけや消化不良として感じられることもある。
下部繊維:腰部に出現する痛み(月経困難症の際に恥骨と臍の間に出現するような痛み)
腹直筋のトリガーポイントと関連痛領域

■適応 115P
 胸やけ/疝痛/月経困難/吐き気/嘔吐/膨満感/背部の痛み(水平上/帯状)/下位交差パターン/肋骨の痛み/精巣痛/横隔膜と呼吸の問題

■原因 115P
 直接外傷を受ける/姿勢/内臓下垂症(一般的にスポーツの練習のしすぎ)/間違った腹筋運動の方法/長時間脚を組んで座る/咳/感情的ストレス/腰痛/腹部の術後


■外腹斜筋の作用 110P
・腹部を圧迫し、腹圧をかけることで重力に対して内臓を支える補助をする
・体感を側屈、対側回旋する

■外腹斜筋の関連痛パターン 110P
・内臓痛に類似した痛みとして感じられる
・肋骨縁周囲のトリガーポイント:胸から腹部に広がる痛み
・下腹部外周のトリガーポイント:精巣や下腹部に出現する痛み
・恥骨縁周囲のトリガーポイント:膀胱や鼡径部に出現する痛み(頻尿/残尿感として感じられることもある)
外腹斜筋のトリガーポイントと関連痛領域

■セルフケアテクニック 115P
①筋繊維の方向を解剖学的に確認する。
②胸郭から下方へ、痛む場所や硬結(ノット)を明確にし、確認する。
③確認された硬結を母指を使って、小さくすくい上げるようにする。
④痛みのある硬結(ノット)では痛みが弱まるまで圧を留め、停止部までストローク(軽擦)を続ける。

引用ここまで

 アナトミー・トレインー徒手運動療法のための筋膜経線 第4版 医学書院 より引用します。

 腹直筋は、「燃え尽きるまで持続しようとする」仲間の集団によって過剰な運動を強いられたり、徒手セラピストから十分に治療されなかったりする気の毒な筋肉である。

 腹直筋を見る場合、筋自体の緊張と腹直筋の前後にある2つの鞘の解消と、3つの部分に分けて調べなければならない。「シックスパック」の腹筋群である腹直筋が平らであれば、浅層筋膜と筋自体の緊張が大きいことが疑われる。腹直筋が膨らんでいる場合、筋の緊張を調べなければならないが、筋後面で深層の腹横筋膜が短縮している可能性が高い。66P

 腹部が突き出し、筋の緊張が低く見えるとしても、腹直筋後壁がきわめて大きな緊張を示し、締まっており、呼吸の制限や背部の牽引などの一因となっている可能性がある。

 腹直筋が付着し、腹筋膜が胸筋膜と一体化する余分な付着部を可動解放すると、多くの場合、呼吸運動を促進することができる。69P

 Feldemkraisは、「負の感情はすべて、屈曲として現れる」と述べている。怒りによる前かがみ状態、うつ状態によるうなだれた姿勢、恐れによる身を縮めた姿勢は数多く、様々な形態でみられる。これらはすべて屈曲に関与する。75P

 しかし、Feldenkraisの観察には注目すべき例外がある。すなわち、負の感情は通常、上頸部の屈曲ではなく過伸展を引きおこす。これは驚愕反応と呼ばれる反応にきわめてはっきりと見ることができる。

 明らかなことは、驚愕反応は全体的な屈曲反応ではなく、より正確に見えるのはSFL上での短縮と緊張であるということである。この反応全体は、乳様突起が恥骨に近づけられることからはっきりと示される。これは前面で器官を保護するのみならず、頸を退縮かつ過伸展させ、頭を前方に下げる。76P

 SFLの筋も頻繁にこの反応にも関与し、肘の屈曲や肩の保護もこの全体像に当てはまる。したがって、驚いた人の全身姿勢は、頸上部の過伸展に加えて、下肢が硬直し、体幹と腕が屈曲する。

 問題は驚愕姿勢が維持される場合に生じる。人間は長時間にわたり、完全にかつ反復してこの姿勢を維持できる。この姿勢とこれが変化した型は、ほぼすべての人間の機能にマイナスの影響を与えるが、特に、呼吸はSFLの短縮で制限される

 ゆったりとした呼吸は、肋骨の上向き運動や外向き運動、骨盤と呼吸横隔膜との相互関係によって決まる。短縮したSFLでは、頭を前方に引き下げ、肋骨運動を制限する前後両面において代償性緊張が必要となる。防御的緊張が腹直筋を越えて下肢まで進む場合、鼡径部の短縮は呼吸横隔膜と骨盤底とのバランスを崩し、呼吸は極端に横隔膜前部に頼るようになる。

 実際、最初の驚愕反応は爆発的な呼息によってマークされている。持続的驚愕反応は呼吸サイクルの呼息期で止まる明確な姿勢的傾向を示す。これに続いてうつ状態を伴う可能性がある。

 SFLをゆっくりと完全に上行し、これらの組織をリリースする。SFLの各要素を上部から持ち上げられるようになることで、対象者の身体的負担要素をリリースすることができ、きわめて良好な結果を得られることが多い。77P

引用ここまで

頭部前方位姿勢では下顎が後ろに引かれる
胸鎖乳突筋が過緊張して短縮硬化する

 安部塾では、恥骨から乳様突起を遠ざける意識を持つように指導しております。理由は、引用させていただいた文章にある通りです。

 今日・明日の新宮校ワークショップと今週末の大阪・名古屋・神戸のワークショップで詳しく解説しますが、腹直筋の状態を観察することで、驚愕姿勢を維持しているかどうかを知ることができます。今回はリフレッシュスティックやマッサージボールを用いて、腹部のリリースをやっていきます。

☆新宮校ワークショップ(休日)

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2022年12月17日土曜日

美しい座位姿勢のつくりかた。肩甲骨を下げつつ寄せながら、うなづ(ず)くことで座位姿勢が改善されるメカニズム。

 アナトミー・トレインー徒手運動療法のための筋膜経線 第4版 医学書院 より引用します。

 着座は、問題をはらんだ危険な動作である。バランスのとれた筋経線による着座はまれである。程度の違いはあれ、座るという動作では、下肢の支持機能を除外し、骨盤を分割型のテント支柱である脊柱を支える主要基盤としている。

 座った状態での脊柱の適切なバランスは、立位での適切なバランスに近く、ゆったりと完全に進展し、頭部、胸部、骨盤からなる体重の大部分が、程度の差はあれ、股関節臼上部と同じ冠状面の前側座骨結節上でバランスをとっている状態である。

 次のうち1つ、ないしそれ以上が生じるような座り方の不適切な習慣は、きわめて簡単に身につく。

1. 下部頸椎の屈曲により頭部が前方に出る。

2. 上頸部が過伸展する。

3. 胸部と胸郭前部が落ち込む。

4. 上位腰椎が後方に移動し屈曲する。

5. 体重が座骨結節後面にかかるように骨盤が後退する(すなわち、骨盤突端が尾骨に向かう)。

 上記に示した状況は、必然的にSFLの短縮とDFLの一部の短縮に関連する。ここで示した特定の着座パターンに応じて、身体の持ち上げにはSFLの体幹部分に沿った組織の引き伸ばしと挙上がしばしば関与する(腹直筋に関連する膜面など)。前面の組織が下垂すると、多くの場合SBLの組織(脊柱起立筋とその膜)は遠心性の負荷によって広がる。したがって、SBLの組織を正中線の内側と下方へ矯正することで、対象者は容易に支持性の高い安定した座位がとれるようになる。

前面組織を挙上・拡大することと後面組織を下制・収縮する戦略が、
着座姿勢における健全なコア強化のための簡単で機械的な前段階アプローチとなる。

 また、多くの場合、対象者にDFLを「機能させる」(より緊張を持続させる)ことも不可欠である。具体的には、腰椎を前方に安定させて胸部を持ち上げるために、腰筋を機能させなければならない。また、頸椎椎体の前側に位置して頸椎を前方に保持する深層の頭長筋と頸長筋は、SFLとSBLの関連組織が上部頸椎を過伸展させる傾向を緩和するために、正常に機能する必要がある。脊柱の直前と咽喉の直後でこれらの筋の持続的な緊張を獲得することは、腹横筋の緊張と同程度の「コア・コンピテシー」保持の必要条件となる。

頭長筋と頸長筋

 いったんバランスをとって座れるようになったら、神経とそれに従属する筋の両方が変化に合わせられるようになるまで、数日、あるいは数週間、熱心に練習すべきである。意識的に注意する最初の期間を過ぎると、ほとんど努力せずにこの座り方で何時間も座り続けることができるようになる。この場合、呼吸能力や注意力が減少することはなく、構造的な痛みも発生しない。 198P

引用ここまで

 安部塾では、頭長筋と頸長筋を使っての頷き(うなづきorうなずき)運動と、肩甲骨の下制・肩甲骨間部の収縮を基本所作としております。肩甲骨を下げつつ寄せながら、うなづ(ず)くことで座位姿勢が改善されます。

 うなずく(づく)は、漢字で書くと「頷く/首=肯く」。「項うな突く」の意で、承諾や同意などの気持ちを表すために、首を縦に振る動作です。

 首肯(しゅこう)は、うなずくこと。納得し、賛成すること。承諾すること。肯定すること。

 頷くは、了解、肯定、承諾、勧誘などの気持を表わすために首を縦に振る。首を前へ曲げて合図する。心中で納得、了解する。合点する。うべなう。

 他者を肯定できていない人は、なかなか首を縦に振りません=うなづきません。少し観察してみるとすぐにわかりますが、腕を組んで、自分の考えに合った内容の話しか聞かないという構えをしております。腕組みをして相手の話を聞いても、その内容はほとんど記憶には残りません。腕を組まずにうなづきながら相手の話を聴いている人は、その内容をよく記憶しています。

 安部塾では、肘掛け椅子をすすめておりますが、肘置きがあることで腕を組む機会を減らす効果があり、結果的に記憶に残る学びができるという効果があります。

 腕組みには、相手に対して否定的な感情を抱いているという身体メッセージがあります。なので、相手視点で見た場合、返報性の法則で「否定的な人」という印象となります。相手や相手の話に反対意見や否定的な感情を持っているとみなされるため、さまざまな機会損失につながります。腕を組むことで、自分と相手との間に壁をつくり、相手に踏み込ませない、心をひらかないという意思表示となるからです。

 話が長くなりましたが、身体操作的に腕組みを解除するには、「コア・コンピテシー」の保持が必要になります。理想的な座位姿勢がとれないと、相手の話を聴くことはできないからです。当然のことなのですが、楽にうなづけない人に、相手を肯定するという動きはできないのです。

2022年12月16日金曜日

美しい顔をつくる。中斜角筋と後斜角筋は、頭部を安定させる「頸方形筋」のような機能を持つ。

 アナトミー・トレインー徒手運動療法のための筋膜経線 第4版 医学書院 より引用します。

 多くのヒトで不完全に分離している中斜角筋と後斜角筋は、腰方形筋が腰椎を安定させるのと同じように、頭部を安定させ「頸方形筋」のような機能を持つ。177P

 参考過去記事 → 強い腰をつくる。腰方形筋と大腰筋は腰椎の両側にほぼ垂直に走行し、強力な両側性収縮が腰を安定させます。

斜角筋群

 しかし前斜角筋は前方に位置し、頭部前方筋として、中位と下位頸椎の横突起から第1肋骨付近まで走行し、下位頸椎屈曲と上位頸椎過伸展(一側が作用すると回旋)を引き起こし、頭部の維持作用を有する。177P

 中斜角筋と後斜角筋は、僧帽筋と胸鎖乳突筋の間で触知できる。中斜角筋は最外側にあるギターの弦様であり、頸椎下部の外側中央で触れられる。後斜角筋は中斜角筋の後外側のポケットに入り込む。中斜角筋と後斜角筋は、不完全に分離していることが多いため、1つの筋、いわゆる頸部の腰方形筋として単一筋の扱いで治療することができる。178P

斜角筋群

 頭長筋と頸長筋は、頸部筋のなかで唯一、頸椎過伸展に拮抗する筋である。SBLとSFL(よくみられる胸鎖乳突筋の不適切な活動)は、上位頸椎の過伸展を引きおこす傾向がある。頭長筋と頸長筋(もちろん下方からの支持を伴う)が頭部、頸部、上背部の適切なアライメント維持に大きな役割を果たすことになる。177P

頭長筋
 上位頸椎過伸展の対象者に対し、これらの筋を賦活し正常状態にする、あるいは「ミリタリーネック」、すなわち上位頸椎過屈曲の場合で、頭長筋と頸長筋の機能を正常化することは、徒手療法の専門家や身体に関する教育者の双肩にかかっている。177P

 引用ここまで
頭部前方位姿勢と頭部後方位姿勢

 上のイラストで一目瞭然ですが、斜角筋群や胸鎖乳突筋が不適切な活動をしている人の顔は醜く歪みます(当人比)。姿勢とともに体型も崩壊します(当人比)。
 
頭部前方位姿勢からの姿勢の崩れ

 首の使い方やほぐし方を学ぶことで、顔が美しくなります(当人比)。

2022年12月15日木曜日

感情的な問題とへそまがり。おへそを解放すると、素直な自分になれるかも。

臍(へそ)

 アナトミー・トレインー徒手運動療法のための筋膜経線 第4版 医学書院 より引用します。

 臍(へそ)は多くの感情的接続と筋膜的接続の発生源であり、胎児期9か月間にすべての栄養を運ぶ。臍は腹部筋膜面の前方で容易に触れられるが、腹部筋膜の後層で保持、付着しており、腹直筋の後面で経路を探す必要がある。この腹部筋膜層は腹膜と接触し、結腸間膜、膀胱、肝臓を分ける鎌状間膜など、腹腔内臓と多くの接続がある。

 最小の圧であっても対象者によっては痛みを感じたり、感情的に困難になったりする。丁寧な説明を行って対象者の同意を得て、臍を天井方向、または対象者の頭部に向かって持ち上げる。この動きも苦痛を伴うことが多く、触診を始める前に組織を充分にリリースしゆっくりと行う。

 またこの手技を通して、対象者が正常な呼吸リズムを持続することはきわめて重要である。治療結果として、呼吸機能が向上し、症状が緩和した様子を見ると、この手技を試行する価値がある。

引用ここまで

 「へそまがり(臍曲がり)」という言葉があります。「ひねくれていて素直でないこと。また、そのさまや、そのような人。偏屈。あまのじゃく。つむじまがり。」という意味です。捻くれ者とか拗ね者と呼ばれる人たちのことですね。

 笑える国語辞典さまの解説が面白いです → 臍曲がり、へそ曲がり

 私の調べでも、おへそが頭方に向かって持ち上げらない人はへそまがりでした。鶏と卵的な話だと思いますが、素直になりたいのであればおへそのリリースから始めるのがよいのではないかと存じます。 

 少なくとも、横隔膜の動きが改善されて、呼吸は楽になりますし、姿勢も改善します。生きづらい人は、へその感情的接続と筋膜的接続について学ぶといいかもしれません。

 各地のワークショップで、解説します。

☆新宮校ワークショップ(休日)

 12月18日(日)→ 詳細 

 

☆新宮校ワークショップ(平日)

12月19日(月) → 詳細

 

☆大阪ワークショップ

12月22日(木)→ 詳細

 

☆名古屋ワークショップ

12月23日(金)→ 詳細

 

☆神戸ワークショップ

12月24日(土)→ 詳細

2022年12月14日水曜日

首・肩・背中のコリの原因は……横隔膜が固まり呼吸が乱れると、身体のいたる場所に慢性筋膜トリガーポイントができていく。

横隔膜のセルフケア

■横隔膜のセルフケアテクニック

仰向けに寝て膝を曲げ、胸郭の下から手指で圧迫する。

 ビジュアルでわかるトリガーポイント治療 緑書房 121Pより

 横隔膜の収縮はそれぞれの繊維が別々に収縮するわけではない。そのことは、呼吸メカニズムを理解する上で重要である。呼吸には筋肉や内臓が協調的に連続し、ともに収縮することが必要である。なお、トリガーポイントは下位肋軟骨端に沿って触診すると触知可能である。

 呼吸パターンにはよく異常がみられる。もし治療しなければ、身体の至る所に慢性筋膜トリガーポイントを発達させる重要な要因となる。

 Garland(1994)は、筋骨格系の配列変化は、上部胸式呼吸が長年行われることにより起こる可能性があることを示唆した。

・胸椎可動域における制限(2次的に起こる肋骨構造の異常)

・斜角筋群、上部僧帽筋、肩甲挙筋におけるトリガーポイントの形成

・硬く、こわばった頸椎

・腹部横隔膜と腹横筋の緊張に伴う変化

・腹筋の脆弱化と脊柱起立筋の過緊張によるアンバランス

・骨盤底筋の衰弱

引用ここまで

 昨日の塾生講座で、横隔膜の機能低下問題と機能改善について解説しました。首・肩・背中がこっている人の横隔膜に触れてみると、「まあ、それはそうだよね」というくらい動きが悪いのがわかるかと思います。

 横隔膜のセルフケアにより機能が改善されると世界が変わります。11月の各地のワークショップで、リフレッシュスティックを使った横隔膜と下顎のセルフリリーステクニックを解説します。

☆新宮校ワークショップ(休日)

12月18日(日) → 詳細 

☆新宮校ワークショップ(平日)

12月19日(月) → 詳細

 

☆大阪ワークショップ

12月22日(木)→ 詳細

 

☆名古屋ワークショップ

12月23日(金)→ 詳細

 

☆神戸ワークショップ

12月24日(土)→ 詳細

 

機能運動学大牟田サークル

1月8日(日) → 詳細

2022年12月2日金曜日

セルフ筋膜リリースツール(フォームローラーやボール)を使うときは、スローダウンしてゆっくり動きましょう。

 アナトミー・トレインー徒手運動療法のための筋膜経線 第4版 医学書院 より引用します。

■自己内面感覚を認識するためのツール 302P

 緩徐運動 ボディワークにおいてスピードは感受性の敵である。ゆっくり進めるほど、たくさん感じることができる。ヨーガや太極拳のようにゆっくりした運動を実践するとき、意識を実際のシークエンスよりも先に進ませると(固有受容の側面)、運動が体内でどのように感じらえるかということに注意を向けることができる(内受容の側面)。手技をスローダウンし、深く聴くことができるようにしてみよう。徒手療法を実施している場合は自分の手で他者の声を、運動であれば自分自身の声や対象者の声を。

 単純瞑想呼吸 動きのスローダウンを呼吸に応用すると、自律神経系にとりわけ効果的である。吸気時の吸い込む空気の涼しさと、呼気時の空気の暖かさに集中し、ゆっくりとした呼吸の結果として、自己内面に生じる感情の変化に注目しよう。

 ルーティンの変更 惰性に陥っている経験を精選し、何か新しいものに変化させる。ヨーガやトレーニングの特定シークエンスを反復的に実行すれば技能熟達が可能となるが、ルーティンを変えることによる斬新さを取り入れれば、深い聴取への道が得られる可能性がある。治療室内のマッサージ台の位置やセッション中に流している音楽を変えるだけでも、自己の内受容器意識の微妙な調整が得られる可能性がある。

 セルフマッサージ セルフ筋膜リリースツール(フォームローラーやボール)を使用しているときに、運動をスローダウンして「自己を感じて」みよう。深い副交感神経性の反応のほか、固有受容と内受容をより深く聴き取るきっかけとなる。

引用ここまで。

背側骨間筋ほぐし(リフレッシュスティック) 飯塚ワークショップ

 今日の飯塚でのワークショップで、「ゆっくり動かさないと、どこがおかしくなっているかわからないまま通りすぎてしまうよ」というお話をしてきました。固まっている索状硬結を見つけるためには、自分が思っているスピードよりずっと遅く動かす必要があります。「ボディワークにおいてスピードは感受性の敵である。」というのはほんとにそうで、可能な限り、ゆっくり深めていくことが大切だと思います。

 明日の下関ワークショップはじめ、各地のワークショップでセルフ筋膜リリースツール(フォームローラーやボール)の使い方の解説をしてまいります。

☆下関ワークショップ

12月3日(日)→ 詳細

 

☆新宮校ワークショップ(休日)

12月4日(日) → 詳細 
12月18日(日)

 

☆大手門ワークショップ

 12月5日(月)→ 詳細

 

☆東京ワークショップ

12月9・10・11日(金・土・日・月)→ 詳細  

 

☆新宮校ワークショップ(平日)

12月19日(月) → 詳細

 

☆大阪ワークショップ

12月22日(木)→ 詳細

 

☆名古屋ワークショップ

12月23日(金)→ 詳細

 

☆神戸ワークショップ

12月24日(土)→ 詳細

 

機能運動学大牟田サークル

1月8日(日) → 詳細

2022年12月1日木曜日

不得意なことをやって、自分に生来備わっている傾向に逆らったバランスを強化するようにした方がいい。生来備わっている傾向を強化しすぎない。

 アナトミー・トレインー徒手運動療法のための筋膜経線 第4版 医学書院 より引用します。

 大部分の身体損傷は局所の膜組織に負荷が加わり、そのうえ素早く動くことを要求されたときに発生する。類似例にビニール袋がある。ビニール袋をゆっくり少しずつ引き伸ばすと、かなりの長さまで塑性変形を起こすが、ビニール袋を素早く引き伸ばすと破れる。

 我々の実験では、局所組織の故障と長期回復が必要となる状況につながるケースに対しては、ゆっくり少しずつ行う運動やエクササイズが、最初から短時間で学習させるよりも安全に実施できる方法である。296-297P

 免疫系(もともと大部分が結合組織である)には、血液型、アレルギー、免疫反応において遺伝的差異があることを誰もが知っており、ヒトの膜ネットに遺伝的変動が認められることは驚くにあたらない。

 膜ネットの緊張度はさまざまであり、その範囲は「バイキング(厳寒の気候で発達。密度が高く安定性がある。高摩擦が生み出され、運動時に熱を産出し修復が速い)」から「寺院の踊り子(熱帯性の気候で発達。弾性と柔軟性が高く安定性が低い。低摩擦の滑動で修復が遅い)」に及ぶ。

 「バイキング」は重労働向きで、常時ウエイトトレーニング室で金属をガチャガチャ鳴らしている傾向があるのに対し、生まれつきしなやかな「寺院の踊り子」は、廊下を隔てたヨーガスタジオで生来備わっている傾向を強化している。週2~3回、それぞれのトレーニングルームを交換するすることがこの両グループにとって都合がよいと思われる。287P

 「バイキング」と「寺院の踊り子」の違いについて、前項で詳しく説明した。この両者がトレーニングに対して同じように反応することはない。膜にみられるような遺伝的差異の理解が深まるのに伴い、トレーニングプログラムは「汎用型」ではなく、対象者個々の差異に応じたものに可変する必要性が指摘されている。

 「寺院の踊り子」のような靭帯弛緩のある対象者の場合(ストレッチへの生来の親和性を考えれば)、ストレッチのクラスに引きつけられるかもしれないが、自らの傾向に逆らった弾力的なバランスを強化するように助言した方がいい。

 「バイキング」であれば、持続的なストレッチに加え、無志向の波のようにうねるしなやかな運動によって、自らの重労働とのバランスをとる方法がよい。297P

引用ここまで

 昨日の記事でも書きましたが、生来備わっている傾向を強化し過ぎるのはおすすめしません。不得意なことをやって、自分に生来備わっている傾向に逆らったバランスを強化するようにした方がいいと思います。

 表現の世界では、自分に生来備わっている傾向に逆らうとパッとしないのでうまくいかなくなりがちです。逆に、筋膜ベースで考えると、自分に生来備わっている傾向に逆らうことでバランスがとれます。人前で見せる姿と、自分に必要なことは一致しないと考えております。元々、バランスがとれている人は両刀いけると思います。

桶の理論

 ついつい得意な能力ばかりを伸ばしたくなりますが、桶の理論で「長さ不等の木片を丸めてつくった桶では、一番短い木片に相当する深さまでしか水が入れられない」のと同様、いちばん不得意なレベルにしかなれないので、不得意分野に時間を割くことをおすすめいたします。

12月の各地のワークショップで膜について解説します。

☆下関ワークショップ

12月3日(日)→ 詳細

 

☆新宮校ワークショップ(休日)

12月4日(日) → 詳細 
12月18日(日)

 

☆大手門ワークショップ

 12月5日(月)→ 詳細

 

☆東京ワークショップ

12月9・10・11日(金・土・日・月)→ 詳細  

 

☆新宮校ワークショップ(平日)

12月19日(月) → 詳細

 

☆大阪ワークショップ

12月22日(木)→ 詳細

 

☆名古屋ワークショップ

12月23日(金)→ 詳細

 

☆神戸ワークショップ

12月24日(土)→ 詳細

 

機能運動学大牟田サークル

1月8日(日) → 詳細